既報のとおり、ザウバーのモニシャ・カルテンボーン代表がチームを離脱したというニュースは、アゼルバイジャンGPを2日後に控えたパドックでも話題に挙がっていた。
ただし、その原因は噂されているように、新オーナーのロングボウ・ファイナンス側とカルテンボーン代表との間で、ドライバーの優先権を巡る対立があったからだけではないという。
「たしかにドライバーの優先権を巡って対立があったことは間違いない。しかし、ロングボウ・ファイナンス側のフラストレーションはそれだけではない」(某スイス人ジャーナリスト)
今回の事実上の更迭は、F1のチーム代表としての資質がカルテンボーンに備わっていないとロングボウ・ファイナンス側が判断したからではないかと、某スイス人ジャーナリストは説明する。
「昨年の7月にロングボウ・ファイナンスが新オーナーになって、チームは財政危機から救われたが、それはチームの財政基盤を整えるためであって、チームの運転資金はチームが独自に開拓しなくてはならないのだが、ロングボウ・ファイナンスがザウバーを買収して以降、チームは新たなスポンサーを獲得できていないことに新オーナーは苛立っていた」
さらに追い打ちをかけたのが、今年の新車が競争力に欠けていたことだ。
「たしかにドライバーの扱いを巡っても対立していたが、真の問題はもっと深いところにあったと思うよ」
ただし、新しくチーム代表に抜擢されるのではないかと噂されている元HRT代表のコリン・コレスに関しては、「それはひとつの可能性で、まだ決定してはいないのではないか」と、そのスイス人ジャーナリストは答えた。
コリン・コレスはかつてHRTやフォース・インディアなどのチーム運営に関わり、小林可夢偉がいたケータハムF1でも関わりを持つなど、F1界ではチームの所有権を巡り、安く買い取った後に投資会社などに高く転売する、ハゲタカ的存在として知られている。
コリン・コレスの関わりについてはまだまだ噂の域を出ないが、カルテンボーン代表についても実は2019年までザウバーとの契約が残っているという話もあり、話が混沌としている。
いずれにしても、現在のザウバーは混乱のなかにあるのは間違いない。実際、水曜日のバクーのパドックでは、ザウバーのホスピタリティハウスではテクニカルディレクターのヨルグ・ザンダーとチームマネージャーのベアト・ツェンダーが真剣に話し込んでいる姿があり、早くもチームに影響が出ていることがうかがえる。
また、日本のF1ファンにとってはホンダとの関係が気になるところ。カルテンボーン代表は2018年に向けてホンダとパワーユニット契約を結び、ホンダとの窓口を担っていた存在。
来季からのホンダのパワーユニットの供給以外においての技術提携、そして日本人F1ドライバーの採用についても好意的に考えていること示唆していたが、今回の更迭により、ホンダとの関係にも何らかの影響が起きる可能性が考えられる。