『週刊少年ジャンプ』に掲載された「ゆらぎ荘の幽奈さん」(作:ミウラタダヒロ)という作品の性表現が子どもに悪影響を与えるのではないかという声が上がり、波紋を呼んでいる。
7月3日発売の最新号の巻頭に、同作品のキャラクター人気投票の結果がカラーで掲載されている。女性キャラクターたちは水着がはだけてしまっており、顔を赤らめて恥ずかしがったり、戸惑って涙を浮かべたりしている。乳首や局部は隠されているが、ほとんど裸だ。
この表現が問題だと感じた人がいたようだ。弁護士の太田啓子さんは7月4日、
「息子には少年ジャンプは読ませない。息子をもつ保護者の皆さん。少年ジャンプ編集部に抗議を。どうかと思うよ」
と投稿。表現を問題視する人々と、規制に反対する人々との間で議論が繰り広げられることになった。
「嫌がっている相手の意思を無視して性的行為を行うのが普通のことだと学んでいく」
この表現に反対する人々が問題視したのは、裸にされた女性キャラクターたちが一様に嫌がっているということだ。それを娯楽にとして子どもに見せるのは危険ではないのかという声が相次いでいた。
「女の子の体をパーツをデフォルメしたり物のように扱ったり嫌がっていても大したことではなく楽しいことのように表現したりするのは、子供が誤った認知をする可能性が高いから止めてほしい」
ジェンダー研究が専門で大阪大学教授の牟田和恵さんも「こうして子供の頃から、女性をただ性的対象物として見ること、嫌がっている相手の意思を無視して裸にし性的行為を行うのが普通のことだと学んでいくんですね」と憤慨する。
7月6日には太田弁護士が再度、自身の主張をツイートした。「性暴力を娯楽とする表現から息子を遠ざけたいだけで、性表現全てから息子を遠ざけたい」わけではなく、あくまでも「セクハラを娯楽として描くのは問題」だと考えているという。
ろくでなし子「子供がいつまでも無垢であってほしい親のエゴ」
一方でこうした声に対し、「(見せないのは)息子が可哀想」「子どもへの影響を思ってしまいます」といった声も多かった。健全な成長のためには、ある程度のエロも必要だと考えているのだろう。
子どもが読むのを禁止したり、編集部への抗議を呼びかけるのはやりすぎではないかという意見も多かった。
「自らの性嫌悪を子どもに、ひいては社会に押しつけたがるのは迷惑ですね」
弁護士の佐藤大和さんも「少年ジャンプを読み『努力・友情・勝利』を学び(ついでに性も学び)、弁護士を目指した僕としては、ちょっと…。価値観は人それぞれですが。性について過度に蓋をして規制(すぐに抗議)するのはどうかと」と疑問を呈した。
アーティストのろくでなし子さんは、子どもにエロ漫画を読ませないというのは「親のエゴ」だと指摘し、規制よりも性教育が重要だと説いた。
「自分が親目線になると『できればエロ漫画は見て欲しくない』と思うけど、それは子供がいつまでも無垢であってほしい親のエゴなんだなぁ」
「(エロ漫画やAVは)みんなファンタジーなんだよ。実際の人間にするには相手の了承が必要で、避妊しないと病気や望まない妊娠するんだよ。と性教育する方にはなぜ向かないんだろ」
今回の件について苦情は寄せられていないのか集英社に問い合わせたところ、
「『週刊少年ジャンプ』には毎週さまざまなご意見が寄せられます。それに耳を傾け、より多くの読者の方に楽しんでいただけるよう引き続き誌面作りに取り組んで参ります」
ということだった。