シルバーストン・サーキットは、F1イギリスGP開催地としての契約を正式に解除する寸前の状態にあるという。
現在の契約では、シルバーストンは2027年までF1を開催する権利を有している。しかし開催者側は、現在の契約条件では費用を負担し続けることができないと繰り返し表明してきた。
契約では、開催権料は初年度が1200万ポンド(約17億5300万円)となっている。しかし1年ごとに5%ずつ増額される条件のため、契約最終年には年間2,600万ポンド(約37億9900万円)に達することになる。
イギリスGPはF1シーズン全体で最も集客力の高いグランプリであり、昨シーズンの2016年には13万9000人が足を運んでいる。しかし、政府による公的な援助がないため、シルバーストンは開催に伴う各種のコストをまかなうことができずにいるのだ。
(シルバーストンのオーナーである)ブリティッシュ・レーシング・ドライバーズ・クラブ(BRDC)は、解決策が見つからないかぎり、解約条項を使用して撤退すると表明。その場合には2019年が最後の開催となるが、BRDCは7月15日の今季イギリスGPまでにその決定を下す必要がある。
BRDCのディレクターであるフィリップ・ウォーカーは今週、英The Mail on Sundayの取材に対して「解除条項を発動せざるを得なくなる可能性が非常に高い」と語った。
ウォーカーはこれまで、F1の新オーナーであるリバティ・メディアと現行契約の条件改訂について話し合いを重ねてきた。リバティ・メディアはBRDCに同情的ではあるものの、他のF1開催者に対して危険な前例となりかねないため、契約改訂は行わないとしている。
BRDCの上級幹部は同紙に対し、匿名を条件に以下のように語った。
「リバティ・メディアが悪いわけではない。彼らは我々に手を差し伸べてくれているが、決断までの時間が短すぎる。リバティにとっては時期尚早なのだ」
「彼らは、年間カレンダーのうちどのレースを残すべく調整したらいいのかまだわかっていない。たとえば、チェイス(・キャリー/F1の新CEO)はまだシルバーストンでのグランプリを見たことがない」
BRDCは今年のF1を華々しいショーにしたいと考えている。開催期間を4日間に伸ばしてさまざまな要素を詰め込み、収入増にもつなげるつもりだ。長い週末をとおして行うファンサポートをリバティ関係者に見せ、イギリスGPが競技全体にとって重要なレースであることを伝えたいというのが彼らの願いだ。
3度のF1チャンピオンであり、BRDC会員でもあるルイス・ハミルトンは今週、イギリスGPを残すべきだとする呼びかけに加わった。シルバーストンの開催が危ぶまれている現状について、ハミルトンは以下のように述べている。
「何らかのかたちでイギリスで(F1が)開催されるべきだ。これはシーズンでもっとも重要なレースなんだ。美しい田園地方のなかで行われ、イギリスのファンからのたくさんのサポートもある。人々がぜひ見に行きたいと思う素晴らしいイベントだ」
「イギリスにおけるレースの伝統の重要な要素だし、大勢の観客に見てもらえる良い機会なんだ」
もしシルバーストンが現行契約の解約条項を期限内に正式発動させた場合でも、レース開催は続けられる可能性がある。BRDCは2020年からのレース開催に関する、新たな契約の交渉を始めることができるのだ。
「より長い目で物事を見て、将来の計画を立てるために彼ら(リバティ・メディア)と、改めて話し合うつもりだ」と匿名のBRDC幹部は語った。
現在イギリス国内でシルバーストンに代わってグランプリを開催できるサーキットは存在しない。だがロンドンの公道での開催については、絶えず噂されている。