2017年06月28日 10:43 弁護士ドットコム
iPhone、iPad、Wi-Fiルーター。この3つが、都内会社員のアユミさん(32)にとって業務で欠かせない三種の神器だ。メディア関連企業の企画営業職として駆け回るアユミさんは、移動時や客先での打ち合わ時に必需品だという。しかし、「全部自腹です。本体も月々の通信量も・・・」と強い不満を抱いている。
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アユミさんが勤務する会社では、Wi-Fiルーター(通信費込み)が支給されている部署もあるそうだ。そこで、直属の上司にかけあったが「俺は使っていないし、『あれば便利』程度のものに、経費は使えないよ」と言われた。しかし、PCの持ち出しができず、移動中もメールなどの対応に追われたり、外での打ち合わせ時には欠かせない。
アユミさんは「せめて機種代は無理でも、通信費は支払ってもらえないか」と考えている。業務上、必要なものに関しては、経費を請求できないだろうか? 森田梨沙弁護士に聞いた。
「労働者が私物のスマートフォンやタブレットなどの端末を業務に利用することをBYOD(Bring Your Own Device)とも言います。
しかし本来的には、業務に必要な機器類は会社が用意すべきであり、個人所有の機器を利用する場合には、労使でルールを決めておくことが望ましいと言えます。特に、その費用を労働者側の負担とする場合には、その内容を就業規則で定めておく必要があるでしょう(労働基準法89条5号)。
何も取決めがない場合は、そもそも会社支給品以外の利用が禁止されていないか、確認する必要があります(禁止されていれば当然労働者負担となります)。禁止されていない場合でも、機器類はあくまで労働者の所有物なので、機種代は労働者の負担となるのが原則です。
通信料についても、今回、会社は、企画営業職である相談者の業務に関し、端末の利用を必要とは認めていないわけですから、相談者が会社に対し、その通信料を請求することは、法律的には難しいと思われます」
いくら「業務で使うことが必須」という状況にあっても、認められるのは難しいのだろうか。
「あくまで従業員は、会社に与えられた環境の中で、業務に当たらざるを得ないということです。また、会社の許可なく私物端末を利用して、セキュリティーの問題が発生したときのリスクというのも、考えておく必要があります。
とはいえ、現実問題としてそれらの端末を使わずに仕事をすることは難しいというのが、相談者の実感なのだと思います。相談者としては、他の営業職と同様、企画営業にも端末を利用した通信環境が必要であるということを会社に理解してもらえるよう、掛け合って頂くしかないということになります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
森田 梨沙(もりた・りさ)弁護士
中小企業法務、労働案件、一般民事(交通事故、不動産、離婚事件他)など幅広く手掛ける。事案の早期解決及び予防法務の観点から、依頼者と密なコミュニケーションをとることを常に心がけている。趣味はゴルフと漫画。
事務所名:共進総合法律事務所
事務所URL:http://www.kyoshin-law.com/index.html