波乱気味となった第3戦富士の予選。ホンダ陣営はどこまで巻き返すことができるか。 スーパーフォーミュラ第3戦富士の予選はP.MU / CERUMO · INGINGのワンツーという結果になったが、今回の予選ではQ2で予選順位を大きく替える赤旗、そしてトヨタとホンダのパフォーマンス特性など、いくつかポイントとなる要素が見られた。明日の決勝の展開予想とともに、第3戦富士の予選を振り返る。
●Q2赤旗で分かれた明暗
今回の予選で大きなポイントになったのが、予選Q2での赤旗だ。セッション残り約1分30秒で小林可夢偉(KCMG)がレクサスコーナーでスピンをしてストップしてしまい、ダブルイエローが振られ、後続でアタック中のドライバーたちはタイム更新を諦めなくてはならず、赤旗再スタートとなってしまった。
可夢偉の後ろにいたドライバーたちは、その時点ですでにセクター3までニュータイヤのグリップのおいしい部分を使い切っていた。ダブルイエローを見た石浦宏明(P.MU / CERUMO · INGING)が「一瞬、時が止まった」と会見で述べたように、後続ドライバーにとってはまさかの展開となってしまったのだ。
さらには、この赤旗再スタートまでにも伏線があった。可夢偉がストップする前の周に、実はアンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)や石浦は計測2周目でアタックに入っていたのだが、ロッテラーがアタックを止めてペースを落としたことで、後続の石浦やヤン・マーデンボロー(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)を始め、多くのドライバーたちがアタックを止めて前後の間隔を調整し、翌周のタイミングに懸けることになったのだ。
その計測3周目の「この周しかないタイミング」(石浦)で、不運にも可夢偉のスピンの影響を受けてしまい、結果的に本来ならQ3に残れるはずのドライバーたち、特に2列目以内が見えたロッテラーや関口と同等に好調だったマーデンボローが上位グリッドのチャンスを逃してしまった。
石浦と山下健太(KONDO RACING)は、その後の再スタートでなんとかQ2突破を果たしてQ3でも好結果を残し、P.MU / CERUMO · INGINGの2台がフロントロウを独占する速さを見せたが、このQ2はなんともすっきりしない内容となってしまった。
●富士はエンジンパフォーマンス面でトヨタが優勢?
ポールを獲得したトヨタ陣営のトップ、国本雄資(P.MU / CERUMO · INGING)のセクタータイムと、ホンダ陣営のトップ、予選5番手の山本尚貴のセクタータイムを比較すると、
国本雄資 18秒553/24秒463/40秒028
山本尚貴 18秒760/24秒422/40秒296
以上のタイムからも、セクター1とセクター3で約0.2秒ずつ差が付いていることが分かる。
ホンダの佐伯昌浩プロジェクトリーダーは「車体、エンジン含め、パッケージとして詰め切れなかった部分の差が出たと思います。セクター3は差がありましたね。この僅差のスーパーフォーミュラでコンマ2秒差は大きい」と、ウイークポイントを把握するも、ドライバーやチーム、それぞれで事情も異なるため、一概にどこが良くないと断言できないという。
チーム側からも声として多かったのは、この富士ではトヨタ陣営のエンジンパフォーマンスが優れているという点。出力自体に大きな差はなさそうだが、セクター3での上り区間ではエンジンのピックアップ、ターボラグなどの細かい制御やマッピングの部分の差が出ているという見方が多かった。
当然、トヨタ陣営はこの富士をベースに開発を進め、テストも多くこなしているだけに、エンジンの特性面でホンダ陣営以上に富士のサーキットとのマッチングがいいのは理解できる。一方、ホンダ陣営としては鈴鹿、SUGO、オートポリスなどをエンジン特性面で得意としており、それぞれの個性の違いとも言えるが、いかんせん、ホンダ陣営は富士では厳しい戦いが強いられる。
●明日の戦略とレースのポイント
明日の決勝のポイントは、優勝争いはもちろん、スタートが重要になることは間違いないが、その次のポイントとしてはピットインタイミングがフォーカスされる。55周の周回数の内、10周分程度は給油が必要で無給油作戦は難しそう。スタートから10周過ぎに先にピットインするドライバーたちと、後半にピットインするドライバーたち、前回の岡山のレース2のように、2グループに分かれて展開するパターンになりそうな気配だ。
また、今日の予選でも路面温度が49度まで上がったように、タイヤのタレは大きくなるため、どこまでタイヤを持たせることができるかは大きなポイント。タイヤのグリップダウンが大きくなることからも、オーバーテイクがしやすい状況にあり、各ドライバーのバトルが多く見ることができそうだ。