厚生労働省は6月30日、「2016年版 働く女性の実情」を発表した。それによると、女性の就業率が結婚・出産時に下がるM字カーブで、落ち込みが最も大きいのが神奈川県であることがわかった。また、管理職の女性の割合が最も高いのが高知県だった。
厚労省は「地域ごとの働くことへ意識が大きく影響」と分析
女性は結婚や出産に伴い離職することが多いため、働く人の割合が一時的に下がる。そのため、年齢階級別に労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)を折れ線グラフで表すと、真ん中部分が窪んだ形を取るため、「M字カーブ」と呼ばれる。出産後も働き続けられる環境が整う欧米には見られない、日本独特の傾向だ。
M字カーブを全国平均で見ると、左のピークが「25~29 歳」(労働力率81.4%)、右のピークが「45~49 歳」(同77.9%)で、「35~39 歳」(同72.7%)を底とするM字型カーブを描いているが、曲線の形は都道府県で異なる。左右のピークと底の値の差を表す「M字の窪み」を比較すると、北陸地方は浅く、近畿地方は深くなっている。北陸地方の女性ほど結婚出産などライフスタイルの変化に関わらず、就労を継続していることを意味する。
M字カーブの底の値が全国で最低なのが神奈川県(66.8%)だ。同県女性の特徴として「女性の人口に占める正規の職員・従業員の割合が低い」点が挙げられる。正規の割合は「25歳~29歳」では49.6%だが、「35歳~39歳」には29.6%まで落ちる。出産などで一度離職すると、再就職は困難で、働き口があってもバイト、という現状が見てとれる。
こうした地域差について、厚生労働省の雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課の担当者はキャリコネニュースの取材に対し、次のように語った。
「地域ごとの働く意識の違いがあります。内閣府の調査で『自分の家庭の理想は夫が外で働き、妻が家を守ることだ』という質問への『そう思う・ややそう思う』の回答率を見ると、北陸地方の県は低い傾向があります。また『子どもができてからもずっと職業を持ちたい』と思う女性の割合も北陸地方の県ほど高いことがわかっています」
女性の労働参加や仕事の継続には、性別役割分業の意識などが大きく影響しているようだ。
女性管理職の割合は全国平均8.2% 政府の目標「2020年に30%」からは遠い
また同省の「賃金構造基本統計調査」(2015年)では、100 人以上の企業を対象に、 都道府県別の課長級以上(部長級、課長級)に占める女性の割合を算出している。それによると、女性管理職の割合は東北地方や九州地方で高く、関東地方と東海地方で低い傾向がある。2013年?15年の平均を見ると、高知県が22.7%と最も高く、宮崎県(16.3%)、鹿児島県(15.4%)が続いた。反対に最低が愛知県で4.1%だった。
高知県の女性の管理職の割合が高い理由について、前出の厚生労働省の担当者は、
「同県ではもともと働く人に占める女性の割合が高い『医療や福祉』といった産業構造がある点が挙げられます」
と話した。
2015年の課長級以上に占める女性の割合を産業別に見ると、「医療、福祉」が44.6%でトップだった。反対に「金融業、保険業」(9.1%)、「製造業」(3.3%)とかなり低く、産業により大きな差がある。
ただ、課長級以上に占める女性の割合の全国平均は8.2%であり、政府が掲げる「2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%」という目標には遠く及ばない現状が浮き彫りになっている。