3年目のシーズンも残すところあと4戦となった2016/2017フォーミュラE。タイトル争いに注目が集まるなか、7月15~16日にダブルヘッダーで行われるニューヨークePrixではポイントランキング首位につけるルノーe.ダムスのセバスチャン・ブエミが大会を欠場。タイトル争いの分岐点になるであろう今大会を前に、テレビ朝日でレース解説を行う片山右京氏に第9戦、第10戦の見どころを聞いた。
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ブエミ不在の2連戦! 初めてのニューヨーク大会は大波乱の予感!
ローゼンクビストが台風の目に!?
片山右京が語るダブルヘッダーのチーム戦略とは!?
第7戦、第8戦、今シーズン初のダブルヘッダードイツ大会ではローゼンクビストがインドのマヒンドラレーシングに初の優勝をもたらしたことは本当に大きな意味を持ったレースだと思います。
第8戦ではポールポジションからのスタートで1位でゴールしましたが、ピットでの違反で10秒のペナルティを受け、その結果、2位に降順しました。実際はかわいそうなペナルティだったとは思いますね。
モータースポーツにはそういうこともある、うがった見方をすれば、それによってチャンピオンシップが面白くなるんじゃないかって気もする。
同様にルーカス・ディ・グラッシも、第7戦でポールポジションからのスタートだったのに、バッテリーのオーバーヒートでオーバーテイクされたり、結果的に2位。第8戦は3位。チャンピオンシップを争っている人間が上位にいて役者が揃っていたなという気がしますね。
今回ピットインでトラブルがあって順位が変わるシーンがありましたが、ほかのカテゴリーのレースでもタイヤ交換とか給油でのトラブルもあるから、ピットインでトラブルが起きるのは何もフォーミュラEに限った話じゃない。
ただ、マシンを乗り換えるってのはフォーミュラEならではですよね。それがレースの面白さを演出している部分でもある。
今回レースの総走行距離が100キロを初めて超えて、ソフト、マネジメントが進化したり、エネルギマネジメントだけでなく温度管理だとかチームが新たなチャレンジを要求されている。これはずっと続けてもいいのではないかというルールではありますね(笑)。
ローゼンクビストが大量得点で総合ランキング3位に上がりました。そして次の第9戦、10戦にブエミがいません。実際にブエミとの差は71ポイントありますけど、この勢いで次の2連戦で50ポイントとかポールポジションとか大量点を取っていけば、最終の2連戦でチャンピオンシップを取れる大きな可能性が出てきますから、ブエミがいないのは大きなチャンス。
ローゼンクビスト、マヒンドラレーシングの勢い、最後尾からスタートしたチームメイトのハイドフェルドも10位でフィニッシュしてポイントを獲得するようなスピードがマシンにありますから、この流れでブエミがいない間にポイントを稼ぐ可能性は高いです。
ディ・グラッシが2位と3位続けているけど、32ポイントの差をディ・グラッシがどうブエミに詰め寄っていくか、フォーミュラE得意の最終戦でチャンピオンが決まるという、最終問題で原平さんに1000点のところが1万点になっちゃうみたいな(笑)、最終戦だけやればいいだろみたいな(笑)。本当に速くてミスをせず予選で上位にいることが大切になってきます。
レース自体もエネルギーの管理からクーリングなどを含めて総合力でチャンピオンシップを決める3rdシーズンになっています。チーム力のレベルがあがってきましたよね。ブエミが2戦出られないってのは神様のいたずらなんでしょうか、盛り上げてくれてますよね。
このブルックリンサーキット、ポイントは、ホームストレートの先にあるターン1ですかね。
単純なヘアピンじゃなくてここも回り込んだような複合のロングコーナーになっていて、ストレートエンドが抜くチャンスという定石でいえばオーバーテイクポイントはターン1の入り口になってくると思います。
そのためにターン10を全開で来れないとホームストレートでスピード差がつかないから、その高速コーナーでのセットアップが要になります。
でもタイトなコーナーがあるので、リアヘビーのFEではブレーキングでオーバーステアが出やすいし、高速コーナーで弱アンダーに仕上げていきたいけど、タイトなところでも曲がれないと最悪クラッシュする可能性もある。そのあたりのセッティングをどう仕上げるかですね。
それと、市街地サーキットだけど港の近くということは、路面がアスファルトと違ってセメントっぽい荒れた路面の可能性もある。
それを含めて初めての大会でデータもないし、未知のセッティングでレースをするので、だからこそ1レース目、修正して翌日の2レース目とパッケージで考えて『2レースで何ポイント取れるか』っていうチームの向き合い方が大事じゃないでしょうか。
今回ブエミがいないので追う立場のABTシェフラーアウディスポーツとマヒンドラレーシングにとってはその辺りのプレッシャーも大きいでしょうね。鬼の居ぬ間にゆっくり洗濯もしていられない感じで(笑)
FIAフォーミュラE選手権第9、10戦アメリカニューヨーク大会 TV放送スケジュール
第9戦 2017年7月15日 CSテレ朝チャンネル2
決勝 7月16日(日)4:50~<生中継>
フリー走行/予選/決勝 午前7時50分~11時30分<録画放送>
第10戦 2017年7月16日 CSテレ朝チャンネル2
フリー走行 7月16日(日)20:00~<生中継>
予選 7月16日(日)21:50~<生中継>
決勝 7月16日(日)25:50~<生中継>
BS朝日 第9戦決勝ハイライト 2017年7月18日(火)23:00~23:54
BS朝日 第10戦決勝ハイライト 2017年7月20日(木)23:00~23:54
■独走ブエミがニューヨーク大会を2戦連続欠場!
総合優勝争いは大混戦に!?
3年目を迎えた「FIAフォーミュラE選手権」もいよいよ大詰め。残すはニューヨークで開催される2連戦とカナダでの2連戦の計4戦となりました。
ここまで昨シーズンの総合チャンピオン、ルノーe.ダムスのセバスチャン・ブエミが8戦を終えて157ポイントを獲得し、2位以下を大きく引き離しています。
ブエミの強力なライバルであるルーカス・ディ・グラッシ(ABTシェフラーアウディスポーツ)は、32ポイント差で総合2位。ドイツ大会の2連戦では連続表彰台で36ポイントを獲得し、ブエミとの差を縮めました。
さらにマヒンドラレーシングのフェリックス・ローゼンクビストがドイツ大会2連戦で総合3位に大躍進。一躍台風の目となっています。
次の舞台はフォーミュラEとして初開催のニューヨーク・ブルックリンサーキット。マンハッタン南や自由の女神を背景とするマンハッタン島の対岸、ブルックリンのレッドフック地区に特設され、ピアー11とブルックリン・クルーズ・ターミナル1を周回する約2キロのコースです。
トラックは高速セクションのミックス、ヘアピン、ウォーターフロントに狭く入っていくなど競技としても注目されます。
ブエミ不在のニューヨーク2連戦で、ライバルのディ・グラッシが一気に逆転するのか、台風の目ローゼンクビストがカナダ2連戦での歴史的大逆転に向けた足がかりを作るのか。ますます盛り上がるフォーミュラE、第9戦、第10戦ニューヨーク大会にご期待ください。