今週末、オランダのTTアッセン・サーキットでMotoGP第8戦オランダGPが開催される。
オランダGPはMotoGPシリーズ中、最も歴史のあるグランプリ。1954年以降、現在のアッセンを舞台に開催されており、2015年までは土曜日に決勝レースが開催されるスケジュールだったが、2016年から他のグランプリと同様に日曜日決勝に変更となった。
もともと公道コースをベースに発展してきたアッセンは、ライダーにとってチャレンジングなテクニカルコースとして知られてきたが、安全性向上のため、2006年にコースが大きく改修され、1周4.555㎞となった。
その後、何度か小さなコース改修が行なわれているが、ライダーにとって攻略が難しい右左と高速コーナーが連続するテクニカルサーキットというキャラクターに変わりはない。
そして、アッセンのレースを難しくするのが、ダッチウェザーと呼ばれる不安定な天候だ。3日間のセッションの中、例年必ず雨が降り、しかも短い時間で天候が急変する場合が多く、ライダーたちの戦いをより難しくする要素となっている。
昨年のMotoGPクラスは、初日はドライでセッションが行なわれたが、2日目のフリー走行4回目からウエットに。予選Q1、Q2ともウエットで争われ、アンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)がポールポジションを獲得した。
決勝レースはウエット宣言でスタート。しかし、スタート時点では雨は弱く、26周の予定でスタートした決勝は次第にライン上が乾き始めたエリアとぬれたままのエリアが混在する中で周回を重ねて行く。
ところが、序盤を終えた9周目あたりから再び雨が降り始めると、あっという間に雨足が強くなり、中盤の14周目に赤旗が掲示されてレースは中断。通常、MotoGPクラスはフラッグ・トウ・フラッグレースのため、赤旗中断はないが、雨量が多く、異例の赤旗中断となった。
約30分間の中断を経て、雨が弱まったこともあり、レースは残り12周で再開。再スタートレースでリードを奪ったのはドビジオーゾだったが、すぐにバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)がトップに浮上する。
ところが、3周目の10コーナーでロッシは転倒、リタイアとなる。これでマルク・マルケス(ホンダ)がトップに立つが、4周目のシケイン進入でジャック・ミラー(ホンダ)がマルケスを交わしてトップに立つと、後続にリードを広げていく。
その後、空は明るくなり、路面が徐々に乾いていく難しいコンディションの中、ミラーはマルケスとのリードを少しずつ広げ、MotoGPクラス初優勝を達成。2位にマルケスが続き、3位にスコット・レディング(ドゥカティ)が入賞した。
Moto2クラスはドライコンディションでスタートしたが、残り2周で雨により赤旗が掲示され、21周通過時点の順位でレース成立。序盤からトップ集団につけ、10周目にトップに立った後、後続とのリードを広げていた中上 貴晶(カレックス)がグランプリ初優勝を達成した。2位にヨハン・ザルコ(カレックス)、3位にフランコ・モルビデリ(カレックス)が入賞。
Moto3クラスはドライコンディションで争われ、序盤から15人前後のライダーがトップグループを形成。最終ラップの最終シケインで前に出たフランチェスコ・バニャーヤ(マヒンドラ)がグランプリ初優勝を達成。アンドレア・ミーニョ(KTM)が2位、ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(ホンダ)が3位でチェッカーを受けたが、ミーニョは最終ラップに危険なライディングをしたことが審議対象となり、1ポジション降格のペナルティを受け、ジャンアントニオが2位、ミーニョが3位という結果となった。
MotoGPは7戦を終えて、マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)が3勝を記録し、ランキングトップをキープする。
しかし、第7戦カタルーニャGPでビニャーレスは苦戦。予選9番手、決勝10位と完走したレースでは今シーズンワーストのリザルトとなった。レース後のオフィシャルテストでは問題の解決に向け周回を重ね、2番手タイムを記録したが、ヤマハが結果を残しているオランダGPでどのように戦えるのかに注目が集まる。
イタリアGP、カタルーニャGPと連勝したアンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)はビニャーレスとの差を7ポイントに縮めてきた。ドゥカティの快進撃がこのまま続くのかに注目が集まる。
マルク・マルケス(ホンダ)はアメリカGP以来勝利からは遠ざかっているが、スティディなレースでドビジオーゾと16ポイント差のランキング3番手をキープする。カタルーニャオフィシャルテストではトップタイムを記録、その勢いをアッセンにつなげることができるのか。
ランキング4番手のダニ・ペドロサ(ホンダ)はイタリアGPでノーポイントを喫したが、カタルーニャGPではポールを獲得、決勝では3位に終わったものの、マルケスとの差は4ポイントと接戦。バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)はカタルーニャGPではビニャーレスと同様に苦戦したが、ペドロサとは1ポイント差のランキング5番手につける。
ルーキートップ、インディペンデントチームトップのランキング6番手にヨハン・ザルコ(ヤマハ)。ヤマハ勢が苦戦したカタルーニャGPではヤマハトップの5位入賞を果たすなど、シングルフィニッシュを続けている。ホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)も、ようやくドゥカティのマシンに順応が進み、ランキング7番手まで挽回して来た。
アッセンは天候の問題もあり、例年荒れるレース。チャンピオンシップ争いでも中盤戦のポイントとなる一戦となるだろう。