イギリスにおけるラリークロスの歴史と伝統を担ってきた伝説のトラック、リデンヒルを今季限りで離れ、2018年シーズンにWorldRX世界ラリークロス選手権を迎え入れることが決まっているシルバーストンが、その新シーズンに向けた最新のトラックをお披露目した。
F1も使用するサーキットのインフィールドに位置する、“ストウ”と呼ばれるショート版をベースに構築されたこのレイアウトは、シリーズに参戦する数名のスタードライバーを招いた盛大な発表会にて公開され、イベントは新たに“スピードマシン・フェスティバル”と銘打って、複合的なアクティビティを併催することもアナウンスされた。
このラウンチ・イベントに出席した元世界王者のペター・ソルベルグは、トラックの印象を「とても良さそうに見える。ジャンプはものすごい飛距離になりそうだ」と第一印象を語った。
「少しだけ欠けているものがあるとすれば、それはグラベルのロングコーナーかな。僕らは600馬力以上のマシンを操っているんだから、そのパワーを有効に使えて、かつファンが一目見てわかるようなセクションがあるといいね」と、今季のリデンヒルで最後のウイナーとなったペター。
「グラベルセクションも多く設定されたみたいで、とてもいい。僕はグラベルが大好きだからね。ここはサーキットだし、アスファルトはもう多すぎるくらいだよ!」
WorldRXのマネージング・ディレクターを務めるポール・ベラミーは、会場変更の経緯について「(シリーズの人気に対し)リデンヒルは小さくなりすぎた」ことが主な要因だったと語った。
「何かが間違っていた、という訳ではないのだが、やはりこのスポーツを推進していくにあたり、インフラストラクチャーも21世紀の基準に沿うものにする必要があった」と、ベラミー。
「我々は、多くのファンを収容でき、かつ楽しめる施設に移る必要があった。それがシルバーストンだったのだ。ここで目にするものはリデンヒルとはかなり異なっている」
名称を“スピードマシン・フェスティバル”とする2018年のWorldRXイギリス戦は、土曜夜のヘッドライナーとしてミュージシャンによるフェスを開催するほか、F1でも利用されるキャンプサイトの開放、ウイングと呼ばれるピットビルディングでのキッズやティーンエイジャーたちを中心とした新たなファン向けのシミュレーターやネット対戦が可能なeゲーミング・エリアを設けるなど、ラリークロスを軸にした新たなイベント作りの試みがなされる。
「その上で、我々は参戦する各マニュファクチャラーにF1トラックを走行する機会を提供することができる。しかしもっとも重要なポイントは、正しい場所で世界的なモータースポーツイベントを開催することで、リデンヒルでそれを達成するのは期待できなかった」
シルバーストンのスポーツディレクター、スチュアート・プリングルも「これはシルバーストンのもうひとつのステップになる」と期待を語った。
「ここに新たなラリークロスのトラックを作れたことは重要だ。イベントまで残り1年の時点で形が見えたので、今後はドライバーたちの声に耳を傾け、必要な変更を加えていくことも可能だろう」
このお披露目に先立ち、新トラックのテストとフィードバックを担当した元WRCドライバーのミッコ・ヒルボネンは、シルバーストン近郊に拠点を置くJRM製のミニ・JCW RXスーパーカーをドライブ。
WRC引退後はクロスカントリー・ラリーを中心に活動を続けるヒルボネンだが、来季2018年は「ラリークロスのマシンをぜひドライブしてみたいね」と、発表会の席上で笑顔を見せた。
「このマシンは2015年シーズンにリアム(・ドーラン)やガイ(・ウィルクス)がドライブしたマシンだけど、クロスカントリーマシンよりはるかに俊敏だ。トラックも攻め甲斐があって素晴らしかったよ」
壇上のペターも、最後にひとことだけ付け加えることを忘れなかった。
「リデンを離れなければならないのは悲しい。僕が得意だっただけでなく、ラリークロスが生まれた由緒正しい場所だったからね。でも未来を見なければ。ただし、これはあくまで“ラリークロス”だから、あまり華麗で“小洒落たもの”にはならないだろう、ということは覚えておいて欲しいね!」