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sébuhiroko/世武裕子が最近よく聴く作品は? 映画音楽やBernacheなど“ダウナー”中心の5選

2017年06月18日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 当サイトの連載企画「新譜キュレーション」の特別編「アーティストキュレーション」では、様々な世代・ジャンルのアーティストたちが登場し、彼らが最近聴いている音楽やお気に入りの音楽を5作品セレクトして紹介。リアルなリスニング体験からは、自身の作品とは違った角度から、ルーツや趣向などが浮かび上がってくる。それらが、アーティストに対する理解や関心を深める一つのきっかけとなれば幸いだ。


 今回は映画音楽作曲家としては世武裕子名義で活躍する、シンガーソングライターのsébuhirokoがキュレーターとして登場。映画のサントラからドイツのメタル、そして日本のロックまで、根底に“ダウナー”というキーワードを据えながらも、彼女の音楽に対する興味関心の幅を感じさせる選盤となった。(編集部)


(関連:sébuhirokoと向井秀徳アコースティック&エレクトリック、“ストーリーテラー”としての表現力


■ヨハン・ヨハンソン『メッセージ』(オリジナル・サウンドトラック)


 「新しいSF映画」として日本でもかなり話題になっている映画『メッセージ(原題:Arrival)』、サウンドトラックも素晴らしいです。現代の映画音楽界で、おそらく最大級の知名度を誇るハンス・ジマーに通ずる重厚なアプローチに加え、アイスランド出身の彼らしい地球賛歌のようなハーモニーや高揚感、まるで禅問答のような緊張感や、底知れぬエネルギーを感じます。映画のスクリーンを悠々飛び越えて、日常を一瞬にして塗り替えてしまう傑作! 映画もぜひ観て頂きたいですが、音楽だけでも楽しめる一枚です。


■The Mulholland Free Clinic『The Mulholland Free Clinic』


 殆どのミュージシャンは映画を通して出会うっていうくらい、大の映画好きなので、「マルホランド」の文字を見てしまったら試聴せずにはいられません! 仕事柄、作曲する時も演奏する時も大きめの音に集中する事が多く、最近選んで聴くものに、ややダウナーな音楽が増えてきたような気がします。町や時間、季節なんかは音楽に大きく影響するものだと思いますが、私にとってテクノは、そんな自然の摂理と少し違う場所に存在する、無重力のような音楽。自宅で静かに聴く事が多いです。粒の整った美しさが際立つ、テクノならではの作用かも。


■Bernache『Your Name』


 最近、丸っこいアナログシンセやビートを多用してアンニュイに歌う、そんなオルタナティブ色の強い女性シンガーソングライターのプロジェクトに出くわす頻度が相当高い気がしています。私は基本的に人一倍の飽き性なので、何かが流行る頃にはすっかり飽きている、というパターンも少なくないのですが、エマの楽曲には、ちゃんと引っかかる癖があってもう一度聴きたくなる面白さがあります。ただオシャレなだけではない、哲学的なニュアンス。シングルなので一曲だけですが、アルバムが出たら確実にチェックしたい人です。


■Rammstein『Paris』(LIVE)


 さて、私はどうして、もうパリに住んでいないのでしょう! という悔しさでいっぱいの、Rammsteinによるパリライブ音源。ああ、一度でも彼らをライブで観れたなら。ドイツ語ができないのに、自分のバンドでもRammsteinのカバーをするくらいに大好きなバンドです。ボーカルのティル・リンデマンと私は同じ誕生日で(他に、中村達也さん、子門真人さんがいらっしゃいます。素敵でしょう!)運命を感じずにはいられない! ドイツ語のもつ硬質な響きとファットなサウンド、キャッチーなメロに多用しすぎのユニゾン(笑)など、マニアックなのにとても聴きやすいドイツのメタルです。ウンダバー!


■tricot『3』


 ここまで「ややダウナー嗜好」をうたってお勧め音源を紹介してきましたが、結局最後は往年の趣味に走ってしまいました(笑)。tricotのパブリックイメージがちょっと分からないのですが、私にとって、コードの組み立て方のセンスがいい、各楽器のアンサンブルの成立の仕方が面白い、それがtricotです。tricotを聴くとバンドっていいなぁと思ってしまいます。マニアックなオケにも、歌っぽい歌(的確な表現が見つからず、この言い方で伝わるでしょうか?)にも偏らず、絶妙にナイスなバランスで役割分担がうまくいっている、という印象です。あと、私は、ギターのキダさんのただのファンです(笑)。(sebuhiroko/世武裕子)