2017年07月07日 10:53 弁護士ドットコム
近所のかわいい飼い猫がわが家の庭でくつろぐーー。なんとも微笑ましい光景ですが、実際は、放し飼いによって、トラブルに発展することもあるようです。
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インターネットのQ&Aサイトには、「家庭菜園や花壇を荒らしていくので、困っています」、「車のボンネット、フロントフェンダーに無数の細かい引っかきキズ、皮脂、さらには毛玉を吐いた後があるときもあります。猫がボンネットの上で暴れて、セキュリティがなる事もしばしば」、「糞尿をまき散らされています」など、多くの被害が寄せられています。
猫の迷惑行為に憤る投稿者の中には、「修理代金を飼い主に支払わせたり、最悪、警察の方に動いてもらうことは可能なのでしょうか?」「もう我慢も限界なのですが、この猫を捕獲して保健所に連れて行けば処分してもらえますか?」などと望む人もいるようです。
迷惑行為を繰り返す猫の飼い主に、何か責任を負わせることはできるのでしょうか。飼い主がわからない場合、猫を勝手に保健所に届けても良いのでしょうか。鈴木智洋弁護士に聞きました。
飼い主の責任をどう考えればいいのでしょうか。
「動物の飼い主には、その動物の種類、習性等に応じて適正に飼養・保管するよう努める義務があるとされています(動物愛護法7条1項)。
猫を放し飼いにする場合、比較的自由に動き回ることが考えられ、その結果として他者の身体・財産に損害を与えるような行動に出てしまう事も想定されますので、そのような事態を避けるような方策を取ることが求められます。
いずれにしても、飼い猫が他者の身体・財産に損害を与えるような行動に出てしまった場合、その飼い主は動物の占有者の責任(民法718条)として、その損害を賠償する義務があると考えられますので、今回のケースでも、『本当にその猫が行ったことなのか?』という立証の問題はあるかもしれませんが、その点がクリアされるのであれば、被った損害の賠償を求めることは可能だと思われます」
では、もし、飼い猫に庭を荒らされるなどの被害を被った人が、その猫を捕まえて保健所に届けても良いのでしょうか。
「確かに、都道府県等は、犬猫の引き取りを求められた場合にはこれを引き取る義務があるとされています(動物愛護法35条1項)。
しかし、この規定は、所有者が引き取りを求めた場合を想定していますので、今回のケースのように、所有者ではない人が引き取りを求めたとしても引き取り義務は存在しないことになります。
また、法的な義務を少しはぶくとして、現実問題としては、保健所に引き取られた犬猫の一定数は殺処分されているという現実がありますので、そういった観点からも、今回のような場合には保健所側も引き取りを拒否する可能性は高いと考えられます」
では、引き取りについては、ないと考えていいのでしょうか。
「場合によっては、猫を捕まえた人が、例えば『自分の猫だ』と言って引き取りを求めるような事態も考えられます。そのような場合には、都道府県等としても引き取りをせざるを得ないかもしれません。
そのような事態を避けたいのであれば、飼い猫に首輪をし(なお、動物愛護法7条6項も、首輪等をするよう努めることを飼い主に求めています。)、その首輪に飼い主の氏名、連絡先等を記載しておくなどして、容易に保健所に引き取られてしまわないようにする方策を講じておくことも検討しておくべきでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
鈴木 智洋(すずき・ともひろ)弁護士
専門は労働法(使用者側限定)、行政法(行政側限定)、動物法・ペット法。動物法・ペット法に関しては、ペット法学会に所属する他、国立大学法人岐阜大学応用生物科学部獣医学課程の客員准教授も務めている
事務所名:後藤・鈴木法律事務所
事務所URL:http://www.gs-legal.jp/index.html