ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームから全日本ロードレース選手権のJSB1000に出場しているの中須賀克行に4戦を終えたマシンの感触と、FIM世界耐久選手権(EWC)の最終戦、“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレースへ向けての意気込みを聞いた。
2016年シーズン、前人未到のJSB1000クラス5連覇を達成した中須賀。昨年は開催された7レース中、6レースで優勝を飾り、圧倒的な強さでタイトルを獲得した。
しかし、2017年シーズンの中須賀は初戦から苦戦が続いている。JSB1000クラスの初戦となった第2戦鈴鹿、第3戦SUGO、第4戦もてぎと3戦連続の転倒。第5戦オートポリスで待望の勝利を挙げたものの、前半戦を終えてポイントランキングは17位と、中須賀とヤマハYZF-R1のポテンシャルから考えれば、似つかわしくない位置にいる。
絶対王者、中須賀と鈴鹿8耐でも相棒となるYZF-R1に何が起きているのか。
全日本もてぎまでの3戦が苦しい展開となったことについて、「主な理由はタイヤ」と中須賀は語る。今年から、全日本は2016年まで使用していた16.5インチタイヤではなく、17インチタイヤを使用しなければならないレギュレーションになった。それが影響しているというのだ。
「(自分が操るYZF-R1は)16.5インチのタイヤで造ってきたバイクでした。だから、17インチに対してライディングスタイルを合わせきれていませんでした。開幕2戦連続で転倒してしまったので、もてぎから少し仕様を変更して、17インチに合わせた方向性のマシン造りをしました」
こう語るとおり、第4戦のもてぎでは最終ラップまでほぼ独走状態。強い中須賀が帰ってきた、と誰もが思うレース運びだった。最終ラップのV字でバックマーカーと接触し転倒したものの、それ以前の2戦で喫した転倒とは種類の違う、いわゆるレーシングアクシデントだった。
「だいぶフィーリングが戻って、トップを快走していたんですが、ああいう結果になってしまって。ですが、決して調子は悪くないです」
「オートポリスも方向が間違っていなかったため結果にも結びつきました。そういった意味ではシーズン前半折り返し地点でしっかり結果が出たことは、後半戦に繋がるいいレースになったのではないかと思いますね」
全日本の前半戦をいい形で締めくくり、調子を取り戻してきた中須賀。鈴鹿8耐でいかんなくその強さを見せつけることは間違いない。
その鈴鹿8耐でのチームメイトとなるライダーのひとり、マイケル・ファン・デル・マークは、第5戦オートポリスに野佐根航汰の代役として参戦した。普段はスーパーバイク世界選手権(SBK)を戦うファン・デル・マークは、オートポリスでの初レースを14位で終えている。
中須賀は、全日本第5戦オートポリスでチームメイトとなったファン・デル・マークの印象についてこう語る。
「レースに対しては非常に真面目で、身長も大きいんですが、僕が造ったマシンにそのまま乗るというスタンスでオートポリスに出てもらいました。そういった意味では順応性が高いです」
ファン・デル・マークは、鈴鹿8耐を見据えてオートポリスで中須賀のセットアップで走ったのだというのだ。
「それであの位置(14位フィニッシュ)はすごい。そういった意味でも流石だなとも思いましたし、8耐に向けては非常にいい流れで来ていると思っています」
「(ファン・デル・マークの)ライダーとしてのレベルはしっかり確認できました。速いライダーは何でも合わせるのが上手なんだなという印象受けましたね」
もうひとりのチームメイト、SBKライダーのアレックス・ロウズは、昨年の鈴鹿8耐の優勝に貢献したライダーだ。
7月11~13日に行われた合同テストでは、二日目にチームベストとなる2分8秒39の総合3番手タイムを叩き出しており、その実力を見せつけた。
今年の鈴鹿8耐には、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームとしても、中須賀自身としても3連覇がかかっている。優勝すれば、中須賀はカワサキとホンダで1993年から1995年に3連覇を成し遂げた、アーロン・スライト以来の記録を打ち立てることになる。
「今年は鈴鹿8耐40周年記念ですし、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームとしても3連覇がかかっています。個人の連勝記録としても3連覇は過去にひとりしかいないので、その記録に並ぶためにチーム一丸となって8時間戦っていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします」
ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームと中須賀の、鈴鹿8耐を制する夏が始まる。