7月1日の海開きにオープン予定だった「相席居酒屋形式」の海の家の営業を、鎌倉市が「風紀が乱れる」ことを理由に取り止めるよう運営会社に申し出る事態が発生した。
ネットでは「判断が拙速だ」「取り止めは厳しすぎる」と意見が割れる中、神奈川県の黒岩祐治知事が7月4日の定例会見で、鎌倉市の考えに違和感を示す一幕があった。
SNSで出店を知った市民から「風紀が乱れる」との反対意見があったと鎌倉市
鎌倉市が営業取り止めを申し出た相席海の家は、初めて会う人と食事の場を共にし、友人や恋人作りのきっかけを提供する「相席形態居酒屋」を運営する都内の企業が出展予定だった。全国に70店舗を展開しているが、海の家の出店は今回が初めてだった。
市は6月30日にサイト上で「家族が安心して楽しめる海水浴場を目指しているが、鎌倉の海水浴場の雰囲気に相応しくないと思われる海の家が建設されている」という旨の見解を発表。相席海の家について「営業形態の変更を申し出たが出店事業者はこれに応じていない」と述べていた。
一方、運営企業サイト上には、本件について触れる記述は一切見当たらない。キャリコネニュースは同社に取材を申し込んだが、「社内で協議中のため、お話できません」との返答だった。
鎌倉市市民活動部観光商工課の担当者は、「営業の取り止めではなく、業態の変更を要望した」と強調する。鎌倉市は、「他人を思いやり、お互いに快適に楽しめる海水浴場」を目指しているが、今回の相席海の家の出店は、それにそぐわないと判断したようだ。
SNSなどで相席海の家の営業を知った市民からも「風紀が乱れる」という反対意見が多く寄せられていたという。担当者によると「5日現在、運営企業とは協議中です」とのことだ。
県知事の発言を受け、鎌倉市担当者は「明言避けたい」
神奈川県の黒岩祐治知事は4日に行った定例会見で、この騒動に言及。鎌倉市の判断については「現場に基づいて適切に判断していると思っている」と、静観する姿勢を示すも、市が懸念する「風紀の乱れ」については、「報道で見ていること以外は知らない」と前置きしつつ、
「知らない男女が向き合って座って飲食するだけで風紀が乱れるというのは、今の時代にふさわしくない表現ではないか」
と疑問を呈する場面もあった。県でも婚活イベントを開き出会いの場を設けているだけに、同市の捉え方に違和感を抱いているようだ。
鎌倉市は知事の発言をどう受け止めているのか。キャリコネニュースが担当者に聞くと、「明言は避けたい」と答えるにとどまっている。
県では、海の家の定義のほか、ステージなどを設け客にダンスさせるなどの「ビーチのクラブ化」の禁止などが書かれたガイドラインを設けているが、「今のところ見直す必要があるという声は挙がっていない」としている。