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「ヤマト2202」鈴村健一×神谷浩史インタビュー「ベテランに学べて、同士もいる。幸せな現場です」

2017年06月22日 13:24  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

「ヤマト2202」鈴村健一×神谷浩史インタビュー「ベテランに学べて、同士もいる。幸せな現場です」
コスモリバースシステムを持ち帰り、地球を再生させた彼らは、宇宙からの謎のメッセージに誘われ、再び旅立つ。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の第二章 発進篇が、いよいよ6月24日より期間限定で劇場上映。はるか宇宙のテレザート星から救援を求められた古代進たちヤマトクルーは、やはりヤマトに乗り込むのか。そして地球と同盟を組むガミラス帝国の思惑は――。ヤマトと共に、物語が今発進する。

前シリーズ『宇宙戦艦ヤマト2199』ではヤマト航海長であり、古代進の盟友でもある島大介を引き続き演じている鈴村健一。そして今作『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』から新キャラクターとして登場し、ヤマトを監視しながらも運命を共にすることになるガミラス帝国地球駐在武官のクラウス・キーマン役の神谷浩史。声優として同期であるふたりに、『ヤマト2202』という大きな艦の乗り心地を語ってもらった。
[取材・構成=大曲智子]

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第二章 発進篇
http://yamato2202.net/
2017年 6月24日(土)より期間限定劇場上映

■鈴村「神谷浩史のために作られた役だと思った」

――いよいよヤマトが再び航海に出ました。第二章全体の率直な印象をお聞かせください。

神谷浩史(以下、神谷)
丁寧に作られているなという印象がありましたね。単純に第一章が2話分だったのに対して、今回の第二章は4話分。制作にかけている時間も倍ですから、ヤマトが発進するまでのエピソードひとつひとつを丁寧に描いているなという印象でした。

鈴村健一(以下、鈴村)
やっと発進したなぁって思いました。いよいよだという部分がしっかり描かれていますよね。もちろん第一章も始まったなという感じがあったんですけど、さらにそれを強めたというか。すごくワクワク感のある第二章だなと思いましたね。

――それぞれ演じたキャラクターの印象もお聞かせください。神谷さん演じるキーマンは少し中身が見えてきたのかなという感じがしましたが……。

神谷 
とはいえ上司であるバレルに言われたことをただやっているという印象は拭えないと思いますし、それで間違っていないと思います。彼の意思が果たしてどこで見えてくるのかというのは、今後の見どころかなと思っていますけど、今回に関してはバレルに言われた通りに動いているだけ。ただ、一ヶ所だけ彼の意思が強く見えるところがあるので、そこは注目してほしいですね。


――鈴村さん演じる島大介も、心の動きがありますね。

鈴村 
最終的には島もヤマトに乗るんだろうなっていうのは、第一章の時から思ってたんですよね。これで乗らないとなったら、シリーズ構成の福井(晴敏)さんに怒りに行こうかなと思っていたぐらい(笑)。結論としては、島も再びヤマトに乗ることになります。どういう過程で乗ったかはぜひ劇場で見ていただきたいですね。

――ちなみに、お互いのキャラクターについて思っていることってありますか。 

鈴村 
キーマンは謎すぎるからねぇ。偉そうなことを言うつもりはないですが、神谷浩史がやるべくして誕生したキャラクターというぐらい、すごく合ってると思うんですよ。キーマンの第一声を聞いた時、これは神谷浩史のために作られた役なんじゃないかって本当に思った。その謎めいた部分も含めて、何か持ってるんだろうなと感じさせてくれますよね。名前の通り本当にキーマンだと思うし、その裏付けが声にもしっかり出ている。アニメっていろんな見方ができるので、もちろん作品やキャラクターに焦点を当てて見てほしいんですが、それ以外のバックボーンとして、これを神谷浩史がやることに意味があると思って見る人もいると思う。それに耐えうる、さすがのキャスティングだと思いました。


――神谷さんは、鈴村さん演じる島大介についてどのように感じていますか。

神谷 
島もほかのヤマトクルー同様に突き動かされていくのかと思いきや、冷静さを見せる。僕は島のそんな冷静なところがすごく好きなんですよね。ヤマトという艦の中に絶対なくてはならない存在。ただ「ワープ!」って言ってるだけじゃないんだっていう(笑)。


