バレンティーノ・ロッシは、TTアッセン・サーキットで開催されたMotoGP第8戦オランダGPの決勝レースで接触したヨハン・ザルコについて、きれいなオーバーテイクの仕方を「わかっていない」と評した。
ザルコはウエットコンディションで行われた予選で、ポールポジションを獲得。決勝レースでは、ホールショットを奪うとレースをリードする。11周目までトップを走行したものの、12周目の1コーナーでワークスマシンを駆るロッシに交わされた。
トップを奪われたザルコは、すぐにロッシを抜き返そうと試みた。そしてザルコは右コーナーが連続する3コーナーから4コーナーで、ややワイドラインとなったロッシのインをつく。
しかしこのとき、ロッシのマシン後部とザルコのマシンが接触。オーバーテイクには至らず、ザルコは4位にまで順位を下げた。
ロッシとザルコは、4月にアメリカ・オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で開催されたMotoGP第3戦アメリカGPでも同様に接触。
ロッシはインをついてきたザルコと交錯してコースオフし、これがショートカットとみなされてペナルティを受けている。
オランダGPで優勝を果たしたロッシは、ザルコとの接触についてこう語った。
「今では、ザルコは悪いやつじゃないんだと思い始めている。彼は、自分のマシンとほかのマシンのサイズ感覚がわかっていないだけなんだ」
「オースティンと同じだ。ザルコは無理を通そうとした。なぜザルコが僕のインをつこうとしたのかわからないよ。あれは完全に僕のラインだった」
「オーバーテイクしようとするときは、相手が転倒するなどして急に目の前からいなくなったり、交わすことができないということも計算しておかなければいけないというのにね」
■レースをリードし続けたかったザルコ
ザルコはロッシとの接触について、ロッシがややワイドラインを通ったので、そのインをついてオーバーテイクしようとしただけだと話した。
「ロッシは2度ほどややワイド(ライン)を走ったんだ。だから、僕はその機会を逃さないようにしようとした。レースをリードし続けたかったんだよ。トップを走っている方が、ペースを維持できるからね」とザルコ。
「(ロッシにオーバーテイクを仕掛けたとき)インを走ってコーナースピードを維持しようと頑張った。だけどロッシのコーナースピードはとても速かった。ふたりとも身体を右に傾けていたし、僕はロッシの右側にいて、頭を完全に右に傾けていた」
「僕にはロッシが見えないんだ。僕はロッシをオーバーテイクすると決めるだけ。接触してしまうかどうかは、状況に任せるしかないんだよ」
ザルコは、その後自分は優勝争いから脱落してしまったと語った。弱い雨が降り出したことでウエットタイヤを履いたマシンに乗り換えるため、ピットインしたからだ。
さらに、ザルコはこのマシン交換時のピットロードでのスピード違反でペナルティを課せられ、最終的に14位でフィニッシュした。
「雨が降り出したときはスリックタイヤを履いていたから本当に怖かった」
「僕のタイヤはドライ路面でもすでに限界だった。ほんの少しウエットコンディションになっただけで、クラッシュしてしまいそうだと想像がついた。そのリスクは取りたくなかったんだ」
「逆にもっと降っていたなら、僕はレースを支配できたかもしれない。でも、最後は主役になりそこねてしまった」
ザルコは、変わりやすいTTアッセン・サーキットの天候と、午前中のウオームアップ走行時の土砂降りの天候に、マシン交換の判断が影響されたと言う。
「マーシャルが雨を知らせるフラッグを振っていたのを見て思ったんだ。『オランダのマーシャルもここの天候をわかっているはずだ』って」
また、ザルコは仮にレースでドライコンディションのままだったとしても、トップを維持できなかっただろうとも考えている。
「僕にはここのコースで優勝を狙うには、重大な弱点がふたつあるんだ。(そのひとつが)方向を素早く変えることだ」
「それはこのTTアッセン・サーキット特有のことだけど、Moto2時代にも、僕には同じ課題があった。僕のスタイルだとそれを解決がすることが難しいんだ」