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生まれたてゆえの“繊細さ”。秘めたポテンシャルは未知数/GT300マシンフォーカス:トヨタ・マークX MC

2017年07月04日 12:22  AUTOSPORT web

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埼玉トヨペットGreen BraveマークX MC
2017年シーズンは15車種30チームが熾烈なバトルを繰り広げるスーパーGT300クラス。数多くある車両から1台をピックアップし、ドライバーや関係者にマシンの魅力を聞いていく。

 今回は2017年から新たに登場したマザーシャシーの1台、トヨタ・マークX MCにフォーカスする。

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 トヨタ86 MC、ロータス・エヴォーラMCに続き、3車種目のマザーシャシー車両として登場したのがトヨタ・マークX MC。埼玉トヨペットのディーラーチームである埼玉トヨペットGreen Braveが、自社の専売車種であるマークXをスーパーGTで走らせるべく、マザーシャシーで参戦する道を選択した。

 2017年、実に5年ぶりにスーパーGT復帰を果たした番場琢は、マークX MCが世に出る前、さらに言えばマークX MC誕生が決まる段階からチームとともにプロジェクトを進めてきた。

 その番場は「他のマザーシャシーに乗ったことがないので比較はできないけど、いろいろと聞いた話を総合すると、たとえば同じ86でもセットアップによっては乗りやすかったりピーキーだったり、マザーシャシーと言っても、ひとくくりにはできないゾーンがかなりあるようですね」とマザーシャシーへの印象を語る。

 番場自身、イチからクルマづくりをするのはほとんど初めての経験。当初は同じマザーシャシーの86と同じような考え方でセットアップを進めていたが、86とマークXではボディの大きさも重量配分もまったく異なる。そのため第3戦オートポリスからは、これまでと異なるアプローチで挑むようになったという。

「事前テストぎりぎりにできあがったクルマなので、(各パーツの)建て付けなども、まだまだ詰めたい部分がありますね。今は“抵抗が大きいクルマ”。それは空力も転がり抵抗も、とにかくいろいろな抵抗が大きいですね」

 マシンのキャラクターについて、番場は「繊細な子」と表現。それは「ほんの少し縁石に乗っただけで動きが変わってしまう」ほどだとか。

「通常のGTマシンで言えば誤差と言えるようなレベルでも、クルマ(の挙動)が大きく変わるんです。車高やダンパーのノッチとかも、たとえば4分の1ぐらいのアジャストで(1アジャストしたのと)同じぐらいの違いが出るんです。すごく敏感なマシンですね」

 ただし、繊細なことがマークX MCの特徴ではなく、これもまだマシンが生まれたてとも言える状況にあることが大きいという。マシンが持つ本来のポテンシャルに関しては未知数。現状はスイートスポットを見つけるために手探りを続けている。

「スイートスポットにはまれば、ものすごく速いでしょうから、うまくその付近に持っていければ、まったく印象が違うでしょうね。今のレベルがマークX MCが持つ本来のポテンシャルだとは思っていないです」

■「マークX MCには毎戦、新アイテムが投入される」

 チームスタッフのほとんどが埼玉トヨペットの社員ということもあり、市販車両とレース車両の扱い方の違いに苦労もあるという。

 開幕戦で大きなクラッシュを喫したマシンは、パーツデリバリーの関係で第2戦富士への参戦が危ぶまれたというが、それもスペアパーツが大量にストックされている市販車ではめったにない話だ。

 エンジニアリングの面でも、専門的な知識を学んできたわけではない分、1戦1戦が学習の場。チームにとってはレースを通したディーラースタッフ全体のレベルアップも参戦目標のひとつだ。

 開幕戦は決勝でのクラッシュで始まり、第2戦はトラブルを乗り越えての完走。そして第3戦も予選でマシンにダメージを負ったが、決勝までに修復し2度目の完走を果たしたマークX MC。

 生まれたてのマシンと成長途中のチームとともに番場が目指すのは、周囲とは少し違う目標だ。

「予選のポールポジションとか優勝とか、そういったものはまだ無理だと思います。表彰台はマシンの開発次第な部分も大きく、簡単には行かないと思う。でも、チーム自身がどんなことが起きてもそれを糧にしてレベルアップしているんですね」

「チームの人数に対して参戦しているカテゴリーや台数がすごく多いので、チームは毎週のようにレースに出ていますが、そんななかでもマークX MCに対しては(毎戦)必ず1~2アイテム、新しいタマやテストメニューを投入してくれるんです」

「こういう努力が実って、クルマのポテンシャルも上がれば、平沼さん(平沼貴之選手)と一緒に表彰台に上がるのも、夢ではないと思っています。欲を言えば、周りのクルマがウエイトを積んでくる終盤戦に、いい位置で走れるようにしたいですね」