2017年07月04日 10:23 弁護士ドットコム
自宅近くを自家用車で走行中、助手席に座った主婦のJ子さんは「あっ」と声をあげた。前方左手側から、まっすぐに直進してくる自転車が視界に入ってきたからだ。運転席の夫が「あぶねーな」とつぶやくタイミングで、その自転車とすれ違ったという。
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J子さんは「この道は、歩道が人であふれていて、信号も少ないためか、逆走してくる自転車とはよくすれ違います」と話す。
ネット上にも、このような逆走自転車に苛立つドライバーの声が散見される。逆走自転車は本来、道交法では禁じられてはいないのだろうか。禁じられているとしたら、違反した場合には、どのような罪になるのか。清水卓弁護士に聞いた。
「自転車は道路交通法上、軽車両とされ、歩道と車道の区別のある道路においては、原則として、車道を通行しなければなりません(17条1項)。そして、自転車が道路(歩車道の区別がある道路においては、車道)を通行する場合、原則として、道路の中央から左の部分の左端に寄って通行しなければなりません(17条4項、18条1項)。
なお、自転車は、著しく歩行者の通行を妨げることになる場合を除き、道路の左側部分に設けられた路側帯を通行することもできます(17条の2)」
では、いわゆる「逆走自転車」は違法、といえるのだろうか。
「道路の左側部分(自転車から見て進行方向左側部分)を通行するルールによれば、自動車の前方左手から当該自動車に向かって道路を逆走してくる自転車は、道路の右側部分(道路の右側の路側帯)を通行していることになります。つまり、道交法の通行区分のルール違反となります。
そのため、逆走自転車の運転者には『3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金』が科される可能性があります(119条1項2号の2)」
なお、逆走自転車と車が事故を起こした場合には、自転車側の過失も認められるのだろうか。
「逆走自転車と自動車との対向車同士の事故の場合、自転車は自動車と比べて交通上弱い立場にはあるものの、逆走自転車側に2程度(事故状況によっては自転車側に重過失ありとして、4割程度)の過失割合が認められる可能性があるでしょう」
清水弁護士はこのように指摘した。
(編集部注:過失割合については、「別冊判例タイムズ第38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」452頁【303】を参照)
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
清水 卓(しみず・たく)弁護士
東京の銀座にある法律事務所の代表を務め、『週刊ダイヤモンド(2014年10月11日号)』で「プロ推奨の辣腕弁護士 ベスト50」に選出されるなど近時注目の弁護士。交通事故分野などで活躍中。被害者救済をライフワークとする“被害者の味方”。
事務所名:しみず法律事務所
事務所URL:http://shimizu-lawyer.jp/