日本商工会議所は7月3日、全国の中小企業を対象に行った「人手不足等への対応に関する調査」の結果を発表した。約6割の企業が「人員が不足している」と回答した。
調査は今年3月24日~4月28日の間、全国の中小企業4072社を対象に実施。うち2776社から回答を得た。
「仕事に慣れた頃、辞めてしまう社員が多い」(製造業)
人員の過不足状況について聞くと、60.6%の企業が「不足している」と回答。「過不足はない」(35.8%)が続いた。
「不足している」と回答した企業を業種別で見ると、「宿泊・飲食業」(83.8%)、「運輸業」(74.1%)が上位についている。「介護・看護」(70.0%)は不足感が高いものの、前年比では若干和らいでいる。
反対に「金融・保険・不動産業」(50.0%)、「製造業」(55.3%)ではまだ人手不足がそこまで深刻ではない。従業員規模別では、「101人」を超える企業で「不足している」の回答率が7割を上回る。
求める人材には、「即戦力となる中堅層、専門家」(62.0%)、「一定の経験を有した若手社員(第二新卒等)」(60.3%)の回答率が高い。新規学卒者では、「大学卒、院卒」(37.9%)、「高卒」(40.3%)と高卒者の需要が高い。
人員が充足できない理由には、「募集をしても応募が無かった」(63.4%)、「自社が求めてた人材ではなかった」(48.0%)が挙がる。中には「内定を出し、入社したものの、定着しなかった」(27.5%)という回答もある。企業は募集だけでなく、従業員の定着についての課題を抱えている。
人員不足が企業経営に与える影響については、「影響が出ている」は24.0%と、4社に1社がすでに人手不足の影響を受けていることがわかった。
企業からの自由回答には、以下のコメントが寄せられている。
「仕事に慣れた頃、辞めてしまう社員が多い」(青森県 製造業)
「募集しても全然応募がなく、費用のみが嵩んでいる」(神奈川県 卸売・小売業)
約4割が「時間外労働の上限規制は影響あり」と回答
外国人材受け入れのニーズを聞くと、「ある(既に雇用している)」は16.8%にとどまるが、「ある(今後雇用する予定)」(6.3%)「検討中」(18.6%)を含めると約4割となった。
外国人材のニーズが「ない」(56.8%)と答えた企業は理由として、「日本人を求人したいため」(46.3%)、「言語等コミュニケーションに懸念があるため」(45.1%)などを挙げている。
時間外労働の上限規制が与える影響について聞くと、「影響は無い」(49.5%)が約半数を占める。一方で、「影響が極めて大きい」(6.8%)、「影響が有る」(36.2%)と、合わせて43.0%の企業が「影響あり」と回答している点も見逃せない。
長時間労働是正に向けて、国に支援してほしいことを聞くと、「人手不足の解消」(52.3%)がトップ。「長時間労働を生みかねない民間の商慣習・取引条件の是正」(38.9%)を引き離している。
企業からは、
「労働側のみならず、企業側にも配慮したバランスのとれた規制が必要」(長野県 建設業)
「業種の特殊性を考慮した規制を取り入れてほしい」(静岡県 運輸業)
などの要望が寄せられている。