2017年06月28日 18:03 弁護士ドットコム
日弁連は6月28日、外国で生まれた日本国籍を持つ子どもが対象となる「国籍留保・喪失制度」が、憲法14条などに違反する可能性があるとして、制度を廃止し、国籍法を改正するよう求める意見書を法務省に提出した。
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外国で生まれた子どもは、出生と同時に日本国籍と外国国籍を有することがある。たとえば、父親が日本人で母親が外国人だったり、両親とも日本人だが、アメリカのような出生地主義の国で生まれた場合だ。
生まれながらにして多重国籍の子どもは、そのままにしていると、生まれたときにさかのぼって日本国籍を失ってしまう(国籍法12条)。日本国籍を残すためには、3カ月以内に、日本国籍を留保するための意思表示が必要だ(戸籍法104条1項)。
しかし、この「国籍留保・喪失制度」を知らなかったり、手続きをするための日本大使館・領事館が遠かったりして、日本国籍を失ってしまう子どもたちがいるという。たとえば、日本人とフィリピン人との間に生まれた子どもたちを支援する、JFCネットワークによると、1993年~2011年に相談を受けた341人のうち、230人(67.5%)が日本国籍を喪失していたという。
仮に一度喪失しても、20歳になる前に日本に住所を持ち、手続きを行えば、日本国籍を再取得できる(国籍法17条)。しかし、現地で暮らしている場合、未成年が日本に生活拠点を作るのは容易ではない。先のJFCネットワークでも、国籍を喪失した230人のうち、再取得できた人は31人(13.5%)しかいなかったという。
日弁連はこの制度が、子どもの人生の可能性を制限していると判断。また、婚姻関係にない日本人の父親と外国人の母親との子どもの場合、父親が認知すれば、いつでも日本国籍を取得できることから、婚姻関係にある夫婦の子どもに、3カ月という制限を設けるのは、憲法14条が保障する「法の下の平等」などに違反する可能性があるとしている。
なお、最高裁は2015年3月10日、国籍留保・喪失制度について、合憲とする判決を下している。これに対し日弁連は、仮に立法府に裁量が与えられているとしても、人権をより厚く保障するため、是正が望ましいと主張している。
(弁護士ドットコムニュース)