WEC世界耐久選手権のLMP1クラスにプライベーターとして参戦しているバイコレス・レーシングチームのオリバー・ウェッブは「もし、僕たちのマシンが完走できていたらル・マン24時間耐久レースで優勝できていたかもしれない」と語った。
ポルシェとトヨタが投入した全5台のワークスマシンが相次いでトラブルやアクシデントに見舞われた2017年のル・マン24時間。ウェッブはレース序盤にエンジントラブルが発生しなければ、バイコレスのENSO CLM P1/01・ニスモの勝利も想定外だったわけはないと考えている。
マルコ・ボナノミ、ドミニク・クライハマーとともにマシンをシェアしたウェッブは、バイコレスがレース終盤に総合首位を走り最終的に総合2位となったLMP2クラスのジャッキー・チェンDCレーシングの38号車オレカ07・ギブソンよりも決勝のペースで上回っていたことを示唆した。
「いわゆる『たら~れば』の仮説になるが、僕たちのマシンが完走できていたら、総合結果で上位につけたLMP2マシンに大きな差をつけることができていたはずだ」とウェッブ。
「計算上、僕たちが3分24~25秒台で周回を重ねていれば、総合優勝を飾った2号車ポルシェよりも約3周分先行していたはずなんだ」
「仮にペースが遅くなっていったとしても、少なくとも総合2位でチェッカーを受けることができただろう」
スタートドライバーを務めていたウェッブは、リタイアする直前に計測したフルラップで3分25秒919を記録しているため、このペースでの周回は可能だったはずだと説明した。
日産/ニスモのVRX30Aエンジンを搭載する4号車ENSO CLM P1/01・ニスモは、オープニングラップで9号車トヨタTS050ハイブリッドをかわして総合5番手にポジションアップしたが、直後のテルトル・ルージュで左フロントタイヤがパンク。この影響でランオフエリアに飛び出し、ガードレールに接触、フロントノーズを壊してしまう。
その後、4号車バイコレスはノーズにダメージを受けたまま走行を続けていたが、7周目の後半セクターでオーバーヒートを起こしスロー走行に。マシン修復のためピットへ戻ることとなった。
「(テルトル・ルージュで)ドンという音がしたと同時にステアリングを取られ、ランブルストリップが設置されたランオフエリアのさらに外側までラインが膨らんでしまった」とウェッブは当時の状況を語った。
「接触によってノーズが壊れ、空気がうまく通らなくなってしまった。チームからは無線で『温度がルーフに伝わっている』と聞かされていたよ」
バイコレスは2017年シーズンの開幕前にエンジンをAER製のものから2015年にニッサンGT-R LMニスモが使用したV6ツインターボエンジンにスイッチ。ル・マンのフリープラクティス、3回にわたる公式予選では小さなトラブルしか起こらず、決勝レースに向けて、その信頼性に自信を持っていたところだった。
そんなバイコレスは、7月14~16日に開催されるWEC第4戦ニュルブルクリンクを最後に2017年WECの残り5ラウンドへの参戦を見送ることを6月上旬に発表。チームはLMP1プライベーターの新規参入が予想される2018年シーズンに向けて、マシンの開発を進めることを欠場の理由に挙げている。
なお、チームを率いるコリン・コレスは、シリーズの残りのレースについてスポット参戦の可能性を否定していない。