鈴村 
ワープマンだからね。別名ワープマン。

神谷 
「あいつワープの時しかしゃべらないな」って思われるかもしれないけど(笑)。でも第二章では彼の強い意思や揺れてる部分が見える。島というキャラクターがより立体的に、人間として、皆さんに伝わるエピソードだと思う。それを健一くんがしっかりと演じている。何しろ過去作も含めて『ヤマト』への愛情がアホほどある人なので。そういう部分も含めて島大介というキャラクターって、僕からすると愛らしいキャラクターに見えるんですよ。葛藤するところが人間っぽい。それに比べて古代は背負っているものがデカすぎるので。

鈴村 
古代はヒロイックだからね。

神谷 
そうなんだよね。古代って常に追い詰められてる。余裕がなさすぎて大丈夫なのかって心配になるよ。

鈴村 
自らヒーローになろうとしているところがある。

神谷 
島はそこを緩めるポジションというか、古代に寄り添う存在。重要なポジションになっていくはずなので、目が離せないキャラクターだなと思っています。

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■神谷「キーマンとしては『こいつらわからん』って思うんです」

――島を長く演じてきた鈴村さんとしては、彼の変化をどう見ていますか。

鈴村 
『2202』のヤマトの旅って、入口があまりに荒唐無稽ですよね。テレザート星から救難信号が来たので助けに行こう、というただそれだけ。前作『2199』は、自分たちが絶望的な状況で救援が届いたことを一縷の望みとして旅立った物語だった。あの時助けてもらった俺たちなんだから、救援を求めている人を助けに行かないわけにいかないよということで、再び宇宙に行くんですけど。そんな中にあって島はすごく理性的で、思考が先行するタイプ。「気持ちはわかりますが、現実ってものがあるじゃないですか」っていうのが島の言い分なんです。島はヤマトに乗らないことでその意思表示をしたんですけど、やはりテレサのメッセージを島も共有していたことがわかる。再びヤマトに乗ることになった島は、相当大きな戦力になると思います。

――そう聞くと、島って苦労人とも言えますね。

鈴村 
そうですね。お父さんがいなかったり、弟のしまじろうを地球に置いてきているし。

神谷 
いやアクセントがおかしいから。

――弟の島次郎ですね(笑)。そういった事情がある島もやはりヤマトや古代に対して強い思いがあり、結果ヤマトに乗ることになるという。

鈴村 
それが勝ったんでしょうね。頭で整理しきれないことがあって、だからこそ乗ることを選んだ島は吹っ切れる。この旅をどううまく成功させるかということに専念する。なにせ荒唐無稽なことを言う人がいっぱい出てくるし、それを諌めるという立ち位置に立っているのでね。ヤマトクルーには「島が乗ってくれてよかったでしょ?」って言いたいですよ。


――島が持つ現実的な視点は、観客にとっても大事な視点になりますね。荒唐無稽な旅に出ることを理解するという意味でも。

鈴村 
だって誰もが「そんな理由で飛び立っちゃうの?」って思いますもんね。なかなか頭では理解できない。

神谷 
あぁやっとわかった、今回の『2202』の見方が。島の目線ってすごくニュートラルじゃない? でも最終的にはみんなの意見に乗り、ヤマトの意思に動かされて、みんなと一つの方向に向かうわけだけど。

鈴村 
そうだね。

神谷 
それって、旧作ファンなど『ヤマト』全体の物語を理解している人間は理解できる部分だと思う。だけどそうじゃない人にはわからないんじゃないかな。僕はキーマンの目線で見てるから、実は「こいつらわからんな」と思って見ていたんですよ。だけど今回の第二章の中で、「理由はない。あるとすればヤマトだからだ」っていうセリフがあるんです。

鈴村 
あぁ、そうだ!

神谷 
このセリフを聞いて納得できるのは、おそらく過去作のスピリットが宿っている人。逆にピンとこないのなら、キーマンの目線で『2202』を観るべきかもしれません。要するに、古代たちがどういうつもりでヤマトにまた乗るのかわからなければ、キーマンの目線で見るのが正解かもしれないって、今、話していて思いました。今後キーマンは文字通りキーマンになっていくと思う。ヤマトの乗組員の人たちの気持ちにどう左右されていくのかというのも、作品の見どころになっていくと思うので。


鈴村 
キーマンがヤマトクルーに感化されていくかどうかは、まさに視聴者目線でもあるわけだ。

神谷 
うん、僕はそういうポジションでいなきゃいけないのかもしれないね。

鈴村 
いい取材になりましたねぇ!(笑) 「ヤマトだからだ」ってセリフは、意図的に入れているのかもしれないよ。確かに物事を整理していくと島の言うことが正しいし、普通はこの航海を止めるよねっていう話だから。

――迷うことなく乗ろうとするクルーたちが大半ですが、「ちょっと待ってよ」と思う島のような人もいるという。

神谷 
テレサからのメッセージを他人に説明したって、メッセージを受け取っていない人間はさっぱりわからないですよね。でも『ヤマト』の過去作を知っている観客なら、絶対に共感できる。

鈴村 
あと『2199』を見ている人も、「そりゃ旅立つよね」って思ってくれるけどね。

――そういう意義でキーマンというキャラクターが登場したのかも?

