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欅坂46・平手友梨奈&長濱ねる、“噛み合わない会話”は何を意味する? 『残酷な観客達』終盤へ

2017年07月06日 13:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 第3話以降は各メンバーにフォーカスを当て、それぞれの過去にまつわる物語をプロットに重ねてきた『残酷な観客達』だが、今週放送された第8話では再び主人公である出席番号17番・葉山ゆずき(平手友梨奈)と、14番・永峰みこ(長濱ねる)を中心に物語が展開された。


参考:欅坂46・佐藤詩織 × 渡辺梨加の名コンビ再び “恋する中学生”をどう演じた?


 前々回の大縄跳びしかり、これまでのミッションの数々で不穏な動きを見せる永峰と、徐々に何かに気付き始めている葉山。中学時代の二人の楽しげな会話と、高校に入って変わってしまった二人の関係を掘り下げることが、解決への糸口になるのかと思わせながら、結果的に謎はますます増えていくばかりだ。


 4年前のバスの車内での一幕。“ふりかけ”の食べ方を語りかける永峰の姿は、葉山の主観的に描かれるため、永峰ひとりがとても不穏な雰囲気を漂わせる。しかし、それに対する葉山の応答も、どこか噛み合っていないことが気にかかる。もしかしたら、このドラマの主軸であるSNS社会への風刺は、“いいね!”に対する依存や、誰かの行為に便乗して生まれる誤った連帯意識以前に、“噛み合わない会話”にあるということなのだろうか。


 そのあとに登場するいくつかの回想は、それぞれが葉山の主観と、永峰の主観とに分けられているように描かれる。積極的に話しかける側と、それに対して微妙な返答で距離感を保とうとする側と、この二人の間で役割が転じていく。これらは「何かの伏線」というよりかは、学校に閉じ込められるようになってから、二人の間に生じはじめたディスコミュニケーションを象徴しているようにも見える。


 ところで、この葉山と永峰の会話の中に、『ウォーキングデッド』のシーズン6の14話に葉山に似たゾンビが出てくるというくだりが登場する。気になったのでその回を観てみたが、線路沿いに停まっている車から出てくるゾンビというのはクーラーボックスを取ろうとして襲いかかってくるあのゾンビのことだろうか。当然のように似ているわけはない。


 さて、前回担任教師の話にしたがって廊下で二手に分かれたわけだが、奇しくもこのプールに辿り着いたのは、これまでフォーカスが当てられてきたメンバーばかり。しかし、第3話の小林由依と第4話の原田葵に代わり、土生瑞穂と小池美波がこの中に混ざる。頻繁にタブレットを覗く仕草が目立ったこの二人は、ドラマチックな過去を抱えたメンバーたちをフォローする役回りということだろうか。さすがに全員のエピソードを描くほど話数が残されていないだけに、こういった形でキャラ立ちさせるわけだ。


 ドラマの中では、シチュエーションに耐えかねてタブレットをプールに投げ込もうとしたり、疲れが出て戦意喪失したりするメンバーたちの物語と、彼女たちに励ましの言葉をかけるオンライン上の観客達の物語の比重がどんどん近付いていく。そこに、突然踊り始めるメンバーたち。彼女たちが踊るのは、『世界には愛しかない』のカップリングに収録されていた「語るなら未来を…」ではないか(そのあとのBGMでも確認できる)。


 全員が過去に執着し、過去を語る場面の後に、突然踊り出す曲が「語るなら未来を…」とは実に洒落ている。個々のネタ披露から全員で協力し合うことを覚えた彼女たちや、オフの世界で繋がりはじめた観客達の存在を描くことで単なる風刺からSNS社会に対する批判を匂わせてきた本作だが、終盤に差し掛かって前向きなメッセージを込めようとしているのだろうか。


■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。