2017年07月18日 10:53 弁護士ドットコム
日本銀行が6月27日に発表した2017年1~3月期の「資金循環統計(速報)」によれば、家計の金融資産は3月末で1809兆円にのぼることがわかった。1年前と比べて2.7%増加し、内訳をみると、全体の51.5%を占める現金・預金は前年比で2.3%増(932兆円)、株式等は7.8%増(181兆円)、投資信託は7.2%増(99兆円)だった。なお、日銀が保有する日本国債の残高は427兆円だった。
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目を見張るのは、やはり円預金の多さではないだろうか。2016年12月に日銀調査統計局が発表した「資金循環の日米欧比較」によれば、日本の52.3%(当時)が現金・預金であるのに対し、米国ではわずか13.9%、ユーロエリアでも34.6%に過ぎなかった。
今回改めてわかったのは、日本人の金融資産で現金・預金がしめる割合の多さだ。日本で投資が根付くことは難しいのだろうか。久乗哲税理士に聞いた。
今後、日本に投資文化が根付いていくのは難しいのだろうか。
「必ずしも、そうではないと思います。貯蓄にしろ、投資にしろ、税引き後のキャッシュフローが重要であることには違いがありません。つまり、税引き後、どちらがしっかりと保存できていたのか? という視点から見ると、実は投資のほうがお得である場合もあります」
どういうことか。
「貯蓄については、利子部分について利子所得として、20.315%の源泉所得税が課されます。ちなみに、サラリーマンの給与所得の平均実効所得税率は3.9%程度です。こう考えると、貯金の利子に対する所得税がいかに高いかということがわかるかと思います。
一方で、NISAは運用益部分について非課税ですし、iDeCo(個人型確定拠出年金)も拠出時にも所得控除を受けることができます。単純に考えると、貯蓄よりもNISAやiDeCoの方がはるかに有利に運用できるということになると思います。
でも、それらの利用はなかなか進みません。これは、投資への『損するかもしれない』という感覚的な恐れが大きいのではないかと思います。
しかし、iDeCoには、元本保証商品もありますから、単純な税効果だけをとっても、手数料を上回る可能性はあると思います。細かい損得計算の理解が拡がれば、日本人のお金の使い方が変わってくる可能性もありそうですね」
【取材協力税理士】
久乗 哲 (くのり・さとし)税理士
税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。
事務所名 :税理士法人りたっくす
事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/
(弁護士ドットコムニュース)