神谷 
そうかもしれないですね。キーマンを通して、観客のみなさんと気持ちがリンクしていけたらいいんでしょうね。この予想が正しいかどうかはわからないですけど(笑)。

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■神谷「同期がいると気が抜けない」 鈴村「互いのチェック機構だね」

――今回の第二章では、島とキーマンが対面しますね。

鈴村 
まだあまり絡んでないですけどね(笑)。キーマンとヤマト側の間にはまだ少し距離があるので、島ともいまだにそういう関係性。島もまだキーマンのことを少し探っている部分があると思う。キーマンはそういうことを気にしているかどうかわからないし、フラットに乗り込んでいる感じもしますけどね。

――今回のアフレコはどのような雰囲気でしたか?

鈴村 
終わった後に食べに行った餃子が旨かったね。

神谷 
始まる前に、「今日は餃子食べに行けるかな」って話してたよね。

鈴村 
スタジオの近くに美味しい餃子のお店があるので(笑)。そうやってモチベーションを上げて、その日の仕事を一所懸命やろうということで頑張ってるんです、我々は。


――鈴村さんと神谷さんは声優として同期という関係ですが、『ヤマト』という大作で共演して新たな発見はありましたか。

神谷 
今回の共演は非常に楽しいんですよ。仕事を続けてきてよかったというか。

鈴村 
うん、なんかわかる気がするな。

神谷 
いい悪いの問題じゃないんだけどね。

鈴村 
お互い若い頃からやってるからね。若い頃はどうやってやるかを模索して、足りないものすらもかき集めるつもりでガムシャラにやってきた。もちろん今もその気持ちは持っているつもりですけど、それぞれこの業界で20年近くやってこられて、そしてこういう作品にふたりともいるということが、言葉を選ばず誤解を恐れずに言えば、楽しめている部分がある。余裕があるとは言えないんだけど(笑)。

神谷 
いまだに必死だよね。

鈴村 
うん、今でも必死。でも昔に比べると、いい意味での遊びみたいな部分が出てきているのは長く続けた証しだとも思う。それをふたりとも同じ現場で感じられているというのが、いいことだなと思いますね。

神谷 
新人の方がいらして、ベテランの先輩方がいらして、我々が中堅どころとしてスタジオにいられるのが『2202』なんです。この現場はベテランの方がすごく多い。全てのマイクにベテランが並んでいる姿を見ると、僕たちもピリッとくる(笑)。「シビれるぜ、この現場」って思える場所にいられる喜び。昔だったらただただ緊張だけで、何か感じる余裕すらなかったと思うんですが、「この人たちから何か盗んでやろう」っていう野望を持って今スタジオにいられることに感謝しかないんですよね。


――気持ちが立ち返る現場でもあるんですね。

神谷 
そしてこれはあまりいいことじゃないんですけど、ある程度年齢を重ねてきて地位が確立しつつある中で、甘くなる時ってあると思うんですよ。キャリアを積んできたし、お互い代表作もある。だからこの人の芝居は正しいんだろうって思ってしまう。でも「今の芝居、ちょっと違わない?」って思うことも当然ある。それってやっぱりお互い見過ごせない。だから同い年の健一くんなんかがいると、「今の俺、甘くなかった?」って聞けるんですよ。そのうえでスタッフさんに、「すみません、さっきのところ甘くなかったですか」って言いに行くという。

鈴村 
チェック機構として働くんだよね(笑)。お互いが監視体制に入っている。

神谷 
いくらでも甘くできるし、見過ごすこともできる。たとえ何も言われなかったとしても、「今の俺、ゆるいと思われたかもしれないな」って思うと絶対に気が抜けない。後輩がいて先輩がいて、なおかつ同期というか同士がいる環境で仕事ができるというのは、とても幸せなことです。

鈴村 
僕も『2199』のときからずっと思ってましたけど、こんな幸せな現場はなかなかない。業界全体が若返っている今、僕なんかが最年長という現場もざらにある。そんな時代にあって、上の方がしっかりいて若い子もいるというバランスのいい現場って、こういう作品でないとありえない。一役者としても、島がヤマトに乗ってくれて本当によかった(笑)。まだまだこの現場にいたいですからね。