2017年07月11日 17:33 弁護士ドットコム
7月10日午後6時から始まった有料会員向けのビッグセール「アマゾンプライムデー」。3年目となる今年は、昨年よりも時間を延長して、11日の午後23時59分まで実施される。初日は開始直後からトップページにつながりにくくなるなど、例年以上に注目を集めている。
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今回のアマゾンプライムデーは、ネットニュースなどで大々的に報じられているが、セールの内容だけでなく、「宅配業者がパンクしないのか」といった点も注目されている。宅配量の増加に耐えられなくなったヤマトが当日配送から撤退を始め、デリバリープロバイダと呼ばれる小規模事業者の活用が増えているからだ。
本格的な配送が始まった7月11日には、弁護士ドットコムニュース編集部にも「荷物が多くてミスが起きてしまった」などの情報が寄せられている。運送業者のドライバーたちは、12日にかけて、「かつてない程の量が到着するかもしれない」と戦々恐々としている。
プライムデーが始まった7月10日夜、アマゾンの制服を着た配達業者に話を聞くことができた。東京都港区を担当する業者の男性によると、会社からは「明日は年に一度の大安売りの日」と言われ、あらかじめ「忙しくなる」と念を押されているそうだ。
本格的な配送が始まった翌7月11日の朝、都内北部で、アマゾンプライムナウの配送を担当する男性は、朝から荷物が大量だと、乾いた笑いを浮かべた。20数名で新宿区や豊島区などを担当しているという。
「時間指定があるから大変ですよ。もう死んじゃいそう。水を箱買いする人が多いみたいなんですが、1度に何ケースも頼むんだからね。移動は台車を使うからよいけど、団地の5階まで階段なんてのもあるから…」
一部地域を対象に、注文から配達まで最短2時間で行う「アマゾン プライムナウ」でも、プライムデーにあわせて、プライムデー限定イベントを実施。しかし、遅延トラブルも発生したようだ。
東京都内の主婦・J子さんは、7月10日の夜、「プライムナウ」が扱う日本橋三越本店のプライムデー限定の商品を注文した。ランチに食べようと、配達時間を12-14時に設定したが、到着したのは、14時ギリギリ。そして配達員から「一部、商品が入っていないようだ。不足分は後で必ずお届けしますんで」と言われた。
しばらく待っても、アプリは「商品準備中」のまま。予定より遅れて1時間後、アマゾン側からお詫びの電話が入り、持ち出しの際の「エラー」があったためだと説明された。その後、300円のクーポン券がアカウントに送られてきたそうだ。
そして、15時30分過ぎに、配達員が到着。「(三越での)ピックアップを間違えました。ごめんなさい。いつもは荷物が少ないんですが、今日はどっさりとあって。プライムデーだからかもなんですけど、本当に量がすごくて。ごめんなさい」とひたすら謝っていたという。
J子さんは「舞台裏の大変さが配達員の方の表情からわかり、なんだか申し訳なく感じました」と話していた。
アマゾンの配送は、現在、当日配送から撤退を始めたヤマト運輸と、「デリバリープロバイダ」と呼ばれる小規模業者などが担っている。神奈川エリアで働くヤマトのセールスドライバー男性Aさんは、次のように最近の動向を語る。
「これまではアマゾンだけで、1人当たり午後便で20~30個、夕方便で10個ほど入ってきていました。当日便が減ったので、午後からのアマゾンが少なくなり、夜の配達が大きく減りました」
減った分は別の業者に回っているとみられるが、プライムデー以前から、遅配を訴える声がネット上で多く見られるようになっていた。
アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長は7月10日、プライムデーの開幕を前にした記者会見で、この問題に言及。件数こそ明かさなかったものの、遅配の発生を認めた。そのうえで、「問題は解消した」「プライムデーに向けて準備をしてきた」と強調した。
この点について、ヤマトやアマゾンの倉庫に潜入取材したことがある、ジャーナリストの横田増生氏は次のように疑問を呈している。
「宅配は上位5社で99%以上のシェアがあり、デリバリープロバイダは、実力も経験も不足しています。アマゾンはサーバー事業をやっているのに、そのトップページにつながらない。アクセス過多だとしたら、プライムデーで相当な数が買われているはず。既に遅配など、無理が出てきているのに、デリバリープロバイダだけでは対応できないでしょう」
結局、メインになるのはヤマト運輸とみられるが、ヤマト自身もお中元の配達と重なり、かなりの負担を強いられそうだ。
都内の気温は30度を超え、7月11日で7日連続の真夏日。炎天下の中、宅配業者は働いている。プライムデーによる配送のピークは明日12日まで続く見込みで、明日以降、さらなる混乱が生じる可能性もある。
(弁護士ドットコムニュース)