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星野源、米津玄師に続くソロシンガーは? ビッケブランカ、岡崎体育ら新世代アーティストの魅力

2017年07月14日 20:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 昨今の音楽シーンを俯瞰して、何より目が行くのは男性ソロシンガーの目覚ましい活躍ぶりだ。「恋」で名実ともに国民的シンガーとなった星野源をはじめ、ネット世代ならではのサウンドクリエイト術で快進撃を続ける米津玄師、卓越したパフォーマンスが国内外から注目を集める三浦大知、持ち前のポップセンスと誰からも愛されるカリスマ性で人気を博すレキシなどがその代表格だろう。


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 こうして見ると、各人ともソングライティングや歌唱力のみならず、それぞれが際立った個性で勝負している歌い手ばかり。となると気になるのは、彼らの後に続く顔ぶれだが、日々新たな音楽が生まれるシーンにあって、注目を集める存在とはどういったアーティストなのか。新世代を担う男性ソロシンガーの魅力を探ってみた。


 J-POP界隈のMVに出てくるシーンあるあるを歌った「MUSIC VIDEO」で一躍時の人となり、最新シングル「Natural Lips」では、“英語のように聴こえる日本語”というネタでまたも話題をさらった岡崎体育。メジャーデビューを果たしてわずか1年の間にシングル曲にはすべてタイアップが付き、リリースしたばかりのセカンドアルバム『XXL』はオリコンチャートで2位に食い込むなど、新人アーティストとしては異例の大躍進だ。実家で宅録しているという制作スタイルや、ユルいトークなどの面白キャラぶりが何かと取りざたされているものの、その音楽性もとてもユニーク。キャッチーなテクノポップサウンドを主体とした楽曲の中にハッとさせられるメロディラインが隠れていたりと、一概に“イロモノ”とは割りきれないミステリアスさがある。今後は一体どんな世界を見せてくれるのか楽しみな存在である。


 動画サイトへの作品投稿をきっかけに音楽関係者の目に止まり、高校3年生という若さでメジャーデビューを果たしたぼくのりりっくのぼうよみは、トラックメイカーとイメージを共有しながら楽曲を仕上げていくというセルフプロデュースのようなスタイルが特徴的なシンガーだ。繊細でアーバンなサウンドに、切なさのにじむボーカル。およそ10代とは思えない表現力はそれだけで底知れぬ才能を感じさせるが、中でも多くの人々の度肝を抜いたのは、流れるように紡がれるリリックや歌詞世界だ。思慮深さと諦めと少しの希望を詰め込んだセンシティブな言葉たちは、若者世代の心情を代弁しているかのようでもあり、文学界からの注目度も高い。


 インディーズでの活動を経て昨年10月にメジャー移籍したばかりのビッケブランカも、新世代を司るシンガーのひとり。軽快なピアノサウンドに乗せ、自在に響かせるファルセットボイスを武器に、早耳の音楽ファンを騒がせている。特筆すべきはその独自の音楽スタイル。一言で言えば日本に今までいなかったタイプとでも言おうか。底抜けに明るく多幸感あふれる世界が、楽曲のみならず、歌詞やMV、パフォーマンスに至るまで徹底して貫かれている。それもそのはず、彼が影響を受けたのはマイケル・ジャクソンやMIKAら洋楽アーティストだと言う。どちらもオリジナリティに関しては他の追随を許さない天才。しかも、双方衣装やステージ構成まで自らプロデュースするほどのクリエイティビティの持ち主だ。


 7月5日には1stアルバム『FEARLESS』を発売。跳ねるようなゴキゲンなピアノにホーンが鳴り響く、まさにビッケブランカ・ワールド全開の先行曲「Moon Ride」に象徴されるように、オープニングからエンディングに至るまで緻密に練り上げられた構成は1stアルバムにして集大成的な趣もある。ライブ映えも良いことから、夏フェスシーズンは各地で引っ張りだことなるのは間違いない。


 思えば、冒頭で挙げた星野源や米津玄師らも、ビッケブランカと同じく洋楽の要素をJ-POPの中に取り込むことに長けたアーティストである。星野はマイケル・ジャクソンやブルーノ・マーズといったブラックミュージックを、米津はビートルズやオアシスらUKロックサウンドの香りを、楽曲の中に漂わせている。そしてそれによって世代を超え、幅広い音楽ファンへのアプローチも可能となったのだ。


 今、リスナーが求めているのは、彼らのごとく既存のシンガーソングライターの枠に収まらない歌い手たち。いかにキャッチーに独自の世界を展開できるかが、新世代のソロシンガーにとって重要な鍵になるだろう。(渡部あきこ)