6月17~18日、GRCグローバル・ラリークロス選手権はカナダに初上陸。オタワにあるカナダ航空宇宙博物館の特設トラックを舞台に開催された2017年シーズン2度目のダブルヘッダー戦では、前回大会(第3戦/第4戦)のトンプソンで優勝したスティーブ・アルピン(フォード・フィエスタRXスーパーカー)が土曜に行われた第5戦を、タナー・ファウスト(フォルクスワーゲン・ビートルRXスーパーカー)が第6戦を制した。
土曜時点でポイントリーダーに君臨していたフォルクスワーゲン・アンドレッティ・ラリークロス(VARX)のスコット・スピードは、予選ヒート開始からトップタイムをマークし順調な滑り出しを見せていたものの、彼のフォルクスワーゲン・ビートルRXはヒート3A終了直後に突如として不機嫌になり、エンジン交換を強いられる展開に。
これでスピードのセミファイナル進出はなくなり、イベントの焦点は“誰が次のポイントリーダーに躍り出るのか”に絞られた。
迎えたファイナル。その有力候補として先頭をひた走ったのは、ロエンブロ・モータースポーツ(フォード)のスティーブ・アルピンだった。
前戦のニューイングランド、トンプソン・スピードウェイ・モータースポーツパークでチームにGRC初勝利をもたらしたアルピンは、この日も力強いドライビングを披露。
その背後からは、VARXの王者経験者タナー・ファウストのビートルと、ホンダ・レッドブル・オルスバーグMSEのミシェル・デヨング(ホンダ・シビック・クーペ・タイプR)が追走するも、地元カナダの大声援を受けるアルピンをオーバーテイクすることはできず。
「なんて日だ! 僕にとっての3度目の勝利がカナダの150周年を祝う記念の日に重なるなんて。本当に幸せな気分だよ。みんなありがとう」と、歓喜にむせび泣くアルピンが、これまでの4戦で4人のウイナーが生まれている2017年のGRCで初めて2連勝をマークし、自身のキャリア3勝目と初のポイントリーダーに立った。
続く日曜は、エンジンを交換したことで復調したスピードがすべてのヒートを制してファイナルまで進出。同様にセミファイナルBを制したチームメイト、ファウストとのVARXフロントロウ直接対決が実現した。
そのスタートでは、スバル・チームUSAのWRX STIをドライブする元WRCワークスドライバー、クリス・アトキンソンがロールオーバー。これでセッション中断となり、仕切り直しとなるが、アトキンソンは怪我を負わなかったばかりでなく、なんと再びグリッドに並び、何事もなくリスタートを切った。
その混乱に乗じて、オープニングの数コーナーでスピードをかわしたのは、ファウストとデヨングの2台。そのままビートルとシビックが激しい首位争いを展開し、背後からスピードが追う展開となるが、後方では前日の勝者アルピンがストップし、母国連勝の夢は断たれることに。
レース終盤までにファウストがセーフティマージンを築くなか、今度は2番手争いが激化。
最終ラップまでデヨングを追い詰めたスピードが最終コーナーでシビックに並び、フィニッシュライン通過時点で前に出ることに成功。ギリギリのタイミングでVARXのワン・ツー・フィニッシュを完成させた。
「楽しいレースだった。最終コーナーでミスを犯したんだけど、なんとか間に合ってよかった。最後は窓からの視界が(泥で)ほとんどなかったよ」とスピード。
一方、2戦連続の3位表彰台となったデヨングは、ルーキーシーズンながらこれで今季3回目の表彰台を獲得し、ポイントランキングでも4位に浮上。
「今日は僕のできる最善を尽くした。トラックも高速で難しかったし、最高に楽しめたよ。最後まで元気だったシビック・クーペ・タイプRを用意してくれたチームにも感謝したい」と、デヨングはすでにチームのエース候補へと成長を遂げている。
GRCの次戦、第7戦はアメリカ国内に戻り、7月8~9日にインディアナ州のインディアナポリス・モータースピードウェイを舞台に開催される。