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門脇麦×清水崇監督が語る、『こどもつかい』の新たな挑戦 門脇「恥ずかしさを払拭するのには時間がかかった」

2017年06月17日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 滝沢秀明の映画初主演作『こどもつかい』が本日6月17日より公開された。『呪怨』シリーズの清水崇が監督を務めた本作は、小さなこどもが失踪した3日後に、その周りの大人が死を遂げるという“こどもの呪い”の噂を追う、新人記者の駿也とその恋人・尚美が、謎の男“こどもつかい”の呪いと怨みから逃れようと奮闘する模様を描いたホラー映画だ。リアルサウンド映画部では、メガホンを取った清水監督と尚美役を演じた門脇麦にインタビューを行った。常に新しいチャレンジを続ける清水監督とホラー映画初出演となる門脇麦。そんな2人に、滝沢秀明や有岡大貴らとの撮影現場でのエピソードや、ホラー映画に対する考えなどを語ってもらった。


参考:門脇麦、“自己表現”を捨てた演技の強さーー激しいベッドシーンから幽霊役まで演じられる理由


ーー今回の作品は滝沢秀明さんにとって初の映画主演作になるわけですが、それがホラーというジャンルだということにまず驚きました。


清水崇監督(以下、清水):それは滝沢さん自身も驚いたと言っていましたね。僕からしたら滝沢さんが“映画初主演”ということにまず驚きですし、しかもそれがホラー映画でいいのかと(笑)。ただ、“滝沢さん主演でホラー映画を撮る”というアイデアは本当に面白いなと思ったんです。プロデューサーも好きにやってもらって大丈夫ですと言ってくれたし、滝沢さん自身も好きに料理をしてくださいという感じで臨んでくれたので。


ーーそこからどのようにして“こどもつかい”というキャラクターが生まれたのでしょうか。


清水:滝沢さんにどのようなキャラクターを演じてもらうかは非常に悩みました。普通の“受け手”にはしたくなかったので、完全な悪役にする手もあるなとは思ったのですが、それはそれで、型にはまり過ぎてもいけないし、面白味が無い。だから、どんなキャラクターにするかは主人公なのに、最後まで見えなかったのですが、僕は『ハーメルンの笛吹き男』をモチーフにしたものをいつかやってみたいと思っていたので、それが今回の企画にバッチリハマるなと思ったんです。滝沢さんの意外な一面を見せたいし、素ぶりや話し方をどうするか、滝沢さんとも一緒に考えていく中で、彼のイメージからかけ離れた面や創る僕の子供じみた投影もあって、どこか掴みどころのないキャラクターである“こどもつかい”が誕生しました。なので、“滝沢さん主演”というのがありながらも、(門脇)麦ちゃん演じる尚美や有岡くん演じる駿也の方が、キャラクターとしては早く固まっていたんですよね。


ーー門脇さんが“ホラー映画初挑戦“というのも、とても意外です。


門脇麦(以下、門脇):よく言われるんですよ。今まで殺人鬼の役や血糊を浴びることが割と多かったので、そういうイメージがついているんですかね……。でも、実はホラー映画は怖くて観るのが苦手なので、清水監督の作品もホラーではない『魔女の宅急便』しか観ていません(笑)。


ーー撮影は大丈夫だったんですか?


門脇:監督はこんな感じだし(笑)、子供もみんなかわいいし、それにグリーンバックでの撮影も多かったので、撮影は意外と怖くありませんでしたね。廃病院で撮影するシーンもあったのですが、そこはとにかく「私は怖くない!」「私は何も見えていない!」と気を強く持っていたので大丈夫でした。廃墟に行った時に、スタッフさんたちが「空間が歪んでいる」みたいな話をしていたのですが、その時も「何言ってるんですか? 歪んでません!」と自分に言い聞かせながら撮影に臨んでいました(笑)。


ーー清水監督はそんなホラーが苦手な門脇さんをなぜ起用しようと思ったのでしょうか。


清水:単純に一緒に仕事をしたいと思っていた女優さんだったし、尚美のキャラクターが見えた時点で彼女に脚本を渡しました。尚美は思い悩んでいる人物で、過去のトラウマを背負いながら、それを克服していくという役どころでもある。滝沢さんの役柄ももちろんそうなのですが、受け手側もすごく複雑な役なので、その役を担える人は誰だろうと考えた時に、もう彼女しかいないなと。でもいざ現場に入ると、麦ちゃんは子供が苦手なんだなというのがすぐにわかって……(笑)。


門脇:苦手というか、どう接していいかがわからなくて。犬とかもそうなんですけど、ワッと本能で来られるとアワアワしちゃって……。今回は保育士の役でしたし、(笠原蓮役・中野)遙斗くんとも仲良くなりたかったので、ゲームとかをしながらコミュニケーションを取ろうとはしていたのですが、監督に「子供興味ないでしょ?」って言われて、そういうのってやっぱりバレるんだなって思いました(笑)。人見知りというわけではないんですけど、自意識が勝っちゃって、子供相手に「きゃーカワイイー!」みたいなことができないんですよね。その点、滝沢さんは子供たちとキャッキャと楽しそうにしていてスゴいなと思いました。私自身、滝沢さんとは初共演だったので本当に緊張しましたし、夏の暑い時期にものすごく暑そうな衣装で撮影に臨まれていたので、なかなか話しかけづらかったのですが、子供たちはみんな「ねぇねぇ!」みたいな感じで滝沢さんに話しかけていて、子供たちもスゴいなと思いました。


