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ドラマ『リバース』が問いかけ続けた“罪と罰” 全てを物語っていた主題歌「Destiny」を改めて読む

2017年06月17日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 6月16日、ドラマ『リバース』(TBS系)が最終回を迎えた。谷原康生役を演じた市原隼人が「繊細であって大胆、そんな作品だと思う」(参考)と語っていた通り、シェネルが歌う主題歌「Destiny」とともに、“罪と罰”とは何なのかを考えさせられるストーリーだった。


(関連:ドラマ『リバース』さらに深まる謎……主題歌「Destiny」から物語の展開を読み解く


 同作は、深瀬和久(藤原竜也)の恋人・越智美穂子(戸田恵梨香)の元に「深瀬和久は人殺し」という告発文が届いたことから、深瀬が10年前の広沢由樹(小池徹平)の死の真相を探っていく物語。疑惑の人物が次々と浮かぶ中、潔白に思えた深瀬も事件の一端に関わっていたという衝撃の結末だった。『告白』や『Nのために』で知られる湊かなえの小説が原作だが、これまでと異なるのは主人公が男性であることだ。しかし、一筋縄ではいかない複雑な人間関係が描かれている点は共通しており、主人公たちが互いに疑う波乱の展開に視聴者は目が離せなくなっていた。


 そんなドラマのターニングポイントとも言えるタイミングで流れる「Destiny」は、キャラクターの気持ちに寄り添うと同時に、観ている者の切なさや不安を掻き立てる楽曲だ。例えば事件当日、実は深瀬以外の4人が現場にいて“何か”があったのではないかと思わせる場面では、イントロの重厚な音色で視聴者に懐疑心を抱かせる役割を果たす。また広沢の彼女・カワベが美穂子だったと判明した場面では、<夢みていた未来たちと/ちがう景色を見て/ちがう人愛した>という歌詞でより切なさを感じさせた。広沢が蕎麦アレルギーだったのを知らず、事件当日に深瀬が蕎麦成分入りの蜂蜜を入れたコーヒーを渡してしまったと判明すると、迫りくるようなストリングスの音色とともにこれまで潔白だと思われていた深瀬の罪の衝撃を増幅。ドラマの重要な場面を盛り上げ、視聴者にインパクトを残していた。


 またそれぞれのタイミングにより、異なる視点から歌詞を分析できるのもこの楽曲の面白さだったように思う。広沢が美穂子の恋人だったことを考えると、「Destiny」は美穂子の視点で描かれた曲だと解釈できる。しかし、村井の妻・香織(趣里)が村井と沼淵ことは(篠原ゆき子)との不倫現場に乗り込んでくる、というシーンでは、<はじめから気づいていたの/嘘で守れる真実なんて/真実じゃないことを>という歌詞は村井やことはの視点のようにも思える。また、広沢に好意を持っていた明日香(門脇麦)が谷原康生(市原隼人)との結婚を選んだと考えると、この歌詞を明日香の視点から読むこともできる。


 こうした様々な視点で読めるのは、『リバース』の登場人物の誰もが“秘密”を持っていて、罪や罰の意識に苛まれているという共通点があるからだ。「Destiny」はそんな後ろめたい思いを抱えながらも、強く生きる人々の姿を描き出した楽曲と言えるだろう。


 物語の最後、罪悪感を持ちつつも少しずつ新たな道を歩みだしたそれぞれのキャラクター。リバース(=rebirth)した5人が本当の意味で許され、解放される時がいつになるのかは分からない。しかしシェネルが<罪と罰>は<人が決めること>だと歌っていることが、全てを物語っているようにも思える。


 同楽曲は、先日発売されたシェネルのアルバム『Destiny』では1曲目に収録され、作品のオープニングを華々しく飾っている。ドラマは最終回を迎えたが、シェネルの歌声を聴きながらそれぞれの今後に思いを馳せるのも良いかもしれない。(村上夏菜)