MINIのMINIによるMINI乗りのためのレースがキックオフ!
ミニ・チャレンジ・ジャパンがついにエキシビションレースを開催
BMW MINIのJCWをベースとするレーシングカーによるワンメイクレース『ミニ・チャレンジ・ジャパン(MINI CHALLENGE JAPAN)』のキックオフとなるエキシビションレースが2017年6月25日、富士スピードウェイのフルコースで開催された。
ミニ・チャレンジは、2002年に英国で始まったBMWミニのワンメイクレースで、統一の専用車両(2015年度からは車両がF型、いわゆる現行に替わっている)によって競われているレースシリーズだ。20分のスプリント戦で、英国では現在40台以上が参戦する人気シリーズとなっている。
日本では、ミニ専門のカスタマイズパーツブランドであるジオミックが『ジオミックモータースポーツ』を立ち上げ、プロモーターとなる。イギリス本国と同一のマシンを用いて、レースのみならず本国同様のホスピタリティを提供する計画だ。
マシンは、ミニ・チャレンジUKによって制作されたレーシングカーである『ミニF56 JCWチャレンジカー』。
エンジンは専用ECUが採用されているが基本的にはノーマル。トランスミッションは専用の6速シーケンシャルがおごられ、大型インタークラーに専用インテーク、専用エキゾースト(キャタライザー付き)が与えられている。
サスはナイトロン製の3ウェイダンパー、メーターはコスワース製のロガー付きダッシュモニターに置き換わるなど、標準車との“違い”を見せつける。
さらにボディは専用のワイド仕様になっており、車重はなんと1070kg。国内で販売されているJCWが1250kgであることを考えると、いかに軽いかがわかる。
ブレーキは、リアは純正であるが、フロントはアルコン製4ピストンキャリパー+大径ディスクで、タイヤはピレリのスリックタイヤがワンメイクとして選択された。
マシンのポテンシャルを、この日ステアリングを握ったドライバーはどう見たのか? ジャーナリストにして、ニュルブルクリンク24時間でクラス優勝の実績を持つ佐藤久実選手は「市販車ベースですが、本格的なレーシングカー。ブレーキはロックするし、ギアもタイミングが合わないと入らない。ポジティブな意味でそんな簡単なクルマではない」と評した。
またS耐参戦ドライバーであり、ニューミニの専門誌に携わる後藤比東至選手は「雨の中でも不安なく走れた。シャシーや足がパワーを上回っており、安心して走れるクルマ」と話す。
ミニ・チャレンジ・ジャパンのテストドライバーであり、マネージングディレクターも務める壺林貴也選手は「F56がベースなんですが、完全にレーシングカーに仕立てられています。シーケンシャルミッションでブレーキにはABSもない。ちょっと前のGT300の小さい版ですね。今後ハコのレースのデビューを目指す若手や、年齢を重ね、速いクルマはキツイというベテランにも最適なクルマです」と語る。
主催者発表によると、富士スピードウェイでの最高速は約220km/hで、ラップタイムは1分54秒、1分56秒(テストラン時)。
この日は、予選時は雨が降っておりレインタイヤを履いたため2分6秒台が最速だったが、スリックを履いた決勝では1分57秒台が計測されていた。走行を終えても、全車ともに車両の問題が発生した形跡もなかった。
このチャレンジカーは輸入総代理店でもあるジオミックモータースポーツより販売され、税抜き価格890万円。確かに一般の市販車よりは価格は高いが、シーケンシャルミッションだけでも数百万円で販売されている商品だということで
「内容と仕上がりを見るとバーゲンプライスとも言える」との声も聞かれた。
エキシビションレースの模様も見ていこう。ウエットコンディションのなか、8時から20分間行われた予選でトップタイムをマークしたのは壺林選手。2番手には佐藤久実選手がつけ、3番手に後藤選手、4番手が頼選手。
9周で雌雄を決する決勝レースは11時45分にスタート。CCJチャレンジカップ・ジャパンとの混走であり、スターティンググリッドは前方にフェラーリ、ポルシェが、ミニ・チャレンジ参加車両4台は後方グリッドからのスタートとなった。
そして、スタート。1コーナーには4台が固まって飛び込む迫力満点の光景が見られた。次第に8号車がジリジリと遅れはじめるが、残る3台はレース中盤まで接近戦を繰り広げる。
周回を重ねるごとに経験に勝る1号車壺林選手が後続との差を広げ、そのままフィニッシュ。ミニ・チャレンジ・ジャパン初のウィナーとなった。
改めて触れておくが、今回のレースはあくまでエキシビション。ナンバー32号車はジオミックのデモカーであり、1号車、2号車の2台はミニチャレンジジャパンの広報車。
8号車は香港を拠点とするGREAT DRIVE GROUPのクルマで、ステアリングを握ったのは同グループCEOでありアマチュアレーサーの頼志豪(レオ・ライ)選手。32号車に乗った佐藤選手と2号車に乗った後藤選手は今回が初めてのチャレンジカーだったという。
いくらイコールコンディションで競い合える環境が整っているといっても、テストドライバーとしてすでに相当の距離を走り込んでいる壺林選手が有利なのは当然だ。
プロモーターであるジオミックモータースポーツ代表の森下氏は「10年くらい前からこのレースのことを知っていて、いつか日本でこのレースを開催したいと考えていました。それがようやく形になりました」とコメント。
また「モータースポーツとしてのレースはもちろんのこと、ホスピタリティの雰囲気だったり、大人の社交場として楽しんでもらう環境にしたい」と続けた。
またミニ・チャレンジUKの代表であるアントニー・ウイリアムス氏も登壇。「ミニチャレンジの日本版は、イギリスでのレース方法やホスピタリティを尊重していて、今後どんどん発展していくと確信しています。その発展のための手伝いをしていきたいと思っています」と語った。
また、将来的には日本留まらずアジア、世界にまでミニ・チャレンジを広げていきたいと森下氏は言う。
「日本だけではなく、アジアにまで目を向けたいですね。アジアの人が日本に参戦する、日本の方がアジアのシリーズに参戦する、ミニチャレンジUKも含めて、世界にまで広げていきたい、ワールドチャンピオンシップを目標にしたい。それが僕の夢です」
そんな“世界”へ向けての第一歩が踏み出されたミニ・チャレンジ・ジャパン。第2戦は8月20日、第3戦は10月か12月に、同じく富士スピードウェイを舞台にエキシビションレースが開催される予定だ。
参加車両も現時点ではまだ4台だが、8月上旬には3台、11月上旬にはさらに3台が日本上陸を果たす予定だという。
つまり、第3戦には10台のマシンがバトルを繰り広げる可能性がある。本格的な“ジャパンシリーズ”のスタートは2018年(全5戦を予定)。
富士スピードウェイのほか、ツインリンクもてぎ、筑波サーキット、袖ケ浦フォレストレースウェイ、鈴鹿サーキットという国内主要サーキットでの開催が予定されている。