2017年07月14日 10:53 弁護士ドットコム
「目の前に、DV(ドメスティック・バイオレンス)で困ってる人がいたら、見捨てるわけにいく? 何とかせなあかんと思うでしょ?」。モデルのようなすらりとした長身に、ひときわ目立つ美貌を持ち合わせる。弁護士の仲岡しゅんさんだ。トランスジェンダーで、「戸籍上は男性の女性弁護士」として、大阪を拠点に活動している。
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ふだんは、男女関係のトラブル解決に主軸をおいているが、ついつい首を深く突っ込みたくなる性格のため、武勇伝も数知れず。お金のない依頼者から「10円」しか報酬をもらわなかったこともあるという。事件が解決すれば、依頼者と一緒に打ち上げするなど、「友だちみたいな関係」も大切にしている。
一般に、弁護士という仕事は「先生、先生」と呼ばれて、社会的に地位が高いと言われているが、仲岡さんは「お高く止まってはいけない」と話す。「大企業が社会を動かしているように見えるかもしれないけれど、根本で支えているのは労働者です。大坂城を作ったのは豊臣秀吉といわれるけれど、ホンマは大工さんでしょ? そういうところから考えないといけないと思います」(仲岡さん)
服装にもこだわりがある。たとえば、事務所で応対する際は、スーツでなくジーンズを着用。相手の緊張をほぐし、親しみやすさを出す。逆に、裁判所ではスーツを着ているが、尋問の際には全身ヒョウ柄の服を着ていくことも。仲岡さんは「迫力が出ますよね。たたかう気持ちも湧いてきますよ」と笑う。
性的マイノリティ(LGBTなど)の受刑者の処遇問題についても奔走している。現行のルールでは、性的マイノリティの受刑者が、男性刑務所に入るか、女性刑務所に入るかは、「戸籍」によって決まることになっている。ホルモン投与していたり、性別適合手術をしていたとしても、戸籍を変えていなければ、その人は戸籍上の性別で刑務所に入れられることになる。
「要望を出すことで、刑務所も少しずつ対応が変わってきています。しかし、まだまだ不十分なところが残っていますよ。刑務所ごとの判断で、一律にこうしなさいというものもありません。なんで戸籍にこだわるのか。戸籍がどうであれ、わたしはわたし、あなたはあなただと思うんです」(仲岡さん)
そんな仲岡さんが「トランスジェンダー」であることにはっきりと気づいたのは、成人してから。それまでも、なんとなく気づいていたが、「わたしが子どものころは、テレビで『オカマは変態だ』と笑いものにしているような状況だった」と振り返る。最近になって、ようやく性的マイノリティをとりまく状況が改善しつつあるが、仲岡さんは「良い面と悪い面がある」と指摘する。
「良い面は、性的マイノリティの存在が顕在化してきたことです。これまでは『いないとされてきた人』『いたとしても異常な存在とされててきた人』でしたが、人権問題だということが認知されるようになりました」と話す。一方で、単なるブーム的な扱いで、本当のところは、まだまだ理解されていないところがあるという。
たとえば、仲岡さんがテレビへの出演を求められる際、「オネエキャラ」を求められることがある。「オネエ言葉だったり、自虐や毒舌を過剰に求められます。もちろん、私は口は悪いですけど(笑)、みんながみんなオネエなわけがない。変なキャラ付けされずに、素でいられるような社会が本当は理想です」(仲岡さん)
(弁護士ドットコムニュース)