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TWICE、Dungeon Monsters、ドラマ主題歌……複合チャートで可視化された“話題性”を読む

2017年06月25日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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【参照:ビルボードジャパン チャート・インサイト(2017年6月26日付)】(http://www.billboard-japan.com/chart_insight/)


 6月12日~6月18日の集計を反映させた最新ビルボードジャパンチャートは、フィジカル作品のみを対象にしたオリコンチャートと同じく、B’zの「声明」(『声明 / Still Alive』)が1位、Da-iCEの「トニカクHEY」が2位に初登場。とはいえ、このチャートはフィジカル作品の売り上げに加え、ラジオオンエア数やダウンロード/ストリーミング数、動画再生回数、PCへの取り込み数、Twitterのつぶやき数などを合算しているため、全体では大きく結果が異なっている。ここではこのチャートならではの結果をいくつかまとめてみたい。


(関連:TWICEは“ポップミュージックの未来”を示している 日本デビューへ寄せる期待


 ビルボードジャパンチャートの最大の特徴は、リリース日にとらわれない世間での“話題性”が可視化されること。6月28日の発売を前に順位を上げて4位に入ったK-POPグループ・TWICEの「SIGNAL」は、まさにその好例だ。「SIGNAL」は低音の鳴りにこだわったベース・ミュージックを経てサビでポップに弾けるキラーチューン。昨今はYouTubeの翻訳字幕機能も充実しているが、鈍感な男へのいじらしい恋心を表現した日本語版の歌詞にも、1点ものとしての抗えない魅力がある。そのため、韓国版と日本版の双方の作品が相乗効果をもたらしている部分もあるかもしれない。TWICEは「Like OOH-AHH」や「TT」「KNOCK KNOCK」もMV再生回数で4位/13位/20位につけており、音楽性/ビジュアル/高いパフォーマンスなど全方位的に魅力を発揮するグループならではの結果となった。同じく集計時点で発売前の曲では、米津玄師「ピースサイン」もMVで2位を記録している。


 4人組ロックバンド、神様、僕は気づいてしまったの「CQCQ」は、集計週にちょうど最終話(視聴率14.8%)に向けて盛り上がっていた『あなたのことはそれほど』(TBS系)の主題歌としても注目されこの週8位に。このバンドはメンバーの素性が分からないこともSNS上で話題となっているが、MVの再生回数7位や、ダウンロードやストリーミングの合算チャートでの3位という結果には、このバンドへのそうした興味の持たれ方が如実に反映されていると言えそうだ。同じくTVドラマの主題歌では最終回を受け、『リバース』(TBS系)の主題歌になったシェネルの「Destiny」が5位に入ったほか、沢尻エリカ主演『母になる』(日本テレビ系)の5月末発売の安室奈美恵「Just You and I」が6位、日曜劇場『小さな巨人』(TBS系)の平井堅「ノンフィクション」が7位に。また、ドラマ主題歌を離れても、たとえば3月リリースのエド・シーラン「シェイプ・オブ・ユー」がダウンロード数とMV視聴数の高さによって17位にラインクインするなど、音楽作品のリリース日だけに限定されない、より人々の生活に即した音楽の流行が垣間見える結果になっている。もちろん、映画やアニメ、大型ライブ、季節のイベントなどに合わせてチャートが変動することもあるだろう。


 また、配信楽曲がランクインするのもこのチャートの特徴のひとつ。『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)のモンスターによるユニット・Dungeon Monstersの「MONSTER VISION」は、配信シングルながら今週14位に登場している(フィジカル盤は6月18日からライブ会場限定で販売)。前週『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)内の「Mトピ」で紹介された彼らは、この週同番組に出演。ZEEBRAもバックDJを務め、ダウンロード数とTwitterのつぶやき数、MV数を合算したバズ・チャートで3位になるなど、システム上オリコンチャートには反映されないこの楽曲への注目度が形になった。『フリースタイルダンジョン』出演者ではR-指定がCreepy Nutsとして、サイプレス上野がサイプレス上野とロベルト吉野としてメジャーに移籍するなど新展開を見せている。リリース方法の多様化に合わせ、チャートの集計方法も多様化すれば、こうした熱がリアルに数字に反映される機会も増えるはずだ。


 一口にミュージシャン/アーティストと言っても、中には音楽そのもので勝負するアーティストもいれば、メディアアーティスト的に面白い仕掛け/アイディアを考えることが得意な人もいるなど、個性の種類はそれぞれに異なる。ビルボードジャパンチャートは、そうした多様化する音楽観/価値基準に対応したチャートとして、世の中の雰囲気を多層的に知る手がかりになるのではないだろうか。また、そうして見たとき、集計基準にかかわらず1位になったB’zの人気の高さも改めて感じられるような、今週のチャート結果だった。(杉山 仁)