ドライバー2名が病院搬送となるビッグクラッシュが発生したDTMドイツ・ツーリングカー選手権第7~8戦ノリスリンクの会場で、今年3月末からシリーズを統括するITRの新代表に就任したゲルハルト・ベルガーがメディアの質問に応じ、「最大の焦点は現在のシリーズにあり、FIAの新しい世界選手権にはない」とコメントした。
これまで長きにわたり“DTMの父”として選手権プロモーターを務めてきたハンス-ベルナー・アウフレヒトに代わり、新代表に就任したベルガー。元F1ドライバーであると同時に、引退後に歴任したFIAシングルシーター・コミッション代表や、BMWのスポーティングディレクター、自らが創設したチームの代表やオーナー職など、モータースポーツにまつわるあらゆる肩書きをこなしてきた。
ベルガー自身は「それでも、この新しい仕事に対しては学ぶことばかりだ」と、ITR代表という職務の新鮮さを強調する。
「本当に知らないことばかりだ。例えばTVの放映権を扱うライツ管理の分野はまったく新しい挑戦で、正直に言って担当者がどのように機能し、問題に対してどのように働いているかを学ぶのはとても楽しいね!」
2017年シーズン開幕前に新たな仕事に就任したベルガーだが、今季はシャシーなど一部の技術パートを共通化している日本のスーパーGTと同様、空力性能の25%削減などDTMにも新たな技術規制が導入されたシーズンでもある。
その他、よりソフトなハンコック製のワンメイクタイヤ導入や、グリッドやピットでのインタビュー機会の強化など、ファンへの発信力とレースのショー的要素の強化に目が向けられている。これについてベルガーは「私が着任以前のアイデアが多数含まれている」としながらも、「ポジティブな要素」だと感じている。
「DTMには明確なDNAがあるし、これを活用しながら改善を図りたい。だからこそ、変更は慎重かつ論理的に行う必要がある」
「これは良い選手権で、良いプロモーションのプラットフォームだ。もし何らかの変更がなされれば、(参戦するマニュファクチャラーは)どのような影響が出るかを慎重に見極めようとするだろう」
WEC世界耐久選手権や、WRC世界ラリー選手権への影響を見ても明白なとおり、ベルガーの代表就任は“ディーゼル・ゲート”の影響が世界のモータースポーツ活動にも及ぶ、難しい時期とも重なった。これについても「彼らがコスト削減圧力を受け、それを正当化できないことを理由に去ることはない」と持論を述べた。
「もちろん、コストが重要事項であることを知っているし、それを意図したプラットフォームを構築している。大事なことはショーが正しく行われ、ファンがサーキットに来たいと思い、TVで観戦したくなる面白さを提供することだ。これらすべての成分をバランスできれば、DTMはメーカーが欲するプラットフォームであり続ける」
「我々の目標はプラットフォームを強化し、良いレースを可能にし、ファンが来るようにするための規則を持つこと。この3つの点でうまくいくなら、メーカーは来るはずだし、その観点からも──私自身は心から愛しているけれど──(ニュルブルクリンク北コースの)ノルドシュライフェでのレースは前向きになれない。ファンがマシンを見る機会が激減する、という点からね。これはWTCC(世界ツーリングカー選手権)の例を見るまでもなく、24年前の我々も直面した問題なんだ」
そうした視座からも、現在FIAのワーキンググループが2019年の発足を目指しているDTM、スーパーGT(GT500クラス)の車両規則“クラス1”を用いた世界選手権構想に対しても「我々の焦点はDTMにある」と明言する。
「今、我々は我々自身の選手権と規制に焦点を当てている。FIAが何かをするつもりであることはもちろん知っているが、我々の焦点は競争を強化することだ。将来的に私たちにとって興味のある商業的かつスポーツ的な機会があれば考慮すべきだが、今、私たちの焦点はDTMにこそある」
「私のこれまでの経験を使って、ITRのメンバー、そしてマニュファクチャラーとともにDTMを活性化するアイデアを試したい。この先3年間で何が起こるか、本当に楽しみだね」