格安航空会社(LCC)の障害者対応が物議を醸している。車椅子の男性が6月初旬、奄美空港(鹿児島県奄美市)でバニラ・エアの飛行機に搭乗しようとしたところ拒否され、仕方なく腕でタラップの階段をはい上がることになったという。
男性はバリアフリー研究所(大阪府豊中市)代表の木島英登さん(44)。木島さんはキャリコネニュースの取材に「事前連絡はしていなかったが、自力で歩けない人が飛行機に乗れないのはおかしい。歩けない病人を運ぶこともある」と怒りを露わにした。
同行者が車椅子を持ち上げようとしたら「ダメ!」と制止される
同研究所の公式サイトによると、木島さんは関西国際空港のチェックインカウンターで歩けないことを伝えたところ「搭乗できない」と言われたという。しかしこのときは「同行者に手伝ってもらって乗り降りする」と説得して搭乗。奄美空港では、同行者に車椅子ごと担いでもらって階段を下りた。
問題が起きたのは、奄美空港から帰路につこうとしたときだ。「往路に車いすを担いで降りたのは(バニラ・エアの規約に)違反」だったと告げられ、制止されたという。
「搭乗タラップの前、同行者が車いすを持ちあげて乗ろうとしたら、ダメ!と静止。仕方ないので、階段に座って、一段一段、這って登ろうとすると、それもダメだと言ってくる」
しかしそれ以外の方法がなかったため、自力でタラップを上って飛行機に乗った。
飛行機に搭乗するときは、一般にボーディング・ブリッジを機体に装着する。奄美空港の担当者によると、同空港では当時、バニラ・エアの飛行機とは別のジェット機がブリッジを使用していたため、バニラ・エアは階段式のタラップを使う必要があったのだという。
「前もって連絡しても乗れませんよ」
バニラ・エアは16日に木島さん本人に謝罪した。なぜこのような事態になったのか、同社の広報担当者は「車椅子ごと担いだり、障害のある方を担ぎ上げるのは安全面で不安があるため禁止しています」と語る。
「車椅子に1人乗った状態ですと、おそらく合計で100キロ近くの重さになると思います。それを担いで階段を上がるのは危ないのでご遠慮いただいています。同様に障害のある方を抱きかかえて階段を上るのも危険なためお断りしています。自力で立てる方であれば、同行者が両脇を支えて補助するといった方法でご搭乗いただけます」
ただ事前の連絡があれば、「サポートの人数を増やしたり、成田空港経由で搭乗してもらう」といった対応が取れた可能性はある。バニラ・エアの公式サイトでも、車椅子を利用している人に向けて「ご出発日の5営業日前までに車椅子仕様確認フォームを弊社へFAXにて送付してください」と呼びかけている。奄美空港についても、以前から注意書きを掲載していた。
事前連絡は「強制ではないが、事前連絡にご協力いただけるようお願いしている」という。しかし「今回は事前にご連絡を頂けていなかった」そうだ。
一方で木島さんはキャリコネニュースに「前もって連絡したら乗れませんよ」と話す。
「前もって連絡していたら、診断書を出せと言われたり、根掘り葉掘り聞かれたりして面倒です。連絡をしなかったのは確信犯ですね。もし航空会社のスタッフが対応できない場合でも、周囲の人に手伝いを頼むので、とにかく搭乗を拒否するのはやめてほしい。誰もが飛行機に乗れるようになってほしいですね」
また、木島さんによると、腕の力で階段を這い上がろうとしたところ制止されたという。これについてバニラ・エアは「詳細は把握していない」としながらも、「障害のある方が苦しみながら登る姿を目にしたら、周囲の人は助けて上げたくなりジレンマに苛まれる」からだと語った。
今回の件を受け、バニラ・エアは14日に「アシストストレッチャー」を導入。椅子の形をした担架のようなもので、これがあれば障害のある人を固定して、運ぶことができるという。さらに29日には電動昇降機も導入する。大きな車輪の付いた椅子型の昇降機で、タラップの階段を電動で上がることができるという。