2017年06月26日 11:12 弁護士ドットコム
飲食店のアルバイトが、直前になって休みにさせられるーー。アルバイトでそんな経験をしたことはないでしょうか。ネットのQ&Aサイトにも突然のシフト変更について相談が多く寄せられています。
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飲食店でアルバイトをしているという投稿者によると、出勤当日の出勤1時間前になって突然、仕事を休むように電話がかかってくるそうです。それも1か月に数回あるということで、「毎回電話が来るときには店の近くまで行ってしまっているのに…」と困っているようです。
もともとシフトで決まっていたアルバイトを、突然休みにさせられた場合、その分の給料を請求できるのでしょうか。山田智明弁護士に聞きました。
使用者は、労働契約の締結に際し、賃金・労働時間その他の労働条件を明示する義務があります(労働基準法15条)。もっとも、業務の性質等で、シフト制にすることは許されております。このようなシフト制の場合は、事前にシフト表等が配布され、これによって労働条件が設定されます。
この場合、いったん決定したシフトを使用者の都合で一方的に変更できるかが問題となります。原則として、一度決定したシフトは労働者の合意なく変更できないとされています(労働契約法8・9条)。
ただ、あらかじめ「使用者が変更を通知する」といった内容の就業規則があったり、その期間が合理的な期間に留まり、かつ変更の必要性などが考えられたりするときには、労働者の合意がなくても就業規則に基づいて変更が許容される場合も考えられます(労働契約法10条)。
しかし設例のケースのように、出勤時刻の1時間前の一方的な変更は合理的なものとは認められないでしょう。このような同意もなく、就業規則による場合も合理性も認められない場合には、シフトの変更は出来ないことになります。
現実問題として使用者側が就労を認めないことが想定されますが、設例のケースは、使用者側による一方的な直前のシフト変更なので、使用者の責めに帰すべき事由により就労不能となったとして、労働者は対価としての賃金全額を請求することが出来ます(民法536条2項)。この規定は任意規定なので、当事者間の合意や就業規則により、これと異なる内容を定めることは出来ます。
ただし、労働基準法26条では、使用者の責めに帰すべき理由による休業の場合、使用者は、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う義務があると定めています。この規定は民法536条2項とは異なり強行規定とされているので、使用者は、最低でも平均賃金の6割以上の休業手当の支払い義務を免れることは出来ません。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山田 智明(やまだ・ともあき)弁護士
2008年弁護士登録。2013年、柏第一法律事務所を開設。一般民事を中心に業務をおこなっており、労働問題については労働者側の代理人として活動している。
事務所名:柏第一法律事務所
事務所URL:http://www.kashiwadaiichi-lawoffice.com/