FIAは、F1アゼルバイジャンGP決勝でのセバスチャン・ベッテルの行為に対し、さらなるペナルティを科すかどうかを検討することを決めた。ベッテルが30歳の誕生日を迎える7月3日に審議が行われる予定だ。
セーフティカー先導時、リスタートを前に、先頭を走るルイス・ハミルトンにベッテルが追突、ブレーキテストをされたと考えたベッテルは憤り、ハミルトンの隣に並びかけて、手を挙げて怒りを示し、ハミルトンにヒットした。
この行為によって10秒のストップ&ゴー・ペナルティおよびペナルティポイント3が科されたが、ベッテルは謝罪はしておらず、FIAは、さらなるペナルティを科す必要があるかどうかを判断するため、詳しい調査を行うことを決めた。
FIAがさらなるアクションが必要と結論づけた場合は、この件はFIA国際裁判所に送られ、法廷で32人の裁判員が判断を下す。
ペナルティを科すことが決定した場合、ベッテルにはどのような種類の罰が下される可能性があるのだろうか。以下に、ベッテルが直面するかもしれない10通りのケースを挙げる。
1)罰金
罰金で済ます場合、タイトル争いへの影響はゼロだ。しかし現役ドライバー中、トップクラスのサラリーを得ているドライバーに罰金というのは非常に軽い罰であり、納得しない人々が多いかもしれない。
2)グリッド降格ペナルティ
裁定が下った次のグランプリで3グリッド降格、あるいは最後尾への降格ペナルティを受けるかもしれない。ベッテルにとって多少は痛手になるが、今年のフェラーリの競争力を考えれば、最悪の事態とはいえない。
3)タイム加算ペナルティ
今回のベッテルの場合は、タイムペナルティを受ける可能性は低いだろう。すでに10秒のストップ&ゴーを受けているので、二重に同種のペナルティが科されることになってしまうからだ。
4)失格
アゼルバイジャンGPの結果を取り消される可能性がある。決勝中、レーススチュワードはそれも検討したものの、タイトル争いに影響を及ぼすことを恐れて、そこまでは踏み込まなかったという。FIAがベッテルを失格にすることを決めるなら、ベッテルは12点を失うことになる。
5)ポイント剥奪
FIA国際裁判所は、ベッテルのポイントの一部を剥奪することに決めるかもしれない。その場合、アゼルバイジャン1戦失格で失うよりも多くのポイントが剥奪される可能性もある。
6)1戦あるいは何戦かの出場停止
裁判官には、1戦から数戦にわたり出場停止にするという選択肢もある。一番最近、出場停止のペナルティを受けたのは、ロマン・グロージャンだ。2012年ベルギーGPでのオープニングラップで激しい多重クラッシュを引き起こしたことで、次戦の欠場を強いられた。
7)選手権からの除外
最も過激なペナルティが、2017年選手権からの除外だろう。万が一、これが実行されれば、タイトルはハミルトンのものになる確率が高そうだ。
選手権ランキング除外というペナルティを受けた例としては、1997年のミハエル・シューマッハーが挙げられる。最終戦、タイトル争いのライバル、ジャック・ビルヌーブとの接触が故意であったと判断され、シューマッハーはその責任を問われた。しかしそれはタイトルがビルヌーブのものになった後の裁定であり、今回のベッテルにこのような罰が下されるとは考えづらい。
8)執行猶予付きの判決
今のところ、ベッテルは自分の非を認めるような発言はしていないが、今後、FIAに対して後悔の念を示すなら、執行猶予付きのペナルティで済むかもしれない。
9)FIA交通安全運動への奉仕活動
FIA会長ジャン・トッドは、交通安全運動に非常に力を入れている。ベッテルはこういったキャンペーンへの奉仕活動を要求されるかもしれない。1997年のシューマッハーは、ランキング剥奪に加えて、FIAの交通安全キャンペーンへの参加も命じられた。
10)追加ペナルティなし
FIAがベッテルにさらなる制裁を科す必要はないと判断することも考えられる。ただ、ベッテルは去年メキシコGPでF1レースディレクターのチャーリー・ホワイティングに対して暴言を吐いており、それが今回の件にマイナスに働くかもしれない。当時、トッドは暴言事件を国際裁判所に持ち込むことを検討していたが、ベッテルの謝罪を受けて、思いとどまった。
FIAは再調査の結果をオーストリアGP前に発表する予定であると述べている。なお、ベッテルはすでにペナルティポイントの合計が9ポイントにまで累積しており、あと3点で1戦出場停止の処分を受けるような状況だ。ペナルティポイントはそれぞれ12カ月で取り消されることになっているため、オーストリアGP後の月曜には2016年イギリスGPで科せられた2点が抹消される。