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KinKi Kids、GLAY、UVERworld……新作で自らのイメージをどう超えていく?

2017年07月11日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ブレイクを果たし、一度ピークを迎えたアーティストには、“自らのイメージを超えなくてはいけない”という勝負が待っている。ひとつのスタイルを維持しながら活動を続けるケースもあるだろうが、たとえばMr.Childrenやスピッツがそうであるようにパブリックイメージを引き受けつつも常に新しい表現にトライすることが、息の長いアーティストになる秘訣なのだ。そこで今回は“アーティストのイメージの更新を促す新作”を紹介したいと思う。


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 CDデビュー20周年を迎えるKinKi Kidsのニューシングル『The Red Light』表題曲は“作詞:久保田利伸、森大輔/作曲:久保田利伸/編曲:森大輔”によるブラックミュージック濃度高めのミディアムチューン。最新鋭のR&Bトラックとギターサウンドが絡み合うサウンドのなかで久保田節としか言いようがないメロディがうねりを上げているのだが、この難易度高めの楽曲をKinKi Kidsのふたりは、きわめてナチュラルに歌いこなしている。ジャストのタイミングでビートを捉え、正確にピッチを刻む堂本光一、ややレイドバック気味のボーカルで楽曲の表情を与える堂本剛、そして、ふたつの声が重なったときの心地よさ。ふたりのシンガーとしての個性の違い、男性デュオとしての機能性の高さが際立っていることも、この曲の魅力だろう。


 JR北海道・北海道新幹線開業イメージソング「Supernova Express 2016」、TVアニメ『ダイヤのA-SECOND SEASON-』(テレビ東京系)オープニングテーマ「HEROES」など14曲中11曲にタイアップが付いたGLAYのニューアルバム『SUMMERDELICS』。4人のメンバーの楽曲が均等に収録されたシングル『G4』シリーズの拡大版とも言える作品だが、もっとも強いインパクトを放っているのはHISASHIの楽曲。なかでもオープニングを飾る「シン・ゾンビ」(アーケードゲーム「太鼓の達人」タイアップソング)はアニメ、ゲームとの親和性が高いHISASHIの個性が爆発した、まさにGLAYのイメージを刷新するパワーを持ったナンバーだ。この楽曲をアルバムの1曲目に推したのはリーダーのTAKURO。“HISASHIのセンスを活かすことでGLAYの新しい魅力を生み出すはず”というジャッジは大正解だと思う。


 「映画『銀魂』の主題歌はUVERworld」と発表されると同時にすさまじい注目を集めてきたニューシングル『DECIDED』表題曲は爆発的なスピード感と圧倒的なヘビィネスをたたえたバンドサウンドのなかで“自分のやりたいことを貫け”というメッセ—ジを放つロックチューン。特に<自分に何ができるか?じゃなく/自分に何が合うか?じゃなく/本当に心が一番選びたいものを選んで行け!>という歌詞には、老若男女を問わず、すべてのリスナーに“あなたの生き方どうですか”と問い質しているようなパワーが宿っている。メンバー全員の決意を描いたMVも印象的。常に有言実行であり続けてきたTAKUYA∞(Vo)を筆頭に、6人の言行一致ぶりが、この曲の説得力につながっているのは間違いない。8月2日にリリースされる3年ぶりのオリジナルアルバム『TYCOON』への期待も高まる。


 indigo la Endの約9カ月ぶりのワンマンライブ(6月23日東京・EX THEATER ROPPONGI)のMCで川谷絵音(Vo&Gt)はニューアルバム『Crying End Roll』のタイトルについて「映画のエンドロールみたいに見逃されがちな部分もしっかりこだわって音楽を作ってるので、そういうところにも気付いてほしい」とコメントした。その言葉通り本作は、斬新なアイデアと卓越した演奏技術が共存した“何度聴いても新しい発見がある”作品に仕上がっている。“切なくも狂おしい恋愛感情を描いた歌”と“先鋭的なバンドサウンド”というこのバンドの特性はさらに進化。ソングライター、アレンジャーとしての川谷の個性、高いプレイヤビリティを誇るメンバーの演奏がさらに強く結びつき、唯一無二としか言いようがないバランスが実現しているのだ。新たな音楽的可能性を示唆した本作によってindigo la Endは、その表現の幅を大きく広げることになるだろう(個人的なベストトラックは、緻密なリズム、速弾きのギターフレーズと開放的なサビのフレーズがひとつになった「天使にキスを」です)。


 KANA-BOONにとって通算4度目となる『NARUTO -ナルト-』とのタイアップソング「バトンロード」(テレビ東京系『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』オープニングテーマ)は、圧力を増したバンドサウンドのなかで、ドラマティックなボーカルライン、エモーショナルなギターフレーズが絡み合うロックナンバー。これまではスタジオでのセッションでアレンジを固めることが多かったKANA-BOONだが、この曲ではソングライターの谷口鮪(Vo&Gt)がひとりでデモを作り、それを踏襲する形で制作されたという。当然、谷口がイメージする音像、フレーズなどが色濃く反映されているわけだが、このモードチェンジによってKANA-BOONの音楽性も拡大していくはず。高校の同級生同士でバンドを結成し、その結束力の強さを武器に躍進を続けてきた4人は、この曲をきっかけにして“ミュージシャン同士の集合体”へと変化することになるのかもしれない。(森朋之)