連合は、年間104日以上の休日確保と引きかえに、これまで"残業代ゼロ法案"と批判してきた「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設を容認するという。毎日新聞などが7月13日に報じた。これまでの方針を覆す動きに対し、労働組合を始めとした各方面から非難の声が上がっている。
「すでに定着している週休2日制と引き換えに高プロを認めるなんてありえません」
高度プロフェッショナル制度とは、年収1075万円以上の為替・証券ディーラーやアナリストなどの専門職を、労働時間の規制や残業代の支払い対象から外す制度だ。高プロと裁量労働制の拡大を盛り込んだ労働基準法改正案は、2015年4月に国会に提出された。
しかし民進党や共産党から「残業代ゼロ法案だ」と批判を受け、継続審議となっていた。政府は、連合の"年間休日104日以上"という条件を受け入れた上で、今秋の法案成立を目指すという。
首都圏青年ユニオンの原田仁希執行委員長は、法案を容認するという連合に対し「ありえない」と憤慨する。
「年間休日104日というのは週休2日制のことです。すでに定着している週休2日制と引き換えに高プロを認めるなんてありえません。今後、『年間104日以上休ませているのだから、それ以上休ませる必要はない』となってしまう危険があります」
そもそも高プロ自体が非常に危険な制度だ。
「高プロは、働いた時間に応じて賃金を支払うという原則を崩すものです。もし制度が導入されてしまえば長時間労働に歯止めがかからなくなるでしょう。しかも経団連は対象を拡大していくと明言しています。ゆくゆくは年収400万円以上を対象にしたいと言っているんです。ありえないことですよね」
裁量労働制の対象拡大についても「高プロと同じように働いた分に応じて賃金を支払うという原則を歪める」と強く批判した。
「逢見事務局長の説明は詭弁以外の何物でもない」
今回の方針転換は連合内部でも議論が不十分なまま強行されたようだ。連合傘下の全国コミュニティ・ユニオン連合会は7月12日、「労働基準法等改正法案に関する要請書(案)に反対する声明」を公式サイトに掲載。連合の姿勢を強く批判した。
「明らかにこれまで議論を進めてきた方針に反するもの」
「逢見事務局長は『これまで指摘してきた問題点を文字にしただけで方針の転換ではない』など説明し、『三役会議や中央執行委員会での議論は必要ない』と語りました。まさに、詭弁以外何物でもなく、民主的で強固な組織の確立を謳った『連合行動指針』を逸脱した発言と言っても過言ではありません」
「長時間労働の是正を呼び掛けてきた組合員に対する裏切り行為」
加えて、「私たち労働組合にかかわる者は、安心して働くことができる社会と職場を後世に伝えていくことが義務であると考えます。今回の政府に対する要請書の提出は、こうした義務を軽視・放棄するもの」とも非難した。