2017年06月30日 10:33 弁護士ドットコム
任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch」(ニンテンドースイッチ)の売れ行きが好調なことによる在庫不足を受け、同社は6月22日、「お客様並びに販売店の皆様にはご迷惑をおかけし、心よりお詫び申し上げます」とするコメントを発表した。
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ニンテンドースイッチは、3月3日に発売が始まり、人気シリーズの「ゼルダの伝説」の新作が高評価なこともあり、品薄状態が続いている。任天堂の公式ストアやアマゾンなどでもなかなか手に入れることが困難な状況で、追加入荷分が発売されても、すぐに売り切れてしまう。
その一方で、アマゾンのマーケットプレイスなどでは、新品未開封のニンテンドースイッチが定価29980円よりも1万円以上高く売られており、品薄状態について、「転売屋の買い占めが原因のひとつ」など、転売に対する批判が高まっている。
「転売屋には税金うーんと重ねてあげてください!」「税務署も、転売ヤーの税金調べろよ」なども声もあるが、転売をしている個人や業者の税金はどうなっているのか。蝦名和広税理士に聞いた。
昨今のリサイクル意識の高まりや、オークションサイトをはじめとした取引環境が充実していることもあり、不要になった家電などを売却する人は多いのではないでしょうか。私もリサイクルショップに冷蔵庫を持ち込んだことがあります。
まず、ごく一般的なこうした行為は課税の対象になりません。それは所得税法9条1項9号により、生活用動産(家具、什器(じゅう器)、衣服など生活に通常必要な商品)の譲渡による所得は非課税にすると定められているためです。
ただ、所得税法施行令25条により、1個の価格が30万円以上の生活用動産の譲渡については非課税としないと定められています。例えば高級腕時計ロレックスの稀少モデルなどを購入価格以上の価格で売却するケースでは、課税されることになりますので申告が必要となります。
ただ、こうした購入価格以上の価格、いわゆるプレミア価格で売却できる物は限られます。車の売却(下取り)も30万円以上の生活用動産(不動産以外の商品)に該当しますが、通常であれば、購入価格の方が圧倒的に高いはずですので課税されることはまずありません。
では、本題の「転売ヤー」についてですが、買い占めとなると、例えそれが生活家電であろうと自己の生活用動産の譲渡ではないため、所得税法9条の規定は適用されません。そのため所得税法上の雑所得か、その転売活動が営利を目的として反復継続して行われていれば事業所得として課税されることになりますので、申告が必要となります。
また、転売で生計を立てるほどの事業所得者になると年間の売上が1000万円を超えることも考えられます。売上高が1000万円を超えると翌々年は消費税の納税義務も課されます。
話をまとめると、個人が不用品をリサイクルショップに売りに行く程度では課税問題は生じませんが、高価な物の場合には注意しなければいけないでしょう。また、「転売ヤー」の場合は非課税規定の適用が無いため課税が生じ、申告が必要になることを覚えておきましょう。
【取材協力税理士】
蝦名 和広(えびな・かずひろ)税理士
特定社会保険労務士・海事代理士・行政書士。北海学園大学経済学部卒業。札幌市西区で開業、税務、労務、新設法人支援まで、幅広くクライアントをサポート。趣味はクレー射撃、一児のパパ。
事務所名 : 税理士・社会保険労務士・海事代理士・行政書士 蝦名事務所
事務所URL:http://office-ebina.com
(弁護士ドットコムニュース)