GAZOO Racing 86/BRZレースの第4戦が7月1~2日に岡山国際サーキットで行われ、プロフェッショナルシリーズでは蒲生尚弥(トミカネッツ兵庫BS 86B)が初のポールポジションを奪うも、スタートで逆転した佐々木雅弘(小倉クラッチREVO 86 BS)が2勝目をマーク。そして、クラブマンシリーズでは神谷裕幸(N中部ミッドレス スノコ86)が初優勝を飾っている。
まだ梅雨時ということもあって、練習走行が行われた金曜日までは雨が降ったりやんだりを繰り返していたが、クラブマンシリーズの予選が行われた土曜日は、完全にドライコンディションをキープ。
予選は2組に分けられ、1組では菱井將文(CUSCO BS 86)が1分53秒817をマークして手塚祐弥(栃木スバルBS BRZ P.MU)にコンマ5秒の差をつけたものの、2組で神谷が1分53秒763を出して最速タイムを記すことに。
その結果、神谷が86/BRZレースで初のポールポジションを獲得することになった。なお、2組の2番手は蒲生真哉(ネッツ兵庫☆トミカ86R BS)が、3番手は橋本洋平(カーウォッチBS 86 REVO)が獲得。そして、1組の3番手は前回のウイナー、庄司雄磨(OTG AREA 86)が獲得している。
「とにかく路面状態が悪くて、今までで1番ってぐらい。タイム見て『大丈夫かぁ?』と思ったぐらい。気温は高いし、朝まで路面が濡れていた影響なんだろうね。まぁ、年寄りなんで疲れるから1発で行って、組で1番、フロントロウなら問題なし。前回は逃げようと思って失敗したけど、今回は後ろから追いかけて行きます。その方が得意だし」と菱井。
これに対して神谷は「やっとポールポジションが獲れました。練習からずっと調子が良くて、何もなければ行けるという自信さえありました。路面はみんなが言うほと悪いとは思わなくて、ただ曲がらなかった。その状況にうまく合わせることはできました。(菱井とは)僅差ですが、そのまま逃げたいです」と、レースを前にして互いを意識し合い、早くも火花を散らしていた。
一方、プロフェッショナルシリーズの予選は、土曜日まで鈴鹿サーキットでスーパーGTのテストが行われていたことも配慮され、日曜日の早朝に行われた。なかには木曜日まで岡山で練習を行った足で鈴鹿に向かい、スーパーGTのテストの後、ぶっつけ本番に近い形で予選に挑んでいたドライバーもいたほど!
引き続きドライコンディションに恵まれた予選では、例によって1発勝負。開始と同時にアタックをかけて、トップタイムをマークしたのは蒲生(ちなみに、クラブマンシリーズで2組2番手の蒲生真哉は兄)で、1分51秒319をマーク。
これに佐々木が51秒387と超僅差で続き、3番手は自己ベストとなる新田守男(AREA86倉敷)の手中に。そして体制を改め、今シーズンは今回からの出場となる阪口良平(大阪トヨタ86レーシング)が4番手につけることとなった。
「ミスなく完璧に走ることができました。セッティングも練習からずっと決まっているし、すべてしっかりまとめ上げることができています。実はポールポジションは初めてで。いつも2番手ばっかりでしたからね。佐々木選手とは序盤のうちに、ふたりで逃げようと。いろいろ絡んでくると、厄介ですからね。それで最後に勝負しようと。約束は守ってくれる方なので」と蒲生。
一方、佐々木は「悔しい! でもアイツ(蒲生)は天才なんで仕方ない。僕は積み上げて、積み上げてという感じなんだけど、アイツはそうじゃないから……。僕も出し切ったし、セッティングも決まっているから、決勝ではふたりで勝負しようと話しています」と佐々木。同じタイヤのユーザーということもあり、一騎打ちはやむなしという感じだ。
さて、先に行われたクラブマンシリーズの決勝は、スタート直後に上位陣でアクシンデントが発生し、いきなりセーフティカーが入る波乱の幕開けとなった。本格的なバトルの開始は4周目から。
リスタートは菱井が神谷に完全に合わせ、早々と一騎打ちになっていく。後方からしきりとプレッシャーをかけていく菱井ながら、神谷は少しも動じず。だが、「10周目あたりから、さぁ勝負をかけるぞ、と思ったら雨が降ってきて」と菱井。
これが完全に神谷にとって、恵みの雨となった。タイヤの違いによって、有利不利が完全に分かれたからだ。ラスト2周は菱井を完全に振り切る格好で、神谷が嬉しい初優勝!
「やっと勝てました。ずっと後ろにつかれていましたが、僕自身はすごく落ち着いていました。そしたら最後に雨が。クルマをしっかり仕上げてくれた、スタッフのみなさんのおかげです。岡山はヴィッツの頃から走り込んでいるんですが、実は苦手意識の方が強いんです。それでも勝率は良くて……。たぶん我慢して、慎重に行っているのがいいんでしょうね」と神谷。
3位はリスタートからまもなく、リボルバーコーナーで手塚をかわした橋本が獲得。これに続いたのは、練習中のクラッチトラブルの影響で、10番手に甘んじていた小野田貴俊(ネッツ東埼玉ワコーズED 86)。完璧な決勝でのリカバリーで4位を獲得していた。
そのクラブマンシリーズの決勝終盤に降った雨は、その後いったんやんだものの、なんとプロフェッショナルシリーズの決勝を間近に控えた段階で、突如強く降り始める。そのまま降り続けていれば、大混乱も必至だっただろうが、なんとスタートが近づくにつれ、雨足を弱めていき……。最終的には少々路面を濡らす程度で済んでしまう。
ある意味、そのことがドライバーたちを慎重にさせる要因となったかもしれず、スタート直後の混乱は一切起こらなかった。
その一方で、スタート直後にレースは大きく動いた。「僕のスタートも決して悪くなかったんですが、それ以上に佐々木選手のスタートが良かったようです」と蒲生。その言葉どおり、1コーナーに先頭で飛び込んで行ったのは佐々木。そして、このふたりに新田が続いていく。
1周目を終えた段階で、早々とトップグループが形成されることとなったが、そんな状況も2周目には崩れてしまう。佐々木も蒲生も、それぞれ間隔を広げたからだ。対照的に新田に迫っていったのは、予選6番手だった青木孝行(ケーエムエスフェニックス86)。オープニングラップのうちに、ふたつ順位を上げていた勢いは留まらず、5周目のヘアピンで新田のインを刺し、3番手に浮上する。さらに新田には小河諒(神奈川トヨタ☆DTEC 86R)が近づき、6周目に逆転。
その間にもトップ佐々木は安泰だった。蒲生との差をじわりじわりと広げていき、いつしか独走態勢に。そして、開幕戦以来の2勝目をマークすることとなった。
「スタートが決まったのが1番! 狙っていたというか、少々まぐれ気味で(笑)。それに蒲生もしっかり見てくれて、1台分空けてくれました。すごくセーフティなバトルで、2コーナーまでの短い間でしたけど、すごく楽しい駆け引きができました。ただ、蒲生とふたりで逃げようと言っていたのに、トップ立って先行っちゃって、約束破っちゃってごめんなさい」と佐々木。
一方、3位でゴールしたのは青木だったが、スタート3分前のボード提示後に、メカニックがタイヤのエア圧調整を行ってしまい、30秒加算のペナルティで16位に降着。ノーポイントに終わったことから、佐々木にランキングのトップも明け渡してしまう。
そして繰り上がって3位を獲得したのは小河で、4位は新田。予選9番手だった平中克幸(GY RACING 86)が5位を獲得した。