2017年シーズンは15車種30チームが熾烈なバトルを繰り広げるスーパーGT300クラス。数多くある車両から1台をピックアップし、ドライバーや関係者にマシンの魅力を聞いていく。
今回は2015年からスーパーGTに参戦し、今年から新モデルが投入されたレクサスRC F GT3にフォーカスする。
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2015年にデビューとなったレクサスRC F。ベースは2014年に登場したレクサスブランドのハイパフォーマンスクーペで、デビュー戦で10位入賞を果たし話題となった。
2015~16年の車両開発をもとに、TRDが中心となり開発された17年モデルは、スーパーGTの開幕戦を前に、1月のデイトナ24時間でデビューを果たしクラス14位という成績を残している。
搭載されるエンジンは量産型の2URエンジンがベースとなる点は15年モデルと17年モデルで同一だが、スペックは大きく変化。排気量が70cc引き上げられたほか、リストリクターがツインとなり、スロットルも8連となるなど、別物と言えるエンジンに仕上がっている。
15年モデルから車両開発に携わる飯田章によれば、「17年モデルと15年モデルはまったくの別物」だという。
「ベースは同じレクサスのRC Fなので見た目は一緒ですが、エンジンや駆動系、空力、サスペンションなどいろいろな部分が見直された完全なニューモデルですね」
「一番大きな違いは、サスペンションのレイアウト。より市販車に近かった15年モデルから、FIA GT3規格ぎりぎりのところまで理想的なレイアウトに改良しました。結果的に非常に丈夫なクルマになりましたね」
「そのサスペンションに合うよう駆動系やトランスミッションの見直しもして、エンジンもパワーアップしました」
■「得手・不得手で言えば、メルセデスと似たところがある」
サスペンションのレイアウト変更に合わせて、プラットホームのレイアウトもすべて変更。よりレーシングカーとしてパワーアップした。まったくのニューモデルというだけあって、クルマのキャラクターも大きく違うようだ。
「15年モデルに比べると、1番(変化が)大きいのは重量の違いですね。15年モデルはまったく軽くできなかったんです。ベースモデルがあるので、できる範囲は限られますが、ジオメトリーなんかも見直して低重心化も進めました」
「見た目の変更はありませんが、風洞テストを重ねて、FIA車両規定の範囲で15年モデルから空力の最適化もされています。当然ダウンフォースも増えていますし、サスペンションの改良によってタイヤの接地感、グリップ感もより上がっています。コーナリング性能やブレーキ性能は格段に上がりましたね」
ストレートスピードはそれほど速くないことから、富士では苦戦が予想されたが、第2戦の500㎞レースでは同じRC FのJMS P.MU LMcorsa RC F GT3が優勝を飾った。
こうなると、コーナリングマシンとしての長所を発揮できる第4戦SUGOでの好成績も期待される。また、飯田は「ウエイトさえ増えていかなければ、(第6戦)鈴鹿も案外悪くないのではと思っている」と自信を覗かせた。
コーナリングマシンという面では第1戦岡山も強みを生かせるコースのはずだったが、BoP(性能調整)によって本来のポテンシャルを出せずに苦戦。22位に終わった。
「どのクルマを使って戦うかというのは、GT3カーでスーパーGTを戦う難しさでもあり面白さでもあると思います。岡山ではBoPが厳しかったのですが、富士の前に少し変わって、開発車両に近いところまで戻ってきました」
「得意・不得意で言えば、メルセデス(AMG GT3)と似たところがあるので、あそこが速いところはうちも速いはず。SUGOや鈴鹿では上位陣とのレースがもう少しできるんじゃないかなと思います」
■「世界規格のGT3カーでは、BoPをうまく利用することも考えないと」
市販されているRC Fにも乗ったことがあるという飯田。本音を言うと、このクルマでGT3車両を開発すると分かった時には、相当の苦労を覚悟したそうだ。
「フロントヘビーで曲がらないクルマをレーシングカーにする。しかも、GT3車両は販売することも考えないといけない。コストをかければ、たとえば軽量化にしても軽くて丈夫な素材を多用すればそれだけで大きな軽量化ができますが、そういうわけにもいかない」
「ベースになるホモロゲーションモデルをどこまで突き詰めるか、そのあたりの見極めをするのは難しかったですね」
湯水のようには費用をかけることができないなかで、試行錯誤の末にRC Fは生まれ変わった。
「15年モデルからすると、(17年モデルは)すごく丈夫なクルマになったのかなと思いますね。線が細くて、非常にセンシティブだった15年モデルから、ライフさえ守れば安心してレースが戦えるクルマに、ベースとしては持っていくことができました。ここからアップデートしていくなかで、さらに戦闘力も煮詰めていけると思います」
ただし、強いGT3車両には、クルマ自身の戦闘力だけでなく「レースの進め方」まで考慮することが求められる。
「世界規格で作られていて、BoPというシステムも採用されるわけですから、そのBoPをうまく利用することも考えないといけないですね。ただ単に速いクルマを作るだけでなく、そのクルマでどう戦って勝つのかということだと思います」
開発ドライバーを担ってきた飯田にとって、RC Fの初優勝を他チームにさらわれた第2戦富士は、悔しい思いしかなかったはず。飯田は「RC Fの2台は使っているタイヤメーカーの違いがあるのでそこも差にはなってきますが、なんとか僕たちも続きたいですね」と意気込みをみせた。
戦闘力を示した“新”RC Fの2勝目はどちらが挙げるのか。得意と予想するコースが続くシーズン後半、注目だ。