2017年からWEC世界耐久選手権のLM-GTEアマクラスにフル参戦している澤圭太とクリアウォーター・レーシングは、6月14~18日に開催された第3戦ル・マン24時間耐久レースに出場。予選結果はクラス11番手と振るわなかったが、決勝では持ち前のレースでの強さを発揮しクラス5位完走を果たした。
WEC開幕戦シルバーストンで衝撃のデビューウイン。続く第2戦スパ・フランコルシャンでも3位表彰台を獲得し、良い状態でル・マンを迎えたチームと澤。ル・マンにはレギュラー参戦の61号車フェラーリ488 GTEにスポット参戦となる60号車フェラーリ488 GTEを加えた2台体制で挑んだ。
2016年、「30代でル・マンに行く」という公言を39歳で実現させ、今季自身2度目のル・マンに挑む澤は、6月12日(月)に現地に入り公開車検に参加。13日(火)は集合写真セッションやドライバーブリーフィングに出席し、走行初日の14日(水)を迎えた。
澤、ウェン-サン・モク、マット・グリフィンが乗り込む61号車フェラーリは、14日のフリープラクティスで第1戦、第2戦と変わらぬいつものスタイルでマシンのセットアップを進めていき、22時から開始された公式予選ではグリフィンのアタックでクラス6番手につけた。
15日(木)の公式予選2回目、3回目は例年以上に路面にラバーが乗り、タイムが出やすい状況に。続々とタイムが更新されていくなか、61号車フェラーリもアタックを開始。しかし、グリフィンのアタックは不発に終わる。さらに予選3回目でもクリアラップがとれずクラス11番手に沈んだ。
迎えた17日(土)の決勝、チームは朝のウォームアップで決勝用のセットを確認し、15時からのスタートを待った。スタートを担当したモクは、クラス14~15番手で走行しながら約2時間におよぶ2スティント走行を終えグリフィンに交代。グリフィンは2スティントのなかでポジションをトップ10圏内まで挽回して澤にバトンをつなでいく。
代わった澤もポジションを上げながら走行を続けるが、2スティントの中盤でLMP2車両と接触。タイヤとホイールにダメージを負ってしまう。幸いマシンに致命的なダメージはなかったものの約1分30秒ほどタイムを失い、順位はクラス12番手まで後退してしまう。
しかし、その後はモク、グリフィン、澤と順調に周回重ね、18日(日)の朝を迎える頃にはクラス5位までポジションを上げることに成功。そのままの順位でレース終盤を迎えた61号車フェラーリは、チェッカーまで残り45分で澤にドライバーチェンジ。ラストスティントに突入した。
澤は細かなトラブルの兆候がみられたギヤボックスを労りながら、チームの指示通りのペースで周回。そして18日の15時、無事にチェッカーを受け2年連続の完走を果たした。
クラス5位となったクリアウォーターの61号車フェラーリは、WECにフル参戦するチームの中では最上位であることから、規定により優勝時の25ポイントを獲得。さらにル・マンではダブルポイント制が採られているため、獲得ポイントは合計50ポイントとなった。
またドライバーズポイントもクラス2位相当の2倍となる36ポイントを獲得。ドライバーズランキング、チームランキングともに大きくポイントを加算することに成功したチームと澤は、シリーズ後半戦をランキング首位で迎えることとなる。
加藤寛規も参戦した僚友60号車フェラーリは予選12番からスタートし、決勝では61号車フェラーリを上回るペースもみせたが、コースアウトなどによるタイムロスが響き、最終的にクラス11位でチェッカーを受けている。
「2016年、念願のル・マン24時間を戦い終えた時には、またこの場所に戻ってこられるなんて夢にも思っていませんでした。しかし、WECフル参戦の今年、ル・マンは昨年とは違って格段に落ち着いて、昨年以上に戦う姿勢で走れました」と長く厳しいレースを振り返った澤。
「予選は中段に埋もれてしまいましたが決勝は自分たちのペースを守ってトラブルなく走れば必ず上位に上がれると信じてました」
「実際そのように進んでいましたが、自分の最初のドライブ中にLMP2車両と接触、タイヤがバーストしたことによって失ったタイムが最後まで響く結果となってしまいました」
「今思えば避けられる接触だったのでは? と思うとチームに申し訳なく、また普段は絶対に接触やコースアウトをしないことが信条の自分が、この大切なレースでアクシデントを起こしてしまったことにショックを隠しきれませんでした」
「しかし気持ちを切り替え、夜間の3スティント連続走行も朝の走行も、昨年以上の速さを発揮できました。念願の表彰台に上がれなかったことは残念でしたが、絶対にブレない平常心と集中力をさらに磨き、次の機会にはさらに強くなって必ずこの場所に帰ってきたいと思います」
「最後のスティントでは、少しトラブル傾向があって不測の事態にも備えられるようにさまざまなシミュレーションをしていたのですが幸い大事には至らず、60号車とランデブーでフィニッシュできました」
「ファイナルラップのヘルメット越しの景色や、ゴール後、オフィシャルがコースに出てくれるなかでのクールダウン走行など、世界三大レースのル・マンの最終ドライバーでないと見られない景色を今年は体験することができ、悔しさを安堵と感動がごちゃまぜになった複雑な涙で前が見えませんでした」
「ランキングトップとしてWECシリーズはこれからまだ6戦も残ってます。10月の富士戦にこのままランキングトップで帰って来られるように、まずは7月14~16日のニュルブルクリンク、9月のメキシコ、COTA(オースティン)の2連戦に万全の状態で挑みたいと思います」