スーパーフォーミュラ第3戦富士、ピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)は8番グリッドからスタートした自身初の決勝250km戦をホンダ勢最高の5位でフィニッシュした。
開幕前のテストでの“定位置”を2レース連続でゲットして復調モードに乗った格好だが、もちろんガスリーはこれに満足することなく、次戦以降のさらなる改善、前進を狙っている。
「エキサイティングなレースだったし、とても面白かったよ。マシンパフォーマンスも向上したし、チームとともに良い方向性を得られたと感じている。その結果、4位に近い5位でフィニッシュできた。満足かって? それは……。でも、ポジティブないいレースだったと思う」
笑顔弾ける、とまではいかないものの、猛暑のレースを戦い終えたガスリーは、今季これまでのレース後で最も明るい表情を見せた。
1周目に僚友・山本尚貴に次ぐ6番手へとポジションを上げたガスリーは、55周レースの18周目にピットイン、約14秒のストップ時間で給油と4輪タイヤ交換を実施した。
手塚長孝監督によれば、このタイミングは順位を争うライバルたちとの位置関係を考慮しての状況判断によるもの、そして給油時間と4輪交換は決め打ちだった。つまり、満タンではなく少し軽めの燃料タンク状態でガスリーはレースをスタートしていた。
マシンのフィーリングが前戦あるいは予選時より向上し、しかもフルタンクではなかったとはいえ、やはりレース序盤のマシンが重い状態では「かなり大きいタイヤのデグラデーションを感じた」とガスリーは振り返る。だが、「フレッシュなタイヤに換えて(マシンも軽くなって)からは、いいペースで走れた」。
レース中盤以降は、タイヤ無交換を選択したトムス勢や関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)らを追いかけ、追いつく展開の戦いとなり、36周目には中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S)をパス。
最後は関口を追いかけまわしたのだが、惜しくも0.03秒及ばず5位でのゴールとなった。「(関口とは)ロングバトルだった。すごく接近した戦いでもあったけど、彼(トヨタエンジン)についていくのは決して簡単なことじゃなかったね。相手のミスを誘いたかったんだけど(無理だった)」。手塚監督は「いい経験ができたと思います」と評価する。
長くて暑いレース、タイヤのマネジメントが重要になるかもしれないという予選後のガスリーの見方は的中した。4輪交換前提でレースに臨んだ彼とチームの作戦判断は成功したといっていい。「チームとともに良い方向性を得られた」との言は、セット面での改善とともに戦略面での成果を示唆している。
また、前日にはドライバーとスタッフの間でミスコミュニケーションによるセット不調があったわけだが、そこからのリカバーを果たせたことへの充実感も含まれているだろう。
新人ながら、開幕前のテストではホンダ勢トップタイムを連発していたガスリー。開幕後は苦戦に陥ったものの、前戦岡山のレース2(7位)に続いてのホンダ勢決勝最上位ゲットで、自己最高位を更新した。
今回はチームメイトの山本尚貴が「いいタイムで走っていた」(手塚監督談)のにタイヤの異常に見舞われるという状況があり、彼がレースをフィニッシュできていたらガスリーとの前後関係がどうなったかは分からないが、正直なところホンダ勢苦境といえる今季前半の状況下、チームともどもいいところを見せつつ、ガスリーは再び“定位置”に定着しつつある。
だが、やはり当人は満足していない。ポジション的には開幕前の状況に戻っても、「まだテストの頃にフィーリングにはない。もっとインプルーブしていきたいし、チームとホンダと一緒に努力し続けるよ」
次は8月20日決勝のもてぎ戦になる。「僕にとっては(公式テストがない)ニュートラックだし、タイヤに関して(2スペック制という)ユニークな要素も入ってくる。またしっかりと事前の解析をして臨みたいと思う。ホンダのシミュレーターでもてぎのコースを経験するよ」
今度も少々長めの実戦インターバルにはなるが、「やっぱりいろいろな仕事で忙しい。ただ、8月のアタマにホリデーが取れるはずなので、そこでリラックスして、もてぎ戦にはより強い自分になって戻って来るよ」
手塚監督によれば、ひさびさの2カー体制になった今季は両車で違うセットを試しての情報交換等がうまく機能しているという。ガスリーとTEAM MUGENが、富士同様に伝統的にトヨタが強いもてぎでどう戦うのか。次戦の大きな焦点となりそうだ。