清水:無邪気は世界最高の武器ですからね。滝沢さんに対して1番緊張してないのが子供たちで、麦ちゃんや有岡くんたち共演者や子役のママさんがめちゃくちゃ緊張していたのが面白かったよね(笑)。もちろん滝沢さんは滝沢さんで、“こどもつかい”という謎めいた役柄だったので、子供たちとの距離感のバランスを保って臨んでくれてたし、彼は若くしてジャニーズJr.を引っ張ってきてるしっかり者だからこそ、この子供じみた役は難しかったと思う。


ーー門脇さんは恋人・駿也役の有岡大貴さんとの共演シーンが多いですが、共演してみていかがでしたか?


門脇:有岡さんはすごく人見知りな方で、最初の2~3日はほとんど喋ってくれなかったんですよ。なので、私がインタビュアーみたいになって、「趣味は何ですか?」とか「休日は何をしているんですか?」とか、ずっと質問攻めをしていました(笑)。でもすごく気を配ってくれて、軽やかさのある方なんですよね。器用なところもあるんですけど、不器用なところはすごく不器用で、そのバランスがチャーミングだなと思いました。


清水:有岡くんって、童顔だけど、それを自ら使いこなしてる。だから、そんな見た目も含めて駿也の大人になりきれない感じや、恋人にもすべてを出しきれない感じに繋げて、中身は後から見えてくれば…と思ったんです。僕自身も背が低いだけで見られ方のギャップを感じてきたし。それこそ麦ちゃんが子供に対して苦手感があるとわかった時、最初はどうしようかなとも思ったのですが、それが尚美の背景も含むキャラクターに繋がったし、2人の程良い緊張感のバランスに持ち込むべきだと取り組みました。


門脇:隠すのは無理だったので、そういう役どころにしていただいて良かったです(笑)。


ーー3Dや4DXなど常に新たなホラーの映像表現に挑んでいる清水監督ですが、今回は久々の2Dというオーソドックスなスタイルですね。


清水:3Dとか4DXとかVRみたいな新機軸の技術が出てくると、必ずホラーやAVのようなものに目を当てられるんですよね。それは「怖い!」とか「エロい!」とか、わかりやすく本能的な刺激に根差しているからで。昔から、何か新しい技術や手法が出てくると、世に浸透させるために、使われるんです。正直、僕自身はあまり興味がないので、いつも断るんですよ。でも、断っても断ってもそういう話がくる(笑)。もちろん嬉しいお話なんですけどね。考えを改めて、僕自身はアナログ人間なので、逆にこれはチャンスだと思って、自分が乗り気じゃないものにも乗っかって、何かを見つけていこうとしないと新しいものが作れなくなるかもと不安になるのも事実だし、挑戦は好きなので、なるべく取り組んでいこうと気持ちを改めて臨んでいます。


ーーとはいえ今回、日本映画では珍しいダークファンタジーというジャンルに挑戦されていますね。


清水:僕の中では、ホラーとファンタジーは同一線上にあるような気がしているんです。もちろん「わかりやすいかたちで怖くしてほしい」というプロデューサーたちの意見もわかるんですけど、ホラーも一昔前と違って市民権は得てるし、世代も交代してる。差別されてこそなんぼだったホラーにジャニーズの方が出る時代ですからね。さすがにただワーキャーするだけのホラー映画を作るのは恥ずかしいし、失礼だなと。ホラー映画の中でこその、現実に則したドラマを感じてほしいなと。


門脇:それこそ私の勝手なイメージなんですけど、ホラー映画って、若い女の子の登竜門というか、今後期待の子たちが出演する通り道みたいなイメージがあって。だから最初は「なんで私なんだろう……私がワーキャー言ったってなんの需要もないのに……」という感じですごく不安だったんです。でもこの作品の台本を読んだ時に、ドラマ部分がすごくしっかりしていたんですよね。お話自体にもいろいろ感じるところがたくさんあって面白かったので、ホラーと思わなくていいんだと安心して撮影に臨めました。強いていうなら、他の作品の撮影と違ってリアクションが多かったので、恥ずかしいという思いを払拭するのには時間がかかちゃいましたけど(笑)。


清水:その通りです。みんなもちろん恥ずかしいんですよね。ホラー映画って怖がらせる側も怖がる側も、普段よりオーバーにやったほうがいいんだろうかとか、普段はこんな驚き方しないけどリアリティなくていいのかなみたいな感じは、見ていてすぐわかります。その辺が違ったら僕は率直に言うのですが、門脇さんは無理がなくめちゃくちゃ自然でしたね。


門脇:それは良かったです。無理をするとすぐにバレてしまうので(笑)。(宮川翔)