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映画「銀魂」福田雄一監督インタビュー “アニメっぽさ”を取り入れて銀魂ワールドを構築

2017年07月13日 13:54  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

映画「銀魂」福田雄一監督インタビュー “アニメっぽさ”を取り入れて銀魂ワールドを構築
7月14日から映画『銀魂』の劇場ロードショーが始まる。原作は空知英秋による漫画。2003年から「週刊少年ジャンプ」にて連載を開始し、今なお誌上の第一線を走る人気作品だ。その世界観は独特なもので、江戸末期を舞台にしながら、街には高層ビルが立ち並び宇宙人が歩いている。万事屋を営む主人公・坂田銀時を始めとした個性豊かすぎるキャラクターたちが所狭しと暴れまわり、テンポよく繰り出されるギャグやパロディ。なのに時々、ホロッとしてしまうエピソードが織り交ぜられ、人情味あふれる物語が多くのファンを魅了し続けている。

本作のメガホンを取ったのは福田雄一。放送作家として数々のバラエティ番組を担当し、深夜ドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズの監督・脚本・演出を務めたことで一躍注目を浴びる。『HK 変態仮面』(2013年)や『アオイホノオ』(2014年)など、漫画原作の実写化の信頼も厚い。
今回の制作に至ったいきさつを起点に、映画『銀魂』の見どころを監督本人に語っていただいた。お話しいただく中で、福田監督の漫画の実写化における思いも、うかがい知ることができた。

映画『銀魂』
2017年7月14日(金)全国ロードショー
wwws.warnerbros.co.jp/gintama-film/

■いかに『ヨシヒコ』を撮るのと同じくらいふざけられるか

――そもそも福田監督のもとに『銀魂』の話が届くまでには、どのような経緯があったのでしょうか?

福田
いつだったか僕の長男から、「パパなら実写化できるんじゃないか? ってネットで言われてるよ」と教えられたんですよ。僕は普段まったくネットを見ないんですが、どうやら『勇者ヨシヒコ』シリーズを見てくれた視聴者がそう言ってくれたみたいなんです。その頃の僕は『銀魂』のことを知らなくて、むしろ僕の『ヨシヒコ』が別の作品に似ていると言われる状況にちょっとムカついたくらいでした(笑)。
でも『銀魂』のことはずっと頭に残っていて、ある日、松橋真三プロデューサーから「映画をやりたいんですが、何か企画はありませんか?」と聞かれたんです。相手はワーナー・ブラザーズですから、「これは下手なことは言えないぞ……!」と必死に考えた時に、ふと息子に言われたことを思い出して。そこでタイトルを出したのが今回の始まりでした。

――実際に原作を読んでみていかがでしたか?

福田
初めは似ていると言われることに反感がありましたけど、作品を読んでみたら認めざるを得ませんでした。とてもよくできた漫画だったし、何より合点がいったのは、空知英秋先生と僕のギャグの方向性が似ているということ。なるほど、ここで認めなかったら大人じゃないなぁ、と。


――制作にあたって、どんな映画を作ろうと考えられましたか?

福田
まず、いわゆる「俺なりの『銀魂』を作るぞ」という思いは一切ありませんでした。それは原作愛が無いという意味ではなくて、要するに好きだからこそ漫画の面白さを存分に実写化したいんです。
僕自身、脚本を書く時にはすっかり一人の『銀魂』ファンになっていて、そうなるとファンとして何を考えるかというと、いかに実写で忠実に漫画を再現するかということでしかないんですよね。ただ、皆さんも作品に入れ込んでしまうがゆえに「ここをこうしたらもっと良くなるはず」と思うことってありませんか?(笑) 僕も『銀魂』ファンとしてそんなふうに思うことがあったので、その要素を映画に入れていったという感じですね。

――ファンと同じ目線だからこそ、これほどの再現度を追求できるというわけですね。

福田
そうですね。大人気の漫画だしワーナー・ブラザース製作の大作映画だからと遠慮はしないで、あくまで『銀魂』が大好きだという観点に立って思いつくことを採用しました。この作り方ができたのは、空知先生が『ヨシヒコ』と『アオイホノオ』を気に入ってくれたからというのもあります。元は「連載が続いている間はあまり気のりしない」と言っていた空知先生が、僕の作品を見た上で実写化を許してくれたからには、『ヨシヒコ』や『アオイホノオ』を撮る時と同じ感覚で臨まないと空知先生を裏切ることになります。大作だからちゃんとしなきゃいけないんだけど、いかに『ヨシヒコ』を撮るのと同じくらいふざけられるのか。こだわりと言うには違うのかもしれませんが、これこそが自分に課された使命だと思いました。

■10パーセントの「アニメっぽさ」を取り入れる

――剣戟シーンは実写ならではの迫力がありました。アクションシーンはどんなことにこだわりましたか?

