2017年07月05日 18:23 弁護士ドットコム
【2018年8月28日追記】農業機械メーカー「スガノ農機」の前オーナーと労働組合は2018年6月29日、水戸地裁土浦支部で和解した。和解内容は、(1)互いに、不適切な言動や誹謗中傷ビラの配布などの迷惑行為について謝罪すること、(2)今後、互いに誹謗中傷をしないこと、(3)同社をめぐる一連の紛争に関して、インターネット上に投稿した画像や動画などを削除すること――などだ。 同社によると、前オーナーはすでに経営に一切関わっておらず、2017年12月から新しい経営体制が発足している。同社は、弁護士ドットコムニュースの取材に「新体制のもと、会社の再建に向けて全社員一丸となって取り組みをはじめ、現在、正常な経営状態にある」「今後も農業に役立つ仕事を積み重ねていく」とコメントした。【追記ここまで】
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農業機械メーカー「スガノ農機」(茨城県)の創業家出身の前社長から、日常的にパワハラやセクハラを受けたとして、複数の従業員が近く、損害賠償を求める訴訟を起こすことがわかった。従業員が加入する労働組合「東京管理職ユニオン」が7月5日、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで会見を開いて明らかにした。労働組合側の代理人によると、7月中にも提訴する予定という。
スガノ農機は、今年で創業100年の農業機械メーカーで、創業家4代目の菅野充八氏が2006年に社長に就任した。東京管理職ユニオンによると、菅野氏は10年以上にわたって、従業員に対して、「アホか、ぶっとばすぞ」「お前なんか死ね」といった暴言・暴行などパワハラや、女性従業員へのセクハラを繰り返し、30人以上が退職に追い込まれたという。
菅野氏は今年2月の取締役会で、それまでの不適切な言動を問題視されて、代表取締役社長を解任された。ところが、菅野氏はその後も職場に立ち入ったり、臨時株主総会を開いて取締役就任を主張したり、会社の銀行口座から1億円以上を引き出すなど、「会社を私物化」するような行動をとりつづけているという。
社内の労働組合は3月、東京管理職ユニオンと合併。約160人の従業員のうち、役員を除く従業員151人が労働組合に加入した。これまで5度にわたって、菅野氏のパワハラなどを協議事項とする団体交渉を申し入れたが、菅野氏側は一切応じていない。労働組合側はすでに、菅野氏の取締役解任を求める訴訟を起こしたほか、暴行などで刑事告発している。
労働組合の代理人をつとめる棗一郎弁護士は会見で、「多数の従業員から聞き取りをしたが、これほどパワハラ、セクハラを日常的にやりまくっている社長もめずらしい。最も酷い部類に入る」「従業員が、二度と4代目(菅野氏)には会社に戻ってほしくない、自分たちの業務を指揮してほしくないと思っている。民事上の責任を裁判所に訴えていきたい」とコメントした。
この日の記者会見には、従業員から19人が参加した。そのうち4人が実体験を踏まえながら、パワハラやセクハラの被害を訴えた。
営業職の有隅靖治さんは、菅野氏から「アホか、ぶっとばすぞ」などと罵声を浴びせられた。会見では、そのときの録音データが公開されたが、有隅さんは「当時の怒りや苦しさを思い出した。(社内には)セクハラやパワハラを受けた人間が、かなりたくさんいると思う。だけど、(菅野氏の)支配力や権力で、誰も声を出せなかった」と振り返った。
人事総務部長の綿引公幸さんは、菅野氏が採用時のパワハラ・セクハラも繰り返していたと説明した。入社辞退者に理由を聞くと、「(菅野氏から)『うんこやろう』『お前なんか生きる価値がない』と言われた。こんな社長のもとで働けない」と返ってきたという。綿引さんは「(菅野氏は)未来ある学生の夢をどれだけ打ち砕いてきたか・・・。絶対に戻ってきてほしくない」と語気を強めた。
人事担当の梅津良美さんは、採用試験で菅野氏による最終面接を受けた。その際、菅野氏から「彼氏はいるのか?」「性交渉したことがあるのか?」と聞かれたという。さらには、同社の制服のカラーが白色であることから、「下着が透けてしまうだろう」「月経のとき大変だろう」と言われたそうだ。
開発担当の安藤慎介さんは、「菅野氏の社長就任以降、毎日パワハラに耐える、あるいはパワハラから逃げる日々だった」と打ち明けた。ほかの従業員の前で、「お前なんかいらない」「こんな親に育てられる子どもはかわいそうだ。ろくな人間にならない」などと、安藤さん本人だけの人格否定だけでなく、家族のことも罵られたことがあるという。
(弁護士ドットコムニュース)