ウィスコンシン州エルクハート・レイクにあるロード・アメリカで開催されたインディカー・シリーズ第10戦。25日に行われた決勝レースは、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)が今季初勝利を飾った。佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)は、途中スピンを喫し19位で終えた。
全長が4.0914マイルと長いロード・アメリカには高速コーナー、長いストレート、急な上り坂などのアップ&ダウンあり、そしてハード・ブレーキングが必要なコーナーもあるなど、オールラウンドにパフォーマンスの高いマシンが必要とされる。
レースの前週にプライベート・テストを行ったのはアンドレッティ・オートスポート、シュミット・ピーターソン・モータースポーツ、デイル・コイン・レーシングのホンダ3チームだ。
初日のプラクティス1ではアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)が最速だった。それがプラクティス2から様相は一転、チーム・ペンスキーがライバル勢を大きく突き放した。
今週末2回目のプラクティスでトップ4を独占した彼らは、予選日の午前中のプラクティス3でもトップ4を占拠。そして、予選でも1-2-3-4を達成した。もう今週は誰もチーム・ペンスキーにはかなわない。そう強く印象付けられた。
しかし、決勝日の朝のウォームアップ、ポールシッターのエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)にタイヤトラブルが発生。ペンスキーの絶対的優位に小さなほころびができた。
トラブル回避のために変更したセッティングでもカストロネべスはスタートからレースをリード。しかし、ハードコンパウンドのブラックタイヤにスイッチするとチームメイトのジョセフ・ニューガーデンが彼からトップを奪った。
キャリア50回目のポールポジションを獲得したカストロネベスだったが、キャリア30勝目への道のりは長い。2014年とは優勝から遠ざかったままだ。カストロネベスは2回目のピットストップでスコット・ディクソンにも先行を許した。
ニューガーデンがチーム・ペンスキーでの2勝目を飾るかに見えたが、29周目に起こった佐藤琢磨のアクシデントによる最初のフルコースコーションが彼にとっては不運だった。
第2、第3スティントをブラックタイヤで走る作戦を採っていた彼は、31周目のリスタートでレッドタイヤ装着のディクソンにパスを許したのだ。
ニューガーデンが2スティントをブラックで戦ったのは、予選でレッドを効率的に使わなかったためだ。先輩チームメイトたちは決勝に備えて2セットのレッドで行う周回数を可能な限り少なくしていた。
彼らと同じように、ディクソンも決勝4スティントのうちの3スティントにレッドを投入した。このうちの2セットは当然、予選で使用したユーズドだった。ニューガーデンがさらに一段のステップを上がるためには、予選の強化が必要だろう。
ただ、今日の彼はブラックを2スティントで使いながら、先輩チームメイトたちより前でゴールした。ディクソンただひとりが彼より速かった。レッドが必要なタイミングでレッドを装着していた、そのアドバンテージが勝敗を決した。
トップに立ったディクソンは、その座をキープし続けた。ゴールを前にトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)のアクシデントがあってリードはゼロになったが、残り7周のリスタートでもディクソンは隙を見せず、1ラップ目に1.5秒の差をつけると、そこからはニューガーデンとの距離を危険のない範囲に保ってゴールまでを走り切った。
最多リードラップのボーナス3点も加えた53点を加算したディクソンは、ポイントリードをレース前の13点から34点に広げた。ランキング2位は昨年度シリーズ・チャンピオンのシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)。
今日の彼は、優勝争いに一切絡むことができなかったが、4位でゴール。ディクソンより1回多い今季8回目のトップ5フィニッシュを記録した。
「2回目のピットストップでレッドを履くか、ブラックを履くか悩んだが、レッドでいくことに決めた。それを含め、今日はチームの選んだ作戦が全て的確だった」
「ピットストップも素晴らしかった。ホンダの奮闘ぶりも讃えたい。パワーを引き出し、同時に燃費も良くする。両立は難しいが、それを実現してくれている」
「今年の私たちは開幕からスピードも安定感もあったが、不運に見舞われ続けていた。勝てていたレースは幾つもあった。その上、ダブル・ポイントのインディ500でほぼ最後尾という結果にもなったが、こうしてポイントトップにいることができている」
「今日やっと勝てた。頑張り続けてくれているチームのためにも嬉しい勝利だ。残りのシーズンであと2、3回は勝ちたい。今日はチャンピオンシップに向けて多くのポイントを稼げた点も嬉しい」とディクソンは喜んでいた。
ニューガーデンは、「あと少しの差だっただけに、2位フィニッシュは残念だ。僕たちの作戦は間違っていなかった。ピットと相談し、自分も良いと考えてタイヤ選択を行っていた」
「ただ、イエローの出るタイミングだけが自分たちに合っていなかった。マシンの仕上がりの素晴らしさを考えると勝てなかったことはとても悔しい。あのイエローがなく、トップを保てていたら勝てていたかもしれないだけにね」と悔しがっていた。
佐藤琢磨は予選後に首の痛みを感じ始め、決勝日の朝のウォームアップは走らないことにした。
レースは20番グリッドからのスタート。アクシデントもあって周回遅れに陥りながらも、19位での完走を果たした。アクシデントは29周目、2回目のピットストップを終えてコースに戻ったラップで、なかなかタイヤの内圧が上がらなかったためか高速コーナーで飛び出した。
大きなアクシデントにならなかったのはラッキーだった。さらに、ストールしたエンジンの再始動ができたことで、ダメージを負ったマシンながらゴールまで走り切った。ポイントランキングはカストロネベスに抜かれて4番手になった。しかし、まだトップのディクソンとの差は56点。逆転のチャンスは十分にある。