全国の都道府県労働局や労働基準監督署に設置されている「総合労働相談コーナー」では、職場でのパワハラや解雇などのトラブル相談を受け付けている。厚生労働省は6月16日、同コーナーに寄せられた相談の件数や内容をまとめた「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を発表した。
上司から無視されたことで精神状態が不安定になり退職
相談件数は9年連続で100万件を上回っていた。最も多いのは、「いじめ・いやがらせ」(22.8%)で、「自己都合退職」(13.0%)、「解雇」(11.8%)がそれに続いた。「解雇」の相談は8年連続で減少している一方、「いじめ・嫌がらせ」は過去10年間、増加し続けている。
同コーナーに相談をすると、労働局長による助言・指導を受けたり、紛争調整委員会による「あっせん」を受けたりすることができる。厚生労働省の担当者は、キャリコネニュースの取材に対して
「相談者の希望に応じて、助言・指導とあっせんのどちらかを選ぶことができます。助言・指導では、口頭もしくは文書で解決の方向性を示し、当事者間の話し合いを促します。一方、あっせんでは弁護士や大学教授などからなるあっせん委員が介入して解決を図ります」
と説明した。
相談の事例として、同僚や上司からいじめを受けたというケースが紹介されていた。正社員として勤務していたある人は、同僚3人から食事をおごらされ、そのうちの1人からは顔や腹を殴るなどの暴力を受けた。さらに上司から無視されたことで精神状態が不安定になり退職に追い込まれたという。紛争調整委員会が介入した結果、会社は被害者に解決金50万円を支払うことで合意が成立した。
「会社に合わないので辞めた方がいい」と退職勧奨を受けた
上司からパワハラを受けたという人もいた。ある人は上司から「アホ」「のろま」「お前は使い物にならん」といった暴言を受けており、後ろから腰を蹴られたこともあったという。労働局が会社に助言したところ、被害者は上司とは別の部署に異動し、社内ではパワハラの調査が行われることになった。
シフトのことで社長と揉め、解雇を言い渡されたという事例もあった。この人は、日曜日を休日にしたいと社長に伝えたところ、「繁忙の日曜日に休む人はいらない。休むなら欠勤届を書くように」と言われたという。欠勤届が必要かどうか問いただしたところ、社長から「じゃあもうあなたはいらない。1か月後に解雇」と通告された。労働局の助言に基づいて話し合いを行った結果、解雇ではなく2か月後の合意退職となった。
正社員として採用されたものの、3か月の試用期間が終了する直前に退職勧奨を受けたという人もいた。部長から「会社に合わないので辞めた方がいい」「このまま働くのであれば減給する」などと言われ、退職を余儀なくされたという。紛争調整委員が介入し、解決金30万円を支払うことで合意したという。