福田
基本的に僕はお笑いの人間ですから、普段やらないアクションは良いアクセントになるだろうと思いました。
小栗旬くんとも「アクションはしっかりやっていこう」と最初から話していて、相談をする中で、僕は“舞い”に近いようなエンタテインメント色の強いアクションが好きなんだという話をしていました。その流れで小栗くんから今回のアクション監督を紹介されて、彼のデモンストレーションを見せてもらったらとても面白かったんです。「僕のアクションはジャッキー・チェンに近いんですよ」と本人が言うように、彼が作るアクションはジャッキー・チェン映画ばりにその場にあるものをアクションに取り入れたりするんです。それはまさしく僕が思い浮かべていたエンタテインメントでした。
だから今回の映画もモロにチャンバラをやっているシーンは実は少なくて、飛んだり跳ねたりしているほうが多いです。でもそれがすごく『銀魂』っぽい感じがしたし、普通の剣戟とはちょっと違うぞという、作品のアピールポイントにもなりましたね。


――たしかに普通の実写作品とは違う、漫画やアニメにも似たケレン味が感じられました。

福田
アクションをストイックに作ると、この動きの後はこの場所にいなくちゃいけないとか辻褄を合わせる必要が出てきますが、僕はそういうこだわりは全然ないんです。なので、アクションをやる人にはちょっと傲慢に思われるかもしれませんが、とにかく見て楽しい映像という視点で編集を施しています。石壁を走るシーンの直後に敵を持ち上げていても別にいいじゃない、と。こういう見せ方ってすごくアニメっぽいというか、実写ではあまり見ない手法なので、今までの侍映画には無いようなアクションシーンに仕上がったと思いますね。

――「銀魂らしさ」を再現しようとする上で苦戦したことはありましたか?

福田
予告編にも含まれていますが、新八と神楽が「宇宙一バカな侍だコノヤロー!!」と叫ぶシーンを含めた船の上空の空は何回も直しました。今の日本のCGは大変優秀で、特に風景はどこまででもリアルに再現することができます。ですが、最初に上がってきたリアルな空を見て、僕は「なんか違うんだよなぁ……」と感じたんです。なぜこんなふうに思うんだろう? と話し合う中で、制作の初期段階で、「『銀魂』のCGのステータスは『メリー・ポピンズ』だ」と説明していたのを思い出しました。『メリー・ポピンズ』の映像は、あの時代の精一杯の技術だと思います。もちろん、今ならもっと綺麗に作れます。でもそういうことじゃなくて、『メリー・ポピンズ』の空気感ってすごく夢がありますよね。あの感じが『銀魂』にも欲しかった。
そこで、このリアルな空に10パーセント、20パーセントくらいのアニメっぽさを足してみようと考えました。結果的にはCGの質をわざと落としたことになるので、見る人によっては安っぽい空に見えるかもしれません。けれど僕はこっちのほうが見ていてワクワクしました。うまく言葉にできないんですけど、銀ちゃんの色合いみたいなものとリアルな空が、どうも僕の中でマッチしなかったんです。CGチームには大変申し訳ない注文でしたが、何度か直してもらって、僕の思うアニメっぽい最終的な着地点を見出しました。これも結局、作品に対する僕の思い入れでしかないんでしょうが、トータルで見ると正解だったと思っています。


――お話を聞いていると、福田監督の中で今回の映画は「アニメっぽさ」が重要なカギだったようですね。

福田
結局アニメや漫画とか、自分が好きなものがそうなんですよね。たとえば『アオイホノオ』で、柳楽優弥くん演じる焔モユルにすごくショックなことがあった時にバーンと照明が点くとか、リアルでは絶対にありえないじゃないですか(笑)。絶対にないんだけど、そういうことを僕は平気なツラしてドラマでやってきましたから、最終的にはそこが自分のこだわりとして出てきたんでしょうね。

――では最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。
福田
ファンの方の中には、実写化に抵抗がある人が少なくないと分かっています。僕は実写の楽しみとは、実在する生身の役者が、いかにキャラクターにアプローチしているかを味わうことにあると考えています。その上で、あえて原作もアニメも見ないで臨んでほしいと役者に伝えることもあります。それは僕が監督としてそれぞれの能力を引き出すために、アニメを意識しないほうがいいと思う人にはそうしているということです。僕の武器となってくれる役者のポテンシャルを最大限に活かして、実写の楽しみを100パーセント提示できたと思っていますので是非、実写ならではの部分に注目して見てみてください。

映画『銀魂』
(C)空知英秋/集英社 (C)2017 映画「銀魂」製作委員会