6月25日現地時間17時、アゼルバイジャンGP決勝のスタートを迎えた。この日は朝から湿度が高く週末一番の暑さに襲われ、この時間でもまだ気温は28度、路面温度は53度と高いが、日が傾いたことで路面温度は急激に下がっていく。
FP3のトラブルで予選に出走できなかったジョリオン・パーマーにはスチュワードから出走許可が出されて最後尾グリッドが与えられた。予選12位のカルロス・サインツJr.は前戦のペナルティで3グリッド降格、マクラーレン勢はパワーユニットとギヤボックスの使用数規定違反で大幅なグリッド降格ペナルティが科されたがストフェル・バンド―ン18番、アロンソ19番グリッドからのスタートとなった。
ほぼ全車がスーパーソフトタイヤでのスタートで、ソフトを履いたのは後方グリッドのロマン・グロージャン、マーカス・エリクソン、バンドーンのみ。タイヤのアロケーションが硬くデグラデーションが小さいためほぼ全車が1ストップ作戦を採ってくるものと見られている。
各車が無難なスタート加速を見せたが、ターン1でブレーキをロックさせたダニール・クビアトがワイドになり、戻ったところにいたサインツがリヤのコントロールを失ってスピン。さらにその先のターン2では2位バルテリ・ボッタスのアウト側に並び掛けたキミ・ライコネンに行き場を失ったボッタスが接触。
ボッタスは右フロントタイヤをパンクさせて大きく後退、ライコネンもウォールにヒットし5位まで後退してしまった。これで順位は首位ルイス・ハミルトン、2位セバスチャン・ベッテル、3位にはセルジオ・ペレス、その後ろにマックス・フェルスタッペン、ライコネン、フェリペ・マッサ、エステバン・オコンとなった。4位フェルスタッペンは3位ペレスに猛攻を仕掛けるがなかなか抜くことができない。
ブレーキダクトにデブリを拾って過熱してしまったリカルドが5周目にピットインし後方まで下がる。バンドーンもここでピットインしソフトを捨ててスーパーソフトにスイッチした。7周目にはパーマーがトラブルを抱えてピットに戻りリタイア。10周目にはクビアトがターン13にストップ。このマシン処理のためにセーフティカーが導入され上位勢が一斉にピットインしてタイヤ交換義務を果たす。
それと前後して11周目にフェルスタッペンがストレートを走行中に「エンジンに問題!」とスローダウン。すぐにスピードが戻るものの、セーフティカー中にピットインしてそのままリタイアとなった。
レースは17周目に再開され、ペレスがベッテルのスリップからアウトに並びかけるが、ベッテルはインを守って辛くも2位を守る。その後方でもマッサにオコン、ライコネンが仕掛けるが、ライコネンのマシンからデブリが飛び散り、SC走行中のターン15でもボッタスがバージボード上のフィンを飛ばす。そのため再びSCが導入される。
デブリ除去の後に20周目にレースが再開されることとなるが、その直前の19周目のターン15で、立ち上がりが遅いハミルトンにベッテルが追突。
「彼がブレーキテストをした!」と怒りを露わにしたベッテルはハミルトンに並びかけ右にステアリングを切ってマシンをぶつけていったように見えた。
ターン1では2位ベッテルにペレス、マッサ、オコンが並び掛けていき、ベッテルは再びなんとか2位を守ったがマッサがペレスの前へ。続くターン2でオコンがペレスのインに並びかけ、サイドバイサイドで接触。
ペレスはコンクリートウォールの間に挟まれる形でステアリングアームを壊してピットインを余儀なくされる。オコンの右リヤタイヤがバースト、そしてその直後を走っていたライコネンもデブリで左リヤタイヤをパンクさせてリヤウイングなどに大きなダメージを負いながらピットに戻る。
コース上にあまりに多くのデブリが落ちている状況を鑑みてレースは赤旗中断とされ、路面の清掃が行なわれる。18時15分にレースはSC先導で再開される。この中断の間にライコネンとペレスはマシンを修復して隊列に戻ったが、ピットレーン停車中以外の作業は禁止されているためドライブスルーペナルティを科された。
マッサはレース再開直後からマシンの調子が振るわず他車に次々と抜かれ、そのままピットに戻ってリタイア。マッサを抜いて5位に浮上していたヒュルケンベルグもターン7でインをカットしコンクリートウォールにヒットして右フロントサスペンションを壊しリタイアを喫してしまった。
首位を行くハミルトンはヘッドレストが外れてしまい、手で押さえて走っていたもののチームは交換のためピットに呼び寄せてサインツの後方9位まで後退。SC中の危険行為に対して10秒ストップ&ゴーペナルティが科されたベッテルもピットに向かい、これを消化してハミルトンの前でコースに戻った。
これで首位リカルド、2位は5秒後方でストロール、そこから13秒離れてマグヌッセンを抜いた3位オコン、4位ボッタス、5位ベッテル、6位ハミルトンの集団が続く。7位にマグヌッセン、8位アロンソ、9位サインツが続く。10位のエリクソンに対し秒差で僚友パスカル・ウェーレインが続き、あわやクラッシュという場面も。その後ろからはタイヤのフレッシュなバンドーンが1周1秒以上速いペースで入賞圏を目指して追いかける。
3位ボッタスがファステスト連発の走りで追いかけ、2位ストロールも自己ベストを更新しながら逃げるものの両者の差は1周1秒ずつ縮まっていく。
首位リカルドは危なげなく後続を引き離したまま51周を入りきり、今季初優勝。そしてボッタスは最終ラップのストレートでストロールのスリップストリームを捕まえ、フィニッシュライン直前で逆転を果たして0.105秒差で2位。
それでもストロールは3位で自身初の表彰台獲得を果たした。最後まで激しいバトルを続けたベッテルとハミルトンは順位の交代はなくベッテルが4位、ハミルトン5位でレースを終えた。
中団は6位オコン、7位マグヌッセン、8位サインツの順で入賞。アロンソが「バッテリーに問題、パワーがない」と3秒ほど遅いペースになりサインツに抜かれたものの10位ザウバーは30秒以上後方であるためそのまま走り続け、途中からは自己ベスト更新連発の走りが復活し、9位で今季初ポイント獲得を果たした。
10位には途中でチーム内で順位を入れ換えたザウバーのウェーレインが入り、バンドーンは0.366秒エリクソンに及ばず12位でレースを終えた。