2017年07月12日 10:33 弁護士ドットコム
天皇陛下の退位を実現する特例法が6月9日に参院本会議で可決、成立した。この法律をめぐるニュースで話題になったのが、「三種の神器」の贈与税を非課税とした点(退位特例法第7条)だ。
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三種の神器は、八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、草薙剣(くさなぎのつるぎ)のことで、これまで歴代天皇によって、継承されてきた。
ネットでは、「贈与税が掛かる三種の神器とかイヤ過ぎるわ」、「そんなことできるわけなかろう」など様々な反応が投稿されている。
もし、三種の神器の贈与税を算出しようとしたら、どのようなプロセスが必要になってくるのか。三宅伸税理士に聞いた。
そもそも皇族に納税義務があることに驚かれた方もいるのではないでしょうか。皇族や天皇陛下も税金を納める義務があります。皇室の財産の多くは戦後国有財産となりましたが、一部は皇室が所有しています。
昭和天皇が崩御された時、今の天皇陛下は約4億円の相続税を納付しました。ただ、三種の神器を含む「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」については、相続税法第12条で相続税の非課税財産として明記されています。
天皇陛下が皇太子殿下に生前に譲位された場合には、三種の神器は天皇陛下が皇太子殿下に贈与されることになります。これまでは天皇の終身在位が前提であり、退位や生前贈与を想定していなかったため、三種の神器の贈与に関する規定はありませんでした。
もし三種の神器に贈与税が課せられるとしたら、贈与税はどのように算出されるのか。
「まず三種の神器の評価額を決定しなければなりません。三種の神器について諸説あるようですが古事記にもその記載があり、骨董品などに該当すると考えられます。
贈与税を計算する際の評価は贈与時の時価です。通常、骨董品は売買実例価額や精通者の意見価格などを考慮して評価されます。実際には、同様の物が売られている場合には、その価額を参考にします。古美術商などに鑑定を依頼し鑑定士に鑑定書を書いてもらう等々です。
ただ、三種の神器は天皇陛下でさえ実物をご覧になることはできないとも言われています。誰も見たり触ったりできないものを鑑定すること自体が難しいのかもしれません」
もし、評価額が1億円だとして、父から息子への贈与だとした場合、単純に三種の神器のことだけに注目して、どのくらいの贈与税がかかると考えられるのか。
「まずは、1億円から基礎控除となる110万円を引きます。直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与については、特例税率を適用します。その税率は4500万円を超える場合は55%ですので、9890万円(1億円-110万円)×0.55=5439万5000円ということになります。そこからさらに控除額640万円を差し引いて、4799万5000円となります」
【取材協力税理士】
三宅伸 税理士
大阪府立大学経済学部卒業後大手リース会社勤務。仕事、育児、勉強を両立しながら大阪の税理士法人に勤務。平成26年11月堂島で独立開業 平成29年4月業務拡大にともない江戸堀に事務所移転。誠実であること、素直であること、常にお客様の立場に立って考えお客様と共に成長していくことをモットーにしている。相続、起業支援、介護事業支援等を軸に幅広く活動している。
事務所名 : 三宅伸税理士事務所
事務所URL: http://miyake-tax.jp
(弁護士ドットコムニュース)