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indigo la Endはより有機的な“音楽集団”へ 新曲も披露した『Play Back End Roll』を観て

2017年07月05日 17:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 indigo la Endが、6月23日に東京・EX THEATER ROPPONGIにてワンマンライブ『Play Back End Roll』を開催した。


 彼らがワンマンライブを行うのは昨年9月の新木場STUDIO COAST公演以来、約9カ月ぶりとなる。7月12日にはアルバム『Crying End Roll』の発売を控えており、このライブではその中から新曲「見せかけのラブソング」「プレイバック」「想いきり」「鐘泣く命」を含む、全20曲が演奏された。


 1曲目は『悲しくなる前に』のカップリング曲「渇き」。長田カーティス(Gt)のスリリングなギターフレーズと、後鳥亮介(Ba)と佐藤栄太郎(Dr)による複雑なビートが絡み合う。「悲しくなる前に」でも、後鳥&佐藤が刻む変則的なリズムが、歌をより躍動的なものへと変化させていた。その後は、アグレッシブな後藤のドラムソロを挟み「ハートの大きさに」へ。川谷絵音(Vo・Gt)の歌とギターの音色を中心にしながらも、リズム隊の巧みさが故に、オリジナルかつユニークな楽曲を聴かせるindigo la Endの真骨頂を味わうことのできる幕開けだった。


 最初のMCでは、indigo la Endとしては久方ぶりのライブであることに触れながら、川谷が、後鳥→長田→佐藤の順に話しかけていく。川谷の自由気ままなMCによって会場はゆるいムードへと染まり、しばらくの休止期間を経ても、メンバーの関係性やその雰囲気は変わらないことはファンを安心させたことだろう。


 MCを挟み、「ココロネ」では音数の少ないアンサンブルで心地よいグルーヴを練りだしていく。ニューアルバム『Crying End Roll』に収録される「見せかけのラブソング」では、ササミオのコーラスと爽やかな鍵盤の音色が映える。川谷も地声とファルセットを使い分けることで、ロマンチックな曲の雰囲気を盛り立てていた。また、「夏夜のマジック」では、川谷はギターをおいてハンドマイクでステージを練り歩きながら歌唱。メロウなシティポップス調のこの曲では、川谷の豊かな歌心も垣間見えた。


 ライブ中盤は、新曲「プレイバック」からスタート。続けて披露した「実験前」は、この日のセットリストの中ではひときわノイジーな楽曲だ。佐藤の重たいキック、後鳥の暴力的なベースライン、そして川谷&長田のシャープなカッティングと、それぞれのプレイヤーとしての魅力が光る一幕だった。さらに初期の楽曲である「彼女の相談」を挟んで演奏された「インディゴラブストーリー」では、川谷と長田が向き合ってギターを弾きあう場面もあった。


 後半ではミドルナンバーを中心にライブが進んでいった。「雫に恋して」「藍色好きさ」、そして新曲「想いきり」では、冒頭や間奏の女性陣のコーラスと芯のあるパワフルなドラムが相まって、楽曲に疾走感をもたらす。本編ラストはバラード「心ふたつ」だ。それまではクールな佇まいで一曲一曲に集中していたメンバーが、6分近くあるこの曲では、感情を爆発させるようなエモーショナルなパフォーマンスを見せた。


 アンコールは、アルバム収録曲でもあり、FOD(フジテレビオンデマンド)で配信中のドラマ『ぼくは麻理のなか』の主題歌でもある「鐘泣く命」からスタート。息つく間もないほどのめくるめく展開で、高揚感と切なさを高まらせていった。そしてこの日のライブを締めくくったのは「渚にて幻 (long ver.)」だ。藍色の仄暗い照明に照らされながら、轟音でドープな音像を作り出す。幻想的なムードの中で深い余韻を残したまま、6人はステージを後にした。


 この日のライブを見て感じたのは、サポートメンバーも含めた今のindigo la Endは、6人それぞれが卓越したスキルとクリエイティビティで互いを刺激しあい、バンドの中に新鮮な風が吹き続けることで、よい循環が生まれている、ということだ。ササミオとえつこという二人の女性コーラスが活かされ、川谷もまた、ファルセットで歌う楽曲も多くなったように思う。それはひとつの楽器が増えたことと同じくらいに、楽曲に豊かな広がりをもたらしている。そのステージングからは、バンドという枠もこえ、川谷を中心とした“音楽集団”としての存在感を発揮しているようにも見えた。


 『藍色ミュージック』以来、約1年ぶりのアルバムとなる『Crying End Roll』。川谷はこの日のライブのMCで「今後のindigo la Endの広がりを想像できる作品」「『Crying End Roll』だけで最高傑作とは言えなくて、次の作品、その次の作品につながる大事な作品になっています」と話した。ファンクやR&Bなど、ブラックミュージックの要素も感じられた『藍色ミュージック』を経て、indigo la Endはこれからどこへ向かおうとしているのだろうか。新作の全貌、そしてこのバンドの今後の可能性への期待を高まらせてくれるライブであった。(取材・文=若田悠希)