2017年07月14日 19:03 弁護士ドットコム
大手予備校・学校法人河合塾(名古屋市)で世界史を教えていた男性講師が、不当にコマ数を減らされ、その結果、契約更新に至らなかったのは、不合理な雇い止めに当たるとして、7月14日、東京地裁に提訴した。河合塾に対し、地位確認と今年4月からの給与相当分など約640万円を求めている。
【関連記事:店主「心意気や」めし代のない学生「皿洗い30分」でタダ…餃子の王将出町店の35年】
男性の代理人を務める指宿昭一弁護士は、「単なる雇い止めだと、今は労働契約法19条で無効になりやすい。低い条件を提示して、結果的に雇い止めに追い込むような事件が増えている」と話している。
訴えたのは、岡田浩一さん(58)。訴状などによると、岡田さんは1994年から河合塾の講師で、1年間の有期労働契約の更新を繰り返していた。2016年には、浪人生向けの90分授業を週6コマ、現役生(高校生)向けの150分授業を週2コマのほか、夏期・冬期講習などを受け持っていたが、今年3月に示された2017年度の契約では、浪人生向けの6コマが4コマに減らされた。
この結果、月収は約33万5000円から約26万2000円にダウン。長期休暇時の講習なども含めた年収は、約536万円から約445万円に減少することになり、岡田さんがコマの減少は不当であるなどとして、サインをしなかったところ、そのまま契約が終了した。
裁判のポイントは、労働契約法19条だ。この条文では、使用者に対し、客観的に合理的な理由があり、社会通念条相当だと認められない限り、これまでと同等の労働条件での契約をしたものとみなす、としている。岡田さんは、本来であれば、前年度と同様の契約が更新されていたと訴えている。
河合塾がコマを減らした理由は、(1)生徒を対象に行った授業アンケートの結果、前年度2学期の評価が、同1学期を下回っていたこと、(2)岡田さんが校舎内で「河合塾に労使協議会をつくりましょう」などと書かれた名刺を配布したことが、懲戒事由に当たること、だったという。
岡田さんは、アンケートを理由にするなら、もっと長期スパンで見るべきだと反論。職場の労働環境を変えようと、率先して有給休暇を取得するなどしていたため、目をつけられたのではないかと主張している。なお、講師が有給休暇を取得すると、代理の講師が授業をするため、「河合塾にとっては、余計な費用が発生していたことになる。権利としての有給休暇はあるが、予備校講師が取得するのは難しい」(岡田さん)という。
河合塾は「現段階でコメントすることはありません」と回答している。
(弁護士ドットコムニュース)