認知症の情報サイト「認知症ONLINE」を運営するウェルクスは6月28日、認知症の介護経験者を対象に行った自動車の運転に関する調査結果を発表した。その結果、約7割の人が認知症の兆候がある家族に運転を止めた経験があるものの、そのうち約3割が本人が納得せず運転を中止できないと回答していることがわかった。
調査は、今年6月15日~17日の間、認知症ONLINE読者である認知症の介護経験を持つ20~60代の男女100人を対象に実施した。
「基本的に中止できたが、時々運転しまう」ケースも
リリースでは、今年6月に警視庁が発表したデータを紹介。75歳以上の高齢ドライバーのうち、1万人以上が認知症のおそれがあるという。
「認知症の兆候のあるご家族の運転を止めたことがありますか」と聞くと、「ある」(74.1%)が大半を占める。
「ある」と回答した人に、「運転を中止してもらうことができたか」を聞くと、「本人納得の上で中止してもらえた」は19.7%にとどまった。「あまり納得はしていないが中止してもらえた」(28.1%)、「鍵を隠す等本人の納得なく中止した」(13%)を含めると、本人の納得度合いに差があるものの、約6割の人が運転を中止させることに成功している。
その一方で、「本人が納得せず中止できない」(28.9%)や「基本的に中止できたが、時々運転しまう」(5.3%)という人もおり、約3割の人は苦戦している。
先の質問で「運転を中止してもらえた」と回答した人に対して「自主返納したか」を質問すると、「自主返納した」は57.8%だった。自主返納とは加齢による身体能力や認知能力の低下で運転に不安を感じる人、自主的に運転免許証の取り消し申請する制度のことだ。
「車以外の移動手段がなく、自転車に乗り始めて大変だった」
アンケートでは、家族に運転を止めてもらえた、もしくはもらえなかった体験談が寄せられている。うまく止めてもらえたエピソードには、次のようなものがあった。
「父の75歳の誕生日のお祝いと同じ日に免許返納の卒業式をやった。孫娘の似顔絵入りの卒業証書をもらって本人も満足げでした」
「信頼しているかかりつけ医から運転をやめるように強く勧めていただき返納できました。父はプライドが高く母や娘の私から運転をやめるよう言っても絶対に納得しないので……」
ほかには、「口では分かったと言うが、運転してしまうのでバッテリを外した」と強硬手段に出た体験が寄せられている。
反対にうまく止めてもらえなかった例には、「返納したこと自体を忘れ、運転しようとするので、最終的には鍵を隠しました」「クルマに代わる交通手段、移動手段が少なすぎる。 運転できないと今度は自転車に乗り始めて、大変だった」と言ったエピソードが寄せられた。
「運転を自主的にやめてもらうために、どんな仕組みがあると良いと思いますか」という質問には、
「自主返納後の免許証についての周知をもっとして欲しい。明るいイメージで」
「65才以上の方の免許更新時に認知機能の評価と、ドライブシュミレーションの実用」
「自治体に寄って自主返納の扱いがちがうので、全国的に統一してタクシー券を出すとかバスは無料にするなどして欲しい 地方では買い物も通院も大変です」
などの回答が挙